未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢に転生したみたいだけど、これってフラグ回避方法分かんなくね?

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第二章

一瞬

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それは本当に一瞬のことだった







街に着いたと思ったらセツ姉にあっちこっち引っ張り回される羽目になった
シェイルスさんと手を繋いで欲しくなかったから自分から握った手前、手を放してとも言えない
やっと自然に手が離れたらと思ったら散々暴走した後で、しかも…本当に認めたくないんだけど!!……手が離れてちょっと寂しいっていう…気持ちも、なくはない、というか……

ていうかそもそも!僕がこんなにももやもやしたり警戒しなきゃいけなくなったのは全てあのキュアラっていう娘のせいだ!
あいつが変な事言ったりしなければ僕だってもっと素直な気持ちでシェイルスさんやセツ姉に接することが出来たのに…!

……分かってるよ、シェイルスさんはどっからどう見ても非の打ち所のない人だってことは
男の僕から見てもかっこいいし(それにすごく美人)憧れって言ってもあながち嘘じゃない

でも、だからこそ焦るんじゃないか
そんな人がセツ姉を好きになったりしたら、負けるつもりは毛頭ないけど手強いライバルが増えるとのには変わりない
例えあのバカが自分に向けられた好意に一切気づけないバカだとしても、心配なもんは心配なんだよ


少し遠目から雑貨に一々目を輝かせるセツ姉を眺める
ああいうところは普通に女の子なのにね、普段はどうしてあんなに暴れ馬みたくなるんだろう…


「はあ…」

「重いため息ですね」

いきなり横から聞こえた声に少しばかりビクッとする
見なくても分かるが、全ての元凶のキュアラがなぜか僕の横にいた
さっきまでセツ姉の隣で一緒になってはしゃいでたのにいつの間に…

って待てよ!ってことは!

嫌な予感がしてバッ!とセツ姉の方を見ればやっぱりというか、シェイルスさんと楽しそうに話してるセツ姉がいた
前までならなんとも思わなかったのに(それでも少しは思ってた)、こいつのせいでこういう場面を見ただけで心がざわついてしまう
ああもう、僕ってこんなに小さい男だったのかよ…と少しばかりショックを受けながらも邪魔をしに行こうと一歩踏み出せば腕を誰かに掴まれた

それが誰かなんて見なくても分かる
本当はもっと紳士に接したいけど僕にだって許せないことはある

「なんだよ、また何か企んでるのか?」

少し睨みながら振り返れば予想と反してキュアラは真剣な表情をしていた

「少し、いいでしょうか?」

なんだ?と思いながら仕方ないから足を止めた
再び隣に並んだキュアラはセツ姉とシェイルスさんを眺めながら口を開いた


「セツ様がさっき言ってました、"ユーリが今日の見送りについて来たのもきっとキュアラちゃんと離れ難く思ってるからだよ"と」

「お前はそれ、信じたの?」

「まさか、そんなことないですよって謙遜しながら心の中でありえないと叫びました」

「分かってるじゃん」


ていうか何こいつ?わざわざこんな事を僕に聞かせるために呼び止めたの?


「大丈夫ですよ、ユーリ様はセツ様が心配だったから来たのでしょう?」

「…別に、心配とかじゃないし」

「セツ様の言う通り、本当に素直じゃない方ですね。……知ってますか?セツ様ってばずっとあなたやクロスさんの話をしてるんですよ?本人は愚痴のつもりで言ってるみたいなんですけどいつもすごく楽しそうに話すんです。それはもうこっちが嫉妬してしまうくらい」

「……」

そんなのは初耳だ

「僕はてっきりお前がセツ姉に変な入れ知恵をいれているのかと」

例えば自分の兄がどれだけ優秀で素敵なのかを吹き込んだりしているのかと思ってた
でも、まさか…主にそういう話をしていたなんて

「本当に失礼な方ですね、私のことなんだと思ってるんですか」

ジト目で見てくるキュアラの視線が痛い

「あー、その…悪かった」

「あら、意外と素直に謝れるんですね」

「僕に非があるのだから当然だろう?」

ここで謝らなかったらセツ姉の弟としても、何よりノワール家の跡継ぎとしても顔向けが出来なくなる

「それでは、私からの謝罪も受け取ってもらえますか?」

「え?」

聞き返してる暇もなく横を見ればこっちに向かって少しだけ頭を下げているキュアラがいた
本当にどうしたというのだろう。いつもと様子が違いすぎる

「今までの数々の無礼な言動、全ては本心ですが一応お詫びいたします」

前言撤回

「お前謝るつもりないだろ」

本心とか一応とかって言ってる時点で無礼な言動に当たってるって分かってるよね?
すぐに顔を上げたキュアラはやはりケロッとしていて、様子の違うことに少し心配をしてしまった数秒前の自分を怒ってやりたいくらいだ

