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第一章
ボロは出しません!
しおりを挟むクロスの誕生日は一週間後
とりあえずお父様とお母様、そしてエドさんとクロスの母でもあるミリアーナさんにこのことを相談したら
「そんな、お気持ちだけで充分嬉しいです!」
とミリアーナさんは少し慌ててたけど
「ふむ、それならこれから色々手配しなきゃいけないな。エド、頼めるか?」
「はいかしこまりました。すぐにでも準備に取り掛かります」
「まあ!クロスちゃんの誕生日パーティだなんてどうしましょう!まずはプレゼント選びよね!それでドレスも新調しなきゃだわ!やだ一週間後が待ちきれないわね!」
さすがうちの親
案の定何の問題もなく話が通ったよ
それに準備は主にエドさんが手配してくれるみたいだから多分大げさになりすぎることはないし
「ミリアーナさん」
未だに遠慮してかあまり積極的じゃないミリアーナさんに声をかけた
「私クロスのことが大好きよ、ううん、私だけじゃない、私たちんみんなクロスのことが大好きで大切なの。だからそんな大好きなクロスの誕生日を祝わせてほしいの、だめ?」
さあ!必殺うるうる上目遣いだー!
「お嬢様……いえ、全然だめじゃないですよ。私からも、ありがとうございます、本当に、ありがとうございます」
深々と頭を下げるミリアーナさん
声が少し震えてるのには気づかないフリをしよう
だって、現に頭を上げたミリアーナさんはこれ以上ないってくらい綺麗な笑みを浮かべているのだから
わざわざそれに触れるような野暮なことはしないよ
屋敷の他の人達にはエドさんがどうやら伝えてくれたらしくて、この前厨房を通ったら料理長や他の皆に「腕によりをかけるから楽しみにしててください!」と言われた
皆さんかっこよすぎて惚れるかと思った、まっ、もうとっくに皆のこと大好きだけどね
そして、私とユーリは一週間気を抜くことを許されない状態だ
毎朝開かれてるお茶会でボロを出さないように普通にするのが大変だった
別に嘘がつけないとかじゃないけど、平然といつも通り、ってのを意識しすぎて逆にいつも通りが分からなくなりそうで焦った
クロスは間違っても鈍感じゃない、むしろ人の心読めんじゃね?っていうレベルの鋭さだ
そしてクール系男子によくありがちの自分の誕生日を忘れるっていうタイプでもない
初めてクロスの誕生日を祝った時少し意外で理由を聞いたら「母さんが命を賭けて俺を産んでくれた日だ、忘れるわけない」と言ったからやばかったよね
普段どこか冷めてて子供らしくないクロスのこのお母さん思いのギャップに即やられたよね
その後ニヤニヤしながら心の中で、このマザコンちゃんめ~って思ったら瞬時にデコがピンしたけど
私マジで口に出してないからね!?本当に心の中で思っただけなのにデコピンが飛んできたタイミングが合いすぎて痛さも忘れて軽く恐怖覚えたからね!?
だから少しでも挙動不審な行動をしたらばれかねない!!
本日のデザートイチゴタルトを食べながらそうっとユーリと話してるクロスの様子を伺う
うん、今のところ全然平気みたい
にしてもユーリすげえな、全然ぎこちないとこないじゃん、マジでいつも通りだ、私も見習わなきゃ!
と、意気込んだのはいいものの、まだ悩みはあるんだよなあ…
「今年のプレゼント、どうしよう…」
一人で枕に顔をうずめて呟く
クロスの誕生日まで後3日しかないのにびっくりするくらいいい案が出てこない
聞けば他の皆はもうだいたい目星はついてるみたいで、ユーリももうとっくに決めたって言ってたな
「う~~~ん」
枕を抱いて無駄に広いベッドを使って思う存分コロコロと転がる
私今までクロスに何をあげたっけ?
出会ってからもう三年が経つ
確か最初はハンカチをあげたな~、って言っても私が紅茶を零してクロスが自分のハンカチを犠牲にしたのが始まりなんだけどね
あれはショックだったわ、ノワール家の娘としても失態としかいえなかったし私のせいでクロスのハンカチが犠牲になったのもかなりショックだった
だからそれ以降より一層振る舞いなどに気をつけ始めたのは言うまでもない
そして、クロスが好きそうなシンプルなハンカチを送って再度謝ればクロスは笑って許してくれた(そもそも最初から気にしてないって言われた)
そして優しく目を細めてありがとうって微笑んでくれたんだ…
あれは今まで一緒に過ごしてきた中でクロスが私に向けた最上級の笑顔だったのだ
だから私はその時のクロスの顔が忘れられなくて、それから毎回必死に頭を振り絞って何を送ればクロスが喜んでくれるのか考えた
でも、次の年にオルゴール、さらにその次の年に万年筆を送っても、クロスは喜んでくれたものの一番初めに私に見せてくれた最上級の笑顔を見せることはなかった
しかも「なんかプレゼントのチョイスが大人びてるな」って呟いてるの聞いちゃったからめっちゃ冷や汗出たよねその瞬間
そうだよね、だって中身もう前世+今の年齢なわけだから肩たたき券とか無意識のうちに頭の中から除外しちゃってるんだもん!
仰向けになってため息をつく
目を閉じればクロスの笑う顔が浮かんでくる
喜んでほしい、また出来ることならクロスのあの笑顔が見たい
そう思いながら私はいつの間にか夢の中へと誘われていった
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