未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢に転生したみたいだけど、これってフラグ回避方法分かんなくね?

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第一章

プレゼント

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結論から言って、パーティーは大成功だった、と思う


固まったまま動けないクロスをみんなの方へ引っ張って行ってもみくちゃにしてもらう
そしてうちの自慢のシェフの誕生日ケーキの登場で場はより一層盛り上がった
クロスが言われるがままローソクを消してからはもうみんな本格的に騒ぎ始めた
今日はお父様が皆に無礼講と伝えてあったこともあり、他の家じゃ絶対にありえない主人と使用人が共に立食してる様子がそこにはあった

他の家の貴族がこれを見たらありえないと言ってうちのことを嘲笑するかもしれない
でも、私はこの光景が好きだ
みんなが笑ってて、楽しそうで、まるで一つの大きな家族の団欒のように感じるこの感じが好きだ
ていうか、ノワール家をバカに出来る程命知らずな奴はいない
せいぜい心の中で皮肉ることくらいしか出来ない奴らばかりだし、うちを敵に回した瞬間終わるっていうのは貴族なら誰もが分かっているだろう


遠目で未だ囲まれてるクロスを眺める
いつも大人びてるクロスだけど、これだけの人に祝われて嬉しくないはずもなくさっきからずっと恥ずかしそうにしながらも終始笑顔を絶やしていない

むふふふ、あの子ってば今自分がどれだけ緩い顔してんのか自覚してんのかね?あー!今手元にカメラがないのが惜しい!!あったらいくらでも撮って後で見せてあげるのにー!

悔しくなりながらローストビーフを頬張る
あっ、ちなみに私は今絶品料理を主役より堪能している最中でございますはい
いやあ、チェイスさん(料理長)マジ神の腕してるよ
いつもの食事もおいしいのに今日は一段と最高だな!品数も多い上私の好物も多いし、ドレスじゃなかったら確実に爆食いしてたよ!(今でも爆食いしてるけど)

本当はすぐ近くで祝われて照れてるクロスを少しからかいながら見守ろうと思ったけど申し訳ない
おいしい料理には勝てなかったよ…!



「く、苦しい」


見境なしに食べては食べてたら、案の定というか、お腹パンパンになり動くのも一苦労になってしまった
その上ドレスで締め付けられてるから変に熱くなってしまった
これはいかんと思い、軽い運動も兼ねてバルコニーに出て涼むことにした

手すりに寄りかかって夜の庭を眺める
そして今日のことを振り返って







自己嫌悪に陥った




おいいいいいいいいい!!!!お前何してんだああああああああ!!!
あんだけ"喜んでくれるかな?喜んでほしいな…!"って思ってた健気さはどこ行った!!
パーティーが始まってからお前食ってしかいねえじゃん!!クロスのことも見ないで料理にしか目いってなかったとかどんだけ食いしん坊なんだよ!!

だ、だって!!どれもこれもめちゃくちゃおいしそうだったんだもん!もうこれは陰謀だよ!絶対誰かが私を陥れるために私の脳を操って食べ物にしか目がいかない様にしたんだよ!クソ…まんまと嵌ってしまったよこのセツィーリアが……なんたる不覚…!

ねえ、私この子と同一人物だっていうのがすごく嫌なんだけど、今すぐに分離したいんだけど

落ち着いてセツC、私も激しく同感よ

セツB…!これも運命なのね…なんて残酷なのかしら…!!

セツC……!耐えるのよ!耐え抜くのよ!!

馬鹿じゃねえの?

お前に一番言われたくねえよ!!


セツBとセツCに総ツッコミを貰ったセツAは反省として手すりに頭を打ち付けることにしましためでたしめでたし



………全然めでたくねええええええ!!!これ下手したら頭カチ割れるやつ!!
あっ、別に全力じゃなくていいのか……まあ、それなら…



「いやあ、でもなぁ」

「さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?」



いきなり聞こえてきた聞き覚えがありすぎる声に驚いてパッと後ろに振り返る
そこには数々のプレゼントを手にしていた本日の主役だった
そう……私が散々放ったらかしにしていたクロスだ

うわあやべえ、本人見たらさらに罪悪感が湧いてきた…!
ちょっ、謝ろう、とりあえず謝りまくろう


「クロス、その、ご」

「ありがとうなセツ」

「本当にごめ……え?ありがとう?」


てっきり怒られるかと思ったのにクロスの口から出たのはお礼の言葉だったからつい聞き返してしまった

クロスはプレゼントをバルコニーのテーブルの上に置いて私の隣に来て同じように手すりに寄りかかった


「旦那様たちから聞いた、このパーティー、お前が計画してくれたんだろ?」

「あっ、うん」

そ、そっちかー!
ぎこちなく頷く私を見てクロスは少し笑ってから遠くの方を眺めながら続けた


「俺さ、今まで誕生日って母さんに感謝するためだけの日なんだって思ってたんだ。でも…今日みんなからこんなに祝われて、初めてそれだけじゃないって思うようになった。…それにどうやら俺はみんなにとって大切で大好きな存在らしいし?その思いを無視するようなことは出来ないよね」


聞き覚えがありすぎる言葉に知らず知らずのうちにクロスから顔を背けていた


「おい、お前が言った言葉だろ?俺だって自分で言ってて恥ずかしいんだからな」

後ろからクロスがほっぺを突っついてくる
ぬおおおおお!!や、やめろ!!他の人に言うのと本人から繰り返されるのは全く違うんだよ!!


