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第一章
Let’s Party!
しおりを挟むあれはいつのことだったか
クロスは屋敷の仕事を常に手伝っている(手際が手伝いで済ませられるレベルじゃない)が、その中でも特に気にかけているのか、暇があれば庭で花の植物を手入れしている
だから聞いたことがある
「クロスは花が好きなんだね」
「うーん、小さい頃から世話するのが当たり前だったから好きとかそういうの考えたことないな」
そう答えながらも花に触る手つきは優しい
クロスは無意識かもしれないけど、花のお世話をしている時のクロスは纏っている雰囲気も一段と柔らかい
「あぁでも、花たちが育っていくのを見るのは楽しいよ。小さな種から始まって、芽が出て蕾がついて、そして徐々に開花していく。時間はかかるけどその分花開いた後の楽しみがより増すっていうか」
「クロス、もうそれ花がめっちゃ好きって言ってるようなもんだよ」
むしろ愛してるって言っても過言じゃないくらいだよね
そんなお花大好きな自分に気づかないクロスに少しだけ呆れながら、生き生きと楽しそうに花の手入れをするクロスを見ることは、いつの間にか私の楽しみになっていた
「……花か」
朝、寝起きにポツリと呟いた言葉は簡単にかき消されそうな弱々しい声によって紡がれたものだったが再び眠りに落ちていく私の心の中では留まり続けた
クロスの11歳の誕生日がやってきた
流石に当日ということもありそわそわし出すのはしょうがないことだと思ってほしい
実際、今まで一切動揺を見せていなかったユーリも今日は緊張してるのか少し動きが硬い
それじゃあ私なんて言わずもがなだろ
まあ、大人組は流石というべきか全くボロ出してないけど
とりあえず、朝はいつも通り3人でお茶をして、頃合を見計らってクロスと別れた
パーティーは午後からだから、それまでにクロスを大広間に近づけさせてはいけない
だから今日クロスに課せられた仕事の内容は専らミリアーナさんの手伝いだ
私達の行動範囲を完璧に把握してるミリアーナさんがいれば間違っても準備中の私達とクロスが鉢合わせすることはないということだ
幸いミリアーナさんについて回るのは珍しいことじゃないらしく、クロスは「久しぶりだね」と言ったくらいで全く疑っている感じはなかった
よしよし、今のところはすべて順調!
ユーリはプレゼントの準備があるって言って早々に行っちゃったし私も早く自分のプレゼントの最終調整に取り掛からなきゃ!
逸る気持ちを押さえながらなるべく上品、かつ素早く行動を開始した
そしてあっという間に日は落ち、ミリアーナさんと本日の主役であるクロス以外は既に大広間にてクラッカーを片手に待ち構えていた
ノワール家のみでの主催だが、抑えられているとは言え豪華さはパーティーを見慣れてる私からしてもかなりのものだった
お母様も有言実行して身に纏っているのはこの日のためにわざわざ新調したドレス
普段のパーティーでの華やかさ重視のドレスではなく比較的シンプルな物だったが、母は美人な分なんでも着こなすから普段とは違った美しさがあった
かく言う私も実は今日の日の為に新調をした、てかさせられた
ドレスなんていっぱいあるのだからその中から着るって言っても張り切り出した母を止められるはずもなく、私は今自分の髪色と同じ藍色の可愛らしいドレスを身に纏っている
勿体無いとは思っても嬉しくないわけではない
そりゃ私だって女の子だ、可愛い服が着れるのは嬉しいよ!
ニヤつきそうになる頬を必死に引き締めていた時、外の様子を伺っておいてくれていたメイドさんがクロスが来たことを報せてくれた
一瞬慌てそうになってしまったがすぐに気を引き締め直してスタンバイの位置に付く
大広間を真っ暗にして扉が開かれるのを待つ
隣にいるユーリと暗い中顔を見合わせてコクっと頷く
あー!緊張で心臓が口から出そう!
ここまで来て失敗なんかしたら多分私一年間は立ち直れない!だから絶対成功させてみせる!!
……でも大丈夫かな?クロス喜んでくれるかな?喜んでくれるといいな…!
ノックの音が聞こえる
ドクンドクンと聞こえるのは私の心臓の音かそれともユーリの心臓の音か
…きっと両方だろうな
ゆっくりと扉が開かれる
暗かった大広間に徐々に光が差していき
クロスが一歩大広間に足を踏み入れたのを確認した瞬間
「「「「「「Happy Birthday!クロス!!」」」」」」
一斉に鳴るクラッカーの音とタイミング良くついた明かりで見えたのは
呆然と目を見張っているクロスの顔だった
あんぐりと口をあけ微動だにしないクロスが面白くて笑いがこみ上げる
そして小走りでクロスの前まで行くと
「サプライズ大成功~!」
隠し持っていたミニクラッカーを再び鳴らした(良い子のみんなは人に向けないように使いましょう)
さあ!楽しい楽しいパーティーの始まりだ!!
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