生贄の救世主

咲乃いろは

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第一章 使命の伝承

暗闇の声

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悪意


憎悪


敵意


悲観


暗鬱


逃れようとする懇願。


助けて、
助けて、


助けて、


たすけて、


たすけて、







タスケテ、







「しっかりしろ!」
「っ!」

パン、と小気味いい音が響いた。アリスの手と柚葉の額はいい音を生み出すようだ。

「す、みません・・・私また、」
「ああ、どっか行ってたな」
「ずっと喋ってていいですか。私耐えられそうにないんですけど」
「頼むからやめてくれ」

歩いている間、ずっと横で何かを喋られるなんて、今度はアリスの方がどうかなりそうだ。というか、ずっと喋っていることができるなら、その気力を集中力に当ててほしい。
叩かれた額を押さえながら、柚葉は大きく息を吐いた。こうして闇に取り込まれそうになるのは何度目だろう。階段を下りて、やっと歩けるくらいの明るさの中を進み続けてしばらく経つが、気が付くと頭が、心が、暗い暗い空間に閉じ込められたようになり、アリスに引っ張り出してもらっている。繰り返す度にそれは間隔が短くなっていった。

「お前、感情移入とかしやすいだろ」
「え?・・あー・・・まぁ、そうですかね」

そう曖昧な返事をしたものの、まったくその通りだった。だが、人にそう言われたのは初めてだ。何も考えてなさそうだとか、喜怒哀楽が右に二個ずつずれているだとか、多分失礼なことは言われ続けてきたが、柚葉をよく知る者のイメージはそうではなかった。順応性が高く、その場の空気に一瞬で溶け込み、まるで最初からそこにいたかのような存在になる。自分の感情を押し込めて、表に出さないことはできるが、一度干渉されてしまった感情は結構引き摺る。
・・・と、家族と幼馴染の親友は言っていた。自分ではよく分からない。

「そんな感じします?私」
「あん?そんな感じ・・・というか、お前は顔に出やすいだろ」
「・・・・は、初めて言われた・・・・!」

何故かものすごく驚き、目を白黒させる柚葉。見たまんまを伝えただけと思っていたアリスは、怪訝な表情で近付いてくる柚葉から顔を逸らせた。柚葉の距離感は狂っているらしい。

「それはどうでもいいが、聞こえてくる声に耳を貸すな。取り巻く空気を寄せ付けるな」
「そう言われましても、そんな陰陽師みたいなこと、一介の女子高生には荷が重いです」
「・・・・何を言っているかよく分からんが、何か集中して考えられるものはないのか。闇に勝てそうな、意識をそこに留まらせるとこができるもの」
「ご飯!」

間髪入れずに答えられた柚葉は、早押し問題では優勝だ。些か答えが間抜けすぎるが、彼女にとって力にはなりそうだ。

「よし、それでいい。合図するまで考えてろ」
「ガッテン承知!今晩のご飯~!」

魚、肉、野菜。それぞれで様々な種類と料理名がポンポンと口から出ているが、忘れてはいけない。柚葉は料理が壊滅的だ。どんな状態の完成品を想像しているのかは分からないが、涎を垂らして幸せそうだから放っておこう。

それからも二人はしばらく歩き続けた。アリスの横でじゅるりと音を立てている柚葉が大変うるさかったが、致し方ない。アリスが取り込まれるなんてヘマはしなかったが、アドバイスを受けてからの柚葉の集中力といったら目を見張るものがあった。食べ物の力は偉大だ。
闇が最高潮に深くなったころ、アリスはふと足を止めた。

「・・・・もういいぞ」
「くさやと納豆とドリアンの砂糖小麦粉ぐちゃぐちゃ炒め!」
「オェ」

単品ずつでもどんなものか知らないアリスが思わず口元を押さえる。何か分からなくても吐き気を催すのは、この闇のせいだろうか。

「お前、やめろよ。俺だって一応これでもギリギリなんだぞ」
「何が?」
「余計吐き気を増すようなこと言うなっつってんだよ」
「アリスさんが考えてろって言ったのに」

ぶぅ、と口を尖らせた柚葉を横目に、前に広がる闇に目を凝らした。耳を澄ますと、何やら人の声が聞こえる。男の野太い声だ。
柚葉も気が付いたのか、表情を硬くしていた。この先に行くのか、という目をされたが、アリスは無論だという目で見返してやる。足音に注意しながら、声のする方へ進むと、揺れる明かりが見えてくる。