「いえ、本心ですよ。だから最後に一ついいことを教えてあげようと思いまして」

「いいこと?」

「安心してください。今のところ、兄はまだセツ様のことをもう一人の妹みたく思ってるだけだと思いますよ?」

「え!?本当に!?ていうかお前、気づいてたのならなんであんな事したんだよ!」

「私がそう感じるだけで確信はありませんが。あと、あのような事をした理由は私がセツ様に姉になってもらいたかったから兄とうまくいってくれたらいいなあと思って」

「結局全部お前のせいじゃん!!」

「だから謝ってるじゃないですか」

それが謝ってる人間の態度か!!しれっと言うキュアラに怒りを通り越して呆れすら出てくる始末
しかも終いには「器が小さい男ですね本当に」と言われた、激しく納得いかないんだけど
ていうか本当にシェイルスさんの妹かよ、顔は似てるのに性格は違いすぎる!シェイルスさんを見習え!

「とにかく!これでユーリ様とのわだかまりもなくなったことですし、思う存分兄とセツ様と楽しんでいいということですよね?兄も今日のことは楽しみにしていたので余計な心配はかけたくないんです」

「お前僕とのわだかまりなんて一回も気にしたことないだろ」

あと、僕だってシェイルスさんには世話になってるからその楽しみをぶち壊すようなことはしないよ

「そうですけど、どこかすっきりしない気持ちはあったんですよ?だから本当に良かったと思っています」

「…あっそ」

珍しく挑発的な笑顔じゃない笑みを向けられて、このまま僕が一人で怒っててもそれは単なるエネルギーの無駄だと悟る


「おーい!!ユーリにキュアラちゃん!そろそろ次のお店に行こう?」


扉付近にいた僕達に近づいてくるセツ姉とシェイルスさん

本当に、いつ見てもへらへら笑ってるんだからこの人は
こっちに向かって歩いてくるセツ姉に合わせて僕の方から近づいた
だから先に歩き出した僕は聞くことが出来なかった



「ユーリ様、私は"今のところはまだ"と言ったんですよ?実際には危うい状態だと気づかないのかしら」


キュアラの不穏すぎる言葉なんて




四人(護衛の人は店の外で待機している)でお店を出た瞬間


「きゃー!!」

若い女性の声が聞こえたと思ったら顔を隠した男が女物のバッグを持って走っていくのが見えた
明らかに強盗だと気づいたときには


「待てえー!!!」

「え!?」

「セツ様!?」

「嘘でしょ…」

うちのバカも飛び出していた

幸いそのすぐ後を護衛とシェイルスさんが追いかけ、遠目から護衛はそのまま強盗を、シェイルスさんはセツ姉を捕まえて何かを言ってからそのまま強盗の後を追いかけたのが見えた
少ししょんぼりしてるように感じるセツ姉が一人大人しくこっちに戻ってきてるところを見ると大方シェイルスさんに、強盗は自分たちが追いかけるからあなたは僕たちと一緒にいてください、とでも言われたのだろう
そして恐らくだがしょんぼりしているのはセツ姉のことだ、自分で捕まえたかったのだろう
本当に勘弁して欲しい、この人は自分がただの女の子だっていう自覚がないのか?簡単に危ないことに首を突っ込もうとする性格をなんとかしてほしいものだ、こっちの心臓が持たない


「セツ様!」

キュアラが駆け足で先にセツ姉のとこに駆け寄る
僕もその後をゆっくり追いかけながらどう説教してやろうかと考えていた
それで思いのほか歩く速度が遅くなってしまい、運悪く女性団体の列に進路を塞がれてしまった

一瞬だけ前方にいるセツ姉とキュアラの姿が遮られる


でも、本当に一瞬だったのだ
列が通り過ぎるのに5秒となかったのに


再び開かれた視界のどこにも二人の姿はなかった







「え?…セツ姉?」







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