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第三章 夢の続き
先輩
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ぽすり、とおでこがアリスの胸に当たった。背中にも手の温かい体温を感じる。その衝撃のおかげで、一瞬宙に浮いた意識が戻ってきた。
「ユズハちゃんっ」
「だ、いじょうぶ。すみません、ちょっと立ちくらみしただけ」
「虚勢を張るなら徹底しろよ」
「怒んないでくださいよ。私だって風邪ひきたくてひいたわけじゃ」
「んなのは分かってる」
グレンの仲裁もあって、とりあえず今日はこのままこの場で日を明かすことにした。柚葉自身は大丈夫と思っているのだが、過保護二人が納得しないのでやむなく頷くしかなかったのだ。
とはいえ、自覚症状は身体の怠さだけで、頭痛も喉の痛みも関節痛も、他は大したことない。横になる程のことはなくて、膝を抱えて小さくなっておくだけにした。
「お前は、何で早く言わないんだよ」
「だって、本当に大丈夫なんですって。休む程のことじゃないですし、このくらいなら全然学校だって言ってましたし!」
「そんなカスカスな声でよく言うな」
「え?私声変?」
「ユズハちゃん、自分で分かんないの?」
まじか、全然気付かなかった。喋りづらいと思ってはいたが、反論するのに精一杯で気にも止めていなかったのだ。改めてあー、と自分の声を確認すると、確かに掠れていた。
「横になってなよ、ユズハちゃん」
「大丈夫、です!」
グレンの気遣いにもそっぽをむいて膝の中に顔を埋めた。半ば意地になっている。それは柚葉にも分かっていたのだが、今更引き返せなかった。
アリスとグレンの呆れたため息を耳だけで聞きながら、柚葉の意識は微睡みの中へ堕ちていった。
柚葉は自分の肩をぴくりと揺らし、反射的に目だけをカッと見開いた。
身体の隙間から先程までのように光は入ってこない。気温もかなり下がっている。夜になったのだと揺れる意識の中で理解した。
また、あの夢を見ていた気がする。でも、もう覚えていない。柚葉は頭はよくないが、歴史の語呂合わせくらいは覚えられる。なのに夢とはこんなに早く忘れてしまうものなのか。儚くて、消えてしまいそうなものでもなく、寧ろ強烈で、どこまでも付き纏ってきそうなどろりとしたものなのに。
ゆっくりと顔だけを持ち上げると、アリスとグレンの背中が見えた。火を囲んで、何やら二人で話しているらしかった。見えなくする魔法がどうとか、野獣がどうとか所々聞こえてきたので、恐らく先程の二人には見えなかった野獣のことを話しているのだろう。仲間外れにされているのは悔しかったが、どうも話に入り込んでいくような力がでない。新しい顔が必要かもしれない。
「ユズハ」
いつの間にかアリスの顔が視界いっぱいに広がっていて、頬に冷たい体温を感じるとともに、紅茶の香りがふわりとしてくる。
「熱上がったな」
「やっぱり薬効いてないですか?」
「ああ。一応あそこの薬屋のものを煎じたんだがな」
グレンが懐かしそうに、あああのオヤジのとこ、と納得した。そんな会話をどこか遠くに感じるのは、本当に熱が上がってしまったからだろう。脈打つような頭痛、重い身体、霞む視界。流石に柚葉も認めざるを得なかった。
「ユズハ、動けるか?」
「ん・・・はい・・・」
体育座りのままだった柚葉を寝かせてくれようとしているらしい。殆どアリスに体重を預けてしまいながら、もぞもぞと動いてなんとか身体を横たえる。寝る作業というのはこんなに大変なものだったのか。
そして、横になってしまったが最後、自分は具合が悪いのだと自覚してしまった。こうなってくると、誤魔化していた感覚が一気に押し寄せてくる。
「・・・しんどい・・・」
「言うのが遅い」
「すみませ、・・・っつめた・・・っ」
「お前が熱いんだよ」
柚葉の前髪はそっと避けられ、冷やしたタオルを額に乗せられた。実際はそこまで冷えていないらしい。今はお湯だって水と思って飲める気がする。
「薬が効かない。自力で治すしかない」
「薬って、さっき飲んだやつ・・・?確かアステリアの城下町で買った・・・」
「ああ。元々お前はこの世界の人間ではない。こちらの世界では、魔法があるから、技術や化学はあまり必要とされてない。恐らく、お前の世界とは桁違いにな」
「向こうの世界で育ったユズハちゃんの身体は、高い技術や化学の耐性がついてしまって、こちらの薬ではサプリメントぐらいにしかならないみたいなんだ」