「いいか?ここで待ってろ。ぜっっっっっったいに動くな。いいな?」
「ふぁ、ふぁい!」

小声のままアリスに凄まれ、柚葉は何度も頷く。言われなくても行く場所なんてないのだから動かないんだけど、という思いは多分伝わらない。アリスの柚葉への信用は皆無だ。
アリスは柚葉を残して前に出そうとした足を止めて振り返る。

「それから、また飯のことでも考えてろ」
「ガ、ガッテン承知」

次は明日のメニューを考えよう。
親指を立てる柚葉に眉間を寄せながら、アリスは明かりの方へ向かっていった。





















「誰だ、てめぇ?」

そこにいたのは予想通り、というか、調べ通りだった。屈強な男たちが数人、火を囲み、酒を浴びている。この闇の中、これだけの意識を保ってられるのは見上げたものだと思ったが、実際は男たちの精神力ではなかったらしい。
洞窟のようになっている突き当りの隅には、数えきれないほどの野獣の死骸、骨が積み重なっていた。異臭を放ち、鼻を覆わずにはいられない。

「やはり、お前らか。野獣を殺し漁ってるというのは」
「ああん?だから誰なんだよ、てめぇは」

男の一人が赤い顔のまま立ち上がり、フラフラとアリスの近くまで寄ってくる。異臭と混ざる酒の臭い。こいつらの鼻いかれてんのかとアリスは頭の隅で思った。お願いだからその生ごみのような顔を近づけてくるな。

「近い。離れろ」
「うるせぇよ。てめぇは誰だって聞いてんだ。誰の許可でここに入ってきた!」
「距離感が分かってないのが同じなら、ユズハの方がいくらかマシだ・・・」
「あーん!?」
「気にするな、独り言だ」

会話が成り立たないアリスに、男は段々と苛立ちを募らせてくる。それに気づいているのかいないのか、意に介していないアリスの左手が、剣の柄に添えられた。

シャン、と金属音がして、抜き身になった刃が、男たちに向けられた。

「魔力補充のための野獣殺しは世界で禁じられている。もちろん、この国も例外ではない。よって、お前たちはここで拘束。抵抗すればこの場で処刑する」
「何の証拠があって、俺らが魔力補充のために野獣を殺したって言ってんだよ!あそこに転がってんのは俺たちに襲い掛かってきたから殺しただけだ。正当防衛ってやつだよ!」
「ほう」

アリスは男の言葉に目を細めた。

野獣の魔力は人間のそれより倍の量を有している。ただ、野獣は魔力を使う術は知らないから、魔法を使ってくることはないが、その血肉を食べると、魔力が補充できると事実がある。食用の野獣はなく、あまり美味しいものではないというが、力を欲するばかりに食らっているこの男たちのようなやつがいるのだ。
そうした傾向が広がってしまい、野獣は狩られていく。そうすれば怒った野獣は人間を襲うようになり、やがて野獣と人間との戦争のようになってしまった。意思の通じない相手との闘いは終わりが見えず、長期に渡った。得たものは何もなく、お互い、損害ばかりだった。こんなことを繰り返してはいけない。理性を持っている人間が何かしなければと作ったものが、魔力補充のために野獣を殺すことは禁止するという法だ。もちろん、”魔力補充のための”であるので、先日アリスと柚葉を襲ってきた時のようなときは例外だ。

「分かった。正当防衛だとしよう。だが、お前達が食っているものは野獣の肉だ」

そもそも、野獣から魔力を補充すること自体が禁じられているのだから、目的は違えど、野獣を食った時点で違反していることになる。大方、この地下の闇に対抗するため、魔力を補充して呑まれないようにしているのだろうが、そこまでしてこの場所に留まる意味がアリスには分からない。

「違ぇよ。何なら、食ってみるか?」

ニヤリとして男はアリスに肉を差し出す。野獣の肉であることには間違いないのだが、男がここまで余裕でいられるのは、アリスが肉を口にした時点で同罪だからだ。肉が何の肉なのかは、見た目だけでは分からない。この場で見分ける術はないことは分かっているのだろう。

「では、その肉が野獣のものでないとしたら、お前たちのその魔力はなんだ?精神を強化する魔法は一般人が許容する魔力では扱えないのだがな」
「精神を強化する魔法?知らねぇな!」

目の前に差し出された肉を片手で押しやり、アリスは一歩前へ足を踏み出した。しらを切り通す男たちに、いよいようんざりし、会話を続けるのが面倒になってきた。元々気が長い方ではない。これでも耐えた方だと褒めてほしい。