「自分も照れるんなら、い、言わなきゃ良かったじゃん…!」

「でも、それじゃお前にお礼言えないじゃん」

いい!いいよお礼なんて!!食べ物に目がくらんだ私にお礼なんて言わないでー!!


「セツ、こっち向いて。…セツ」


待った待った!まだ心の準備というか、その平常心が遊びにいったまま帰ってきてないんですよ!だから、もうちょい!…あっ!!
いい案が思いついてポケットから取り出したものを顔の前に掲げながら振り返る
そしてクロスの顔を見ないでそれを押し付けた

思いがけないことに張り手並みの力が入っていたらしくクロスが2、3歩後ずさる


「これ…」

そして受け取ってくれたのを確認してから顔を背けて言った


「誕生日プレゼント!まあ?所詮子どもが選んだものだから?お気に召すか分かりませんけどー??」

「しゃべり方おかしくない?なんか悪いもんでも食った?」

いえ、とてもおいしいものしか食べてません、はい、本当に食べることしかしてませんよ…!

「開けていい?」

「…もちのろん」

横目でチラッと私が渡したプレゼントの包装を丁寧に外していくクロスを見る
現れた薄い箱の蓋を開けたクロスは少し驚いたように見えた
まあそうだろうな、去年とかとはプレゼントの方向性が全く違うからね


「これって、押し花の栞?」

「そう。まあ、クロスは花が好きだし?いつも世話してるし?見飽きてるかもしれないけどー??」

「お前の照れ方ってめんどくさいな」

「照れてないし!!」

笑いを堪えたようなクロスの声に抗議をする
でも正直私もなんか意地になって出口が見つかんなくなってたからある意味助かったわ
いつの間にか頬の赤みも消えたし平常心も戻ってきた


「この花、なんだか分かる?」

「これは、カランコエ?」

四つの赤い花びらをつけたそれをクロスは迷いなく言い当てた


「おお、さすがクロス!この庭で見つけてかわいいなと思って押し花にしてみたの!で、最近クロス本読むようになったしせっかくならと思って栞にしてみた」

グッと親指を立てて自慢げに言う
まるで、どう?どう?私めっちゃ冴えてない?と言っているかのように
まあ、実際褒めてほしい気持ちはありますよなんか文句あります?!
でも……私は結構達成感あったけど…もしかしたらクロスからしたらショボイかもしれない
そ、そうだよ!!お父様もお母様も何をあげたか知らないけどそれらと比べたらこんなのショボイ以外の何物でもない!!ユーリもかなり自信満々にしてたから確実にクロスが好きそうなものをあげたはずだ!

今更になって心配が押し寄せる、さっきまでの威勢はどこへ家出したのだろう
クロスは優しいから言い出せないかもしれない。だったら私が先に…!


「手作りだしちょっと不恰好だから、嫌なら返してくれても…」

いや、良くない、良くないんだけど嫌々使われるのも…



「嫌なわけないじゃん」

「え?」

「嬉しいよ、本当に。セツの栞が一番嬉しいプレゼントだ」

「…ほ、本当に?」

無意識のうちに俯きかけてた顔を上げてクロスを見る

栞を手に笑うクロスを見てつい動きが止まってしまう

だって、あの笑顔…クロスが今浮かべている笑顔は私がずっともう一度見たいと思っていた笑顔だったからだ
本当に優しく、温かくて、何もかも包み込んでくれるような笑顔

不意打ちにやられて引いたはずの頬の赤みがぶり返す
でも、私にはもう一つやらなきゃいけないことがあった


「クロス」

頬の赤みはこの夜の暗さで気づかれないといいな

そんなことを思いながら私より随分と背の高いクロスを見上げる
目をしっかりと見て、セツとしての最高の笑顔を浮かべた



「誕生日おめでとう!生まれてきてくれてありがとう、クロスと出会えて本当に良かった…!」


「あぁ、ありがとう。…俺の一番の幸福は、お前と出会えたことかもしれないな」



栞を掲げて悪戯っぽく笑うクロスにつられて私もつい笑ってしまった


伝わるかな?なんて心配してたけど、私よりも詳しいクロスが分からないわけがなかったね



カランコエの花言葉
「幸福を告げる」「たくさんの小さな思い出」「あなたを守る」「おおらかな心」


ね?びっくりするくらいクロスにぴったりでしょ?




その夜、私達の笑い声は夜のバルコニーに静かに響いた












「守ってほしいときは遠慮なく言ってね?」

「その意味も含まれてたの?」

「当然!まあ、おおらかな心だけはちょっと違ったかなー?なんて思ったりして」

「余計なお世話だよ」

「拗ねんなよー!」

「おおらかじゃなくていいから額差し出せ」

「ごめんなさい」





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