要はあれだ。殺虫剤をかけても、近年はだんだん死ななくなってしまった虫だ。進化を遂げてしまったのだ。
「あのオヤジの店の物は特別でな。異世界人にもある程度効く薬がある。それでも駄目だったんだから、お手上げだな」
「な・・・んで、そんな物が・・・?」
異世界人からしたら是非店舗を拡大してほしいところだが、その異世界人は生贄となるものしかいない。つまり、そんなものを売っても、需要はないのだ。それに、異世界人に効く薬を、どうやって生み出したというのか。
「何も、異世界人の為だけのものではない。当然、この世界の人間にも効くし、寧ろ異世界人に効くくらいだから、こちらの人間には効果覿面だ」
「でも、この世界にはそんな薬を作れる技術はないんですよね・・・?」
「ないよ?」
アリスもグレンも、柚葉が疑問に思っていることの意味が分からないとでも言うようだった。やがて、アリスがああ、と思い出したように声を漏らした。
「あそこのオヤジ、異世界人だからな」
「・・・!?」
「こら、起きるな」
そういえば言ってなかったな、としれっとするアリスに目を剥いて思わず身を起こしてしまった。宥められて再び地面に背をつけるが、頭はパニックになったままだ。
「え?え!?ど、どういうことですか!?」
「殿下、何で教えてあげてなかったんですか・・・ユズハちゃん、あそこのオヤジは84年前、生贄だった人」
「は、はい!?」
今度は起きないよう腹筋に力を入れたが、混乱は総立ちだ。
「84年前の滅びの年に、この世界を救った人物だ」
で、伝説の英雄じゃん・・・。
柚葉もこれから、それになろうとしてることは考えないようにした。
どんなに自分を奮い立たせようと、そんな大それたものになれるとは思っていない。良くて新しい顔を届けにきたおじさんだ。ヒーローの方にはなれやしない。
・・・決しておじさんをディスってるわけではありません。
「い、生贄だった人・・・」
「だからあんな知ったようなこと言ってただろ。変に思わなかったのか」
「思いませんよ!何にも分からないで聞いてたんだから!」
薬屋のオヤジはアリスの祖父に連れられて、ニブルの森へ行ったようだ。魔力の供給が終わった後は20年間昏睡状態。目を覚ました時には時代が過ぎ、アリスの祖父も亡くなっていて、世界を救ったものが誰だったのかなんて忘れ去られていた。
「愕然としたと言っていた。自分のしたことが、されたことが、なかったことにされているようで」
少し俯いて話すアリスの横顔は、歪められていた。彼もまた、柚葉に同じことをさせようとしているのだ。無理もないかもしれない。
「・・・でも、忘れない人がいる」
グレンがアリスの肩に手を置き、柔らかに笑った。それはまるで弟を見ているような目で。
そういえば、彼はアリスより年上で、騎士としては先輩だった。
「アステリアの歴代国王は、決して忘れない。・・・ユズハちゃんも、謁見は済ませたでしょ?」
「あ・・・」
そうだ。
いつかアリスは言っていた。
国王は生贄のその姿を眼に焼き付け、人となりを記憶に宿し、その名を頭に刻み付ける。
その身が滅んでしまうまで。
「オヤジも、それが救いだったと言っていた。それがあったから、生きる価値を見い出せたと」
いつの間にか年をとった身体も受け入れて、いつか自分のように生贄になる異世界人が来るときの為にと、薬屋を開いたそうだ。
元の世界に戻る機会がなかったわけではない。今から15年前に来た、滅びの年の時、空間の歪みが現れたはずだ。そこで帰れたはずだったが、帰らなかった。いや、帰れなかった。
何十年も経ってしまった身体を元の世界に戻して、どうしろと言うのか。時間の流れが一緒かどうかは分からない。だが、時間が止まっていても、進んでいても、そこには時差が出来てくる。それを乗り越える自信はなかったのだ。
「年も年だから、この世界で一生を終えることを決めたそうだ。それまで、自分と同じ境遇の人間を助けたいと」
「・・・そう・・・だったんですか・・・」
パニックになっていた頭には、いつの間にか別の何かがうずめきあっていた。今は、その正体が何なのかは分からない。
「名は確か、ホウライマサシ・・・」
「・・・日本人・・・?」
「元の世界では、医者を目指していたと言っていたな」
それで、薬なんか作れるのか。もちろん、目指していたと言うくらいだから、実践経験はなかっただろうし、ほぼ独学だろう。それに、知識が万全でも、この世界には材料が限られている。その中で作り出しているのだから、日本でそのまま医者になっていたなら、有能な名医になっていたことだろう。
