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第二章
天才か!
しおりを挟む「それで?どうしてお父様はシェイルスさんを私達の家庭教師に任命したのです?シェイルスさんの年齢じゃ、彼もまだ学生のはずでしょう?」
「お嬢様、それは私の方から」
てっきりお父様が説明してくれるのかと思ったら、それよりも先にエドさんが口を開いた
聞けばシェイルスさんはエドさんの旧友の息子だそうだ
けど、残念なことにその友は二年前の火事で妻と共に亡くなり二人の幼い子どもだけが残った
当時、シェイルスさんは成績優秀者として貴族も通うような超有名学校に通っていたが、事故があってから幼い妹を養うために半年足らずで飛び級して卒業した天才らしい
今は街の外れで僅かな賃金で子ども達に学を教えているらしい
つい最近それを知ったエドさんは仲の良かった彼のことを思いなんとか出来ないかと考え、そして父に私達の家庭教師に提案したらしい
もちろん、いくらエドさんのめったにない頼みだからと言ってそう簡単に私達の家庭教師にするわけにもいかないからお父様自ら彼をテストして
「そして見事に合格した、と」
「ああ、彼は本当に優秀だ、まだ十代半ばなのが信じられないよ」
顔笑ってるけどその笑顔ってあれだよね
将来が楽しみだ的なちょっとぎらついてる笑顔だよね
「彼はまだ子ども達の先生を続けるので毎日は無理ですが、頻繁に来てくれると言っていますよ」
「あら、うちの家庭教師っていう仕事を貰っても続けるのですね」
これは決して変な意味ではない
純粋に不思議だったのだ
ノワール家の家庭教師というのはかなり貴重で、そして収入の多い仕事だ
それなのにわざわざ賃金がほとんどない街外れの先生を続けることが意外だったのだ
「子ども達に教え始めたのは自分、それなのに自分の都合に子ども達を巻き込むわけにいかないし、なにより自分はこの仕事が好きだから、と言っていましたよ」
……すごいな、本当に若いのによく出来た人だ
「セツィーリアも気に入ったか」
「へ!?」
「お前は気を許した人には向ける顔が違うからな」
「なんですかそれ無自覚なんですけど!」
向ける顔が違うって!?アホ面になってるってこと!?やばいやばいもっと表情筋鍛えなきゃ!
急いで両手で頬をもみ始めればお父様とエドさんの苦笑が聞こえた
ちょっと!!顔って女の子からしたら笑い事じゃないんですよ!!?
しょうもない二人に怒って、私は顔面マッサージを続けながらユーリとシェイルスさんのいる応接室へ向かった
コンコンッ
「どうぞ」
「失礼いたします」
入ってきたのが私だと気づくとシェイルスさんは慌てた様子もなくまたしても流れるような動きで立ち上がり優雅に私に一礼した
私なんかよりこの人のほうがよっぽど貴族らしいなおい
二人に近づいていけば早速勉強を開始していたのか、本がテーブルの上に広げられていた
来たはいいが、正直手持ち無沙汰だ
どうしようか悩んでいたときシェイルスさんから一枚の紙を貰った
「もし、よろしければセツィーリア様も一緒にどうですか?」
勉強は好きじゃないが今のレベルのを嫌がるほどの勉強嫌いでもない
それに暇だったのは本当だし、そうなればもう結論は出ていた
「それじゃあ、私も参加させていただきます」
ユーリとは少し離れたところにあるテーブルと椅子に腰をかける
受け取ったプリントを見れば色んな教科が難易度順に並んでいた
このぐらい楽勝、と高をくくっていた私は10分後
「……マジか」
見事撃沈することになった
最初は全然平気だった、いつもの通りスラスラと解いていった
けど後半にいくにつれ問題はどんどん難しくなって、私がついにペンを止めたのは前世でも一番苦手にしていた理系問題でのことだった
8歳の理系問題は余裕でクリアできる、けどシェイルスさんから貰ったプリントには到底8歳向けの問題とは思えない問題が載っていた
降参して紙をシェイルスさんに渡せばクスっと笑った
つかクスッと笑うだけでも絵になるとかどういうことだよ
「やっぱり、セツィーリア様はこの手の問題が少し苦手なんですね」
「え?」
まるで知っていました、的なことを言うシェイルスさんに驚く
「旦那様やエドナルク様から少しだけセツィーリア様の性格などについてお話を伺いました。それでもしかしたらと思いまして理系の問題だけ他のより少し難しめに作ってみたんです」
「そ、そうなんですか」
え、何そのプロファイリング術、やばあー!!
そんな少ない情報から割り出すとか不可能に近いだろ天才か!!あっ、天才だった!!
「でも、全体的に見てもとてもよく出来ていますね、お疲れ様でした」
「あっ、はい」
あれ……おおげさに褒められなかった……って!これじゃあ私が褒められたかったみたいじゃん!!
「では次からはこの問題を参考にしてセツィーリア様に合った問題を作ってきますね」
「そんなことが出来るんですか?」
「はい、結構楽しいですよ?」
「うっ」
「セツィーリア様?大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です」
ただあなたのニッコリ笑顔に胸を打たれただけです
あかん、これはあかん
小さいときから美形には慣れてるはずなのに新たなる脅威が脅威すぎてやばい…!!
私綺麗なものには弱いからさあー!!…少しでもそんな笑顔見せられたらHP減りまくりだよー!
幸い、私はそういうのに弱い分立ち直りは早いから、落ち着くために一つ咳払いをしたらもう普通に戻ることが出来た
「シェイルスさん、遅くなりましたが、これからユーリ共々よろしくお願いします」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
少し話しただけだったけど、この人は信じてもいい人だ
根拠も何もないが、直感的にそう思った
「その他の問題はどうでした?」
「ふふ、全然へっちゃらでしたよ。易しすぎてつまらなかったくらいです」
「おや…ではもっとスパルタに行きますね?どうやらセツィーリア様には遠慮が要らないみたいなので」
「……あの、それって問題の話ですよね?なんか笑顔が怖いですよ?」
「気のせいでございます。明日も参りますのでセツィーリア様の為を思って厳しく指導していきますね」
「いやいや頼んでない頼んでないです!そして絶対問題のことを言ってるんじゃないことは分かったわ!」
「問題もスパルタにするつもりですよ?もうつまらないと言われたくないので」
「意外と根に持ってた!!」
信じれるけど……結構意地悪ですねあなた
* * *
「気を許した、というのに否定がなかったな」
「お嬢様は優しすぎて時々心配になりますが、人を見る目はあるので大丈夫でしょう」
「俺はお前が彼を見極めて大丈夫と言った時点で安心してる」
「……お前も存外甘いな」
「心配するな、俺も身内にだけだ」
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