「あーっそ。分かったよ。じゃあお前たちは自分の精神力だけでこの闇に対抗しているということになるな?」
「そういうことだな!俺たちをなめてもらっちゃ困る。これでも昔は城の近衛兵隊にいたんだ」
「それはそれは御立派なことだな」
「・・・てめぇ、馬鹿にしてんのか」

まるで面倒そうになってきたアリスに、男たちは頭に血が上ってくる。低くした声で脅そうとしているのか、血管が浮き出た手でアリスの胸倉を掴んできた。それでもアリスは眉一つ動かさず、されるがままに首元を締め上げられていく。握った剣も下で揺れているだけだ。

「何とか言えよ、あ?声も出ねぇか?」
「・・・・お前らみたいなのがいるから、」
「あ?」

ため息交じりに呟いたアリスは、胸倉を掴む男の手首を、自分の空いている方の手でさらに上から掴む。大人と子ども程の差がある体格差、手首さえもアリスでは掴むことで精一杯のはずだ。

「てめぇらみたいなのがいるから、俺の仕事が減らねぇんだろうが・・・」
「・・・っいっ・・・!」

男の手首を掴む手はギチギチと音を立てて肉へ指が食い込んでいく。同時にアリスを掴んでいた手が緩み、男は悲鳴を上げた。

「うわあぁぁっっ!腕が!腕がぁぁ!」
「うっせぇよ。近衛兵なら腕の一本や二本、国に捧げる覚悟をしただろうが。今更惜しいのか」
「てっ、てめぇは・・・・」

離されてもなお腕を押さえて蹲る男は、アリスとその瞳が交差した。男の目が鬼でも見たかのように震え、みるみるうちに怯えたものに変わっていった。おそらく折れているであろう腕の痛みも忘れ、慌てて尻で後ずさる。

「優秀。・・・思い出したか?」
「アリス=ルヴィン=アステリア第二王子・・・!!」
「ピンポーン。じゃあ俺が、アステリア一族が最も得意とする魔法も分かってるな?」
「せ、精神干渉の・・・」

ふ、とアリスは口角を僅かに上げた。
やっとの思いで震える声を出した男は、完全に戦意を失っている。アリス自身は大して変わっていないのに、その存在を確立させたその瞬間から、アリスという人物が違うものに変わったかのようだ。

「だ、だが!精神干渉の魔法は・・・!」
「ああそうだ。基本、王の許可なしに使えない。だが、あくまで”基本”だ。この状況で俺がそんな曖昧な決まり、守ると思うか?」

まるでいくらでも後付けの理由はできるとでも言っているようだった。男は、いや、男たちは皆言葉を失い、身体が固まってしまっている。アリスが何をしたわけではない。ただそこに”いるだけ”なのに。

「精神干渉の魔法をお前たちに使えば、魔力は吸い出せる。・・・でも、大丈夫だよな?お前たちは自身の精神力でこの闇に対抗しているんだもんな?」
「そ、それは・・・」
「俺だってむやみやたらに魔力を消費する精神干渉の魔法は使いたくない。いちいち親父に言い訳するのも面倒だしな」

精神干渉の魔法は高等魔法。魔力も技術も並程度のものでできるものではない。相手の精神や魔力を操作し、内側から修復も破壊もできる。アリス達王族を中心に使われる魔法だが、その分危険性も高い為、有事の際は王の許可の元、使用するのが基本だ。だが、厳密に無許可で使用したところで罰則があるわけでもないのは、それほど使える人間の絶対数が少ないからだ。

「剣で相手するか?選ばせてやるよ。どっちでもいいぞ。・・・ああ、安心しろよ。俺は兄貴ほど気は短くない」

第一王子。
男の記憶では今は城にいないというが、当時はまだ城で衛兵達の訓練に顔を出して、参加することもあった。その実力は人間離れしていて、どんな攻撃をしかけようと空気を切っているようだった。常に穏やかな笑みを浮かべ、纏う空気は澄んだ青色で、とてもじゃないが気が短いイメージとはかけ離れている。だが男は知っている。第一王子に対する畏怖を、そしてその弟、第二王子の恐ろしさを。

「兄貴ほど心は広くねぇから、手加減はしてやれねぇがな」

アリスの剣を持つ手に力が込められた音がする。








「さぁ、どうする。グレン=マルガート元近衛小隊長?」
「ひっ・・・・!」



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