「・・・でも、84年前って、あのおじいさんいくつ・・・?」
「今年で110だったはずだよ」
「な、長生き・・・」
「ユズハちゃんっ」
「だ、いじょうぶ。すみません、ちょっと立ちくらみしただけ」
「虚勢を張るなら徹底しろよ」
「怒んないでくださいよ。私だって風邪ひきたくてひいたわけじゃ」
「んなのは分かってる」
グレンの仲裁もあって、とりあえず今日はこのままこの場で日を明かすことにした。柚葉自身は大丈夫と思っているのだが、過保護二人が納得しないのでやむなく頷くしかなかったのだ。
とはいえ、自覚症状は身体の怠さだけで、頭痛も喉の痛みも関節痛も、他は大したことない。横になる程のことはなくて、膝を抱えて小さくなっておくだけにした。
「お前は、何で早く言わないんだよ」
「だって、本当に大丈夫なんですって。休む程のことじゃないですし、このくらいなら全然学校だって言ってましたし!」
「そんなカスカスな声でよく言うな」
「え?私声変?」
「ユズハちゃん、自分で分かんないの?」
まじか、全然気付かなかった。喋りづらいと思ってはいたが、反論するのに精一杯で気にも止めていなかったのだ。改めてあー、と自分の声を確認すると、確かに掠れていた。
「横になってなよ、ユズハちゃん」
「大丈夫、です!」
グレンの気遣いにもそっぽをむいて膝の中に顔を埋めた。半ば意地になっている。それは柚葉にも分かっていたのだが、今更引き返せなかった。
アリスとグレンの呆れたため息を耳だけで聞きながら、柚葉の意識は微睡みの中へ堕ちていった。
柚葉は自分の肩をぴくりと揺らし、反射的に目だけをカッと見開いた。
身体の隙間から先程までのように光は入ってこない。気温もかなり下がっている。夜になったのだと揺れる意識の中で理解した。
また、あの夢を見ていた気がする。でも、もう覚えていない。柚葉は頭はよくないが、歴史の語呂合わせくらいは覚えられる。なのに夢とはこんなに早く忘れてしまうものなのか。儚くて、消えてしまいそうなものでもなく、寧ろ強烈で、どこまでも付き纏ってきそうなどろりとしたものなのに。
ゆっくりと顔だけを持ち上げると、アリスとグレンの背中が見えた。火を囲んで、何やら二人で話しているらしかった。見えなくする魔法がどうとか、野獣がどうとか所々聞こえてきたので、恐らく先程の二人には見えなかった野獣のことを話しているのだろう。仲間外れにされているのは悔しかったが、どうも話に入り込んでいくような力がでない。新しい顔が必要かもしれない。
「ユズハ」
いつの間にかアリスの顔が視界いっぱいに広がっていて、頬に冷たい体温を感じるとともに、紅茶の香りがふわりとしてくる。
「熱上がったな」
「やっぱり薬効いてないですか?」
「ああ。一応あそこの薬屋のものを煎じたんだがな」
グレンが懐かしそうに、あああのオヤジのとこ、と納得した。そんな会話をどこか遠くに感じるのは、本当に熱が上がってしまったからだろう。脈打つような頭痛、重い身体、霞む視界。流石に柚葉も認めざるを得なかった。
「ユズハ、動けるか?」
「ん・・・はい・・・」
体育座りのままだった柚葉を寝かせてくれようとしているらしい。殆どアリスに体重を預けてしまいながら、もぞもぞと動いてなんとか身体を横たえる。寝る作業というのはこんなに大変なものだったのか。
そして、横になってしまったが最後、自分は具合が悪いのだと自覚してしまった。こうなってくると、誤魔化していた感覚が一気に押し寄せてくる。
「・・・しんどい・・・」
「言うのが遅い」
「すみませ、・・・っつめた・・・っ」
「お前が熱いんだよ」
柚葉の前髪はそっと避けられ、冷やしたタオルを額に乗せられた。実際はそこまで冷えていないらしい。今はお湯だって水と思って飲める気がする。
「薬が効かない。自力で治すしかない」
「薬って、さっき飲んだやつ・・・?確かアステリアの城下町で買った・・・」
「ああ。元々お前はこの世界の人間ではない。こちらの世界では、魔法があるから、技術や化学はあまり必要とされてない。恐らく、お前の世界とは桁違いにな」
「向こうの世界で育ったユズハちゃんの身体は、高い技術や化学の耐性がついてしまって、こちらの薬ではサプリメントぐらいにしかならないみたいなんだ」
要はあれだ。殺虫剤をかけても、近年はだんだん死ななくなってしまった虫だ。進化を遂げてしまったのだ。
「あのオヤジの店の物は特別でな。異世界人にもある程度効く薬がある。それでも駄目だったんだから、お手上げだな」
