魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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353 白猫ちゃんに手を貸したい!

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 不安になって思わず白猫姿の王子に目をやると、彼をからかうように周囲を飛び回る精霊の姿が見えた。どうやら、王子にくっついてきたらしい。
 精霊はやたら点滅を繰り返しながら、『お? やんのか? やんのか?』とお行儀よく座っている白猫にオラついている。

 おっと、王子の尻尾が煩わしそうにイライラと暴れ回っていますよ。顔は気にしない風を装ってツンと澄ましているけれど、内心では精霊のウザがらみが結構効いているようだ。段々と耳まで下がってきた。これは飛び掛かるまで秒読みですね。
 このまま私の部屋で暴れられても困るので、煽り上手ないじめっ子精霊さんたちには早いとこお帰りいただきましょうか。


「ほらほら、精霊さん達もそうやって王子をからかわないの。みんなで寄ってたかって可哀想じゃない。おやつあげるから大人しくしてね」


 王子のために用意していたおやつセットをそのまま差し出せば、途端にわらわらと群がる精霊さん達。見た目は儚げで神秘的だけど、ガツガツと音を立てておやつを食べる様子は豪快そのもの。この様子だと、お腹が空いていたのかもしれない。
 もしかして、それでイライラして王子に絡んでいたのかな? ああ、うん。精霊さんてば結構俗っぽいとこあるし、普通にありそうだ。


「僕のホットミルクとクッキーが!!」


 王子の抗議が聞こえるけれど、どうせその姿じゃどっちもあげられませんからね。ここは有効利用をさせてもらいますよ。むしろ、精霊さん達がいてくれたお陰で用意したおやつが無駄にならなくてよかったです。

 出されたおやつをキレイに平らげると、精霊さんのほとんどは姿を消した。どうやら満足して向こうの世界に帰ったようだ。僅かに残った精霊達も、王子をからかうことをやめてテレビやお気に入りの電化製品の傍で思い思いに過ごしている。ちなみに、今日の一番人気は冷蔵庫のようだ。最近暑いから、それが影響しているのかもしれない。


「僕のおやつなのに……」

「はい、今日の王子のおやつはこっちよ。お水とお魚」


 まだブツブツ言っている白猫王子には、猫ちゃんのために用意していたおやつセットをそのままあげることにする。
 猫ちゃん用なので魚に味はつけていないけど、品質的には人間だって普通に食べられるものですよ。たとえ猫の姿をしていても、偽王子(猫耳)に変なものを食べさせるわけにはいきませんからね。

 王子は自分に出された水と魚を見て、「猫じゃあるまいし……」と不満をこぼしていたけれど、結局、喉の渇きには勝てなかったようだ。
 大人しく水に口をつけた――のだが。

 カシャン。
 びしゃびしゃー……


 どうやら猫の姿では勝手が違い過ぎて、お皿に入った水を上手く飲むことができないらしい。前足でお皿を持ち上げようとして、そのままひっくり返してしまった。
 王子は床にこぼれた水を見ながら、しょんぼりとしっぽを下げている。

 その姿があまりにも可愛いので……じゃなかった、可哀想なので、少しばかり白猫ちゃんに手を貸してあげることにした(わくわく♡)。





※※※※※

 お知らせ
『もうやめましょう。あなたが愛しているのはその人です』のレンタル版の配信が始まりました! それにあわせて、『もうやめましょう~』の作品ページ内で前日譚ともいえる番外編『獣人学者は運命の番を許さない』の連載を始めましたので、そちらもよろしくお願いいたします!




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