「な・・・んで、そんな物が・・・?」
異世界人からしたら是非店舗を拡大してほしいところだが、その異世界人は生贄となるものしかいない。つまり、そんなものを売っても、需要はないのだ。それに、異世界人に効く薬を、どうやって生み出したというのか。
「何も、異世界人の為だけのものではない。当然、この世界の人間にも効くし、寧ろ異世界人に効くくらいだから、こちらの人間には効果覿面だ」
「でも、この世界にはそんな薬を作れる技術はないんですよね・・・?」
「ないよ?」
アリスもグレンも、柚葉が疑問に思っていることの意味が分からないとでも言うようだった。やがて、アリスがああ、と思い出したように声を漏らした。
「あそこのオヤジ、異世界人だからな」
「・・・!?」
「こら、起きるな」
そういえば言ってなかったな、としれっとするアリスに目を剥いて思わず身を起こしてしまった。宥められて再び地面に背をつけるが、頭はパニックになったままだ。
「え?え!?ど、どういうことですか!?」
「殿下、何で教えてあげてなかったんですか・・・ユズハちゃん、あそこのオヤジは84年前、生贄だった人」
「は、はい!?」
今度は起きないよう腹筋に力を入れたが、混乱は総立ちだ。
「84年前の滅びの年に、この世界を救った人物だ」
で、伝説の英雄じゃん・・・。
柚葉もこれから、それになろうとしてることは考えないようにした。
どんなに自分を奮い立たせようと、そんな大それたものになれるとは思っていない。良くて新しい顔を届けにきたおじさんだ。ヒーローの方にはなれやしない。
・・・決しておじさんをディスってるわけではありません。
「い、生贄だった人・・・」
「だからあんな知ったようなこと言ってただろ。変に思わなかったのか」
「思いませんよ!何にも分からないで聞いてたんだから!」
薬屋のオヤジはアリスの祖父に連れられて、ニブルの森へ行ったようだ。魔力の供給が終わった後は20年間昏睡状態。目を覚ました時には時代が過ぎ、アリスの祖父も亡くなっていて、世界を救ったものが誰だったのかなんて忘れ去られていた。
「愕然としたと言っていた。自分のしたことが、されたことが、なかったことにされているようで」
少し俯いて話すアリスの横顔は、歪められていた。彼もまた、柚葉に同じことをさせようとしているのだ。無理もないかもしれない。
「・・・でも、忘れない人がいる」
グレンがアリスの肩に手を置き、柔らかに笑った。それはまるで弟を見ているような目で。
そういえば、彼はアリスより年上で、騎士としては先輩だった。
「アステリアの歴代国王は、決して忘れない。・・・ユズハちゃんも、謁見は済ませたでしょ?」
「あ・・・」
そうだ。
いつかアリスは言っていた。
国王は生贄のその姿を眼に焼き付け、人となりを記憶に宿し、その名を頭に刻み付ける。
その身が滅んでしまうまで。
「オヤジも、それが救いだったと言っていた。それがあったから、生きる価値を見い出せたと」
いつの間にか年をとった身体も受け入れて、いつか自分のように生贄になる異世界人が来るときの為にと、薬屋を開いたそうだ。
元の世界に戻る機会がなかったわけではない。今から15年前に来た、滅びの年の時、空間の歪みが現れたはずだ。そこで帰れたはずだったが、帰らなかった。いや、帰れなかった。
何十年も経ってしまった身体を元の世界に戻して、どうしろと言うのか。時間の流れが一緒かどうかは分からない。だが、時間が止まっていても、進んでいても、そこには時差が出来てくる。それを乗り越える自信はなかったのだ。
「年も年だから、この世界で一生を終えることを決めたそうだ。それまで、自分と同じ境遇の人間を助けたいと」
「・・・そう・・・だったんですか・・・」
パニックになっていた頭には、いつの間にか別の何かがうずめきあっていた。今は、その正体が何なのかは分からない。
「名は確か、ホウライマサシ・・・」
「・・・日本人・・・?」
「元の世界では、医者を目指していたと言っていたな」
それで、薬なんか作れるのか。もちろん、目指していたと言うくらいだから、実践経験はなかっただろうし、ほぼ独学だろう。それに、知識が万全でも、この世界には材料が限られている。その中で作り出しているのだから、日本でそのまま医者になっていたなら、有能な名医になっていたことだろう。
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