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12 寝落ち王子のスローライフ
しおりを挟む翌日、バイトが終わり約束通り王子を召喚したらやっぱり髪から水が垂れている。
仕方がないので昨日と同じようにドライヤ―で乾かしてやるが、いつもはこれどうしてるんだ……? 流石に心配になって聞いてみたら、乾くまで放置しているらしい。
幽閉される前はお付きの人に魔法で乾かしてもらっていたらしいが、今は召喚魔法陣の改良と魔力注入に極振りしているので自分でも出来るけど余計な生活魔法は節約しているとのこと。
いや、だから努力の方向間違えてるって!
「健康を考えてちゃんとしないならもう召喚しない」
――と脅したらしっかり乾かすと真っ青な顔で約束をしてくれた。生活魔法を使うくらいなら召喚には影響を与えないそうだ。だったら最初からちゃんとやれよ……。ってか、それって面倒だからサボっていただけだよね?
さて。説教も終わったところで今日のおやつは――アイスです。しかも、ちょっとお高い高級アイス。たまたまスーパー寄ったら特売で安かったからこれにした。
「風呂上がりに美味いな」
そう言って、王子は大喜びで食べている。やっぱ風呂上がりだったのか。髪の毛びしょぬれで、しかもちょっとホカホカしてたもんね。そうだろうと思って今日はアイスにしたのだ。
ちなみにおやつに高級アイスを食べるのは初めてではないそうだ。全自動召喚のとき、鈴木さん家で勝手に食べて怒られたって。いや、小学生か。ってか、どれだけ迷惑かけてんだ……。
そんな王子は今ではきちんとしつけが入った状態なので、今日はちゃんと、2種類あるうちどっちを食べていいのか私に聞いてから食べていた。鈴木さんの苦労が偲ばれる。
まあ、私はどっちでもいいので、というか王子の好みがまるで分らないから適当にチョコとバニラにしただけなので、本人に選ばせた。チョコバナナでハマったのか、王子は迷わずチョコレートアイスを選んでいた。
そして、体が冷えてもいけないので温かいノンカフェインの紅茶を飲みながらのスローライフ。を横目に見ながらの読書タイムスタート。
遊び方は昨日に引き続き釣り。農作業は最低限。王子曰く、いつもと違う時間帯の召喚はいつもとは違う遊び方をしたいらしい。今日はあちこち釣り場所を変えて夜釣りを楽しんでいた。
そして、相変わらずいつの間にやら寝落ちする。
その様子を見て。この王子は割と規則正しい生活をしているんだなあ、と感心した。そりゃあそうか。塔に幽閉されて、毎日同じような生活を送っていたらそうなるに違いない。
夏休みだからって段々と夜型生活にずれ込んでいく自分とは大違いだ。まあ、それでも早朝バイトをやっている分、起きる時間は変わらないので幾分マシだけど。
塔に幽閉され、毎日同じような生活をしている王子にとって、このゲームをしている時間はよほど大事なんだろうな、と思うと色々な経験をさせてあげたくなってくる。
が、この状態では今日はもう無理だろう。
昨日に引き続き帰るようにと促すが、やはり抵抗する。と、いうか昨日より抵抗が頑なだ。まあ、仕方ないかな。
実は、明日は王子側の都合で召喚はナシ。これは前から聞いていたことで、年に数回、例の魅了の治療状態の確認のために色々検査をされるのだそうだ。
魅了って闇が深いなあ……。
「明日、検査あるんでしょ? 早く帰って寝ないと」
「もう少し……キリがいいとこまで。もう少しだけ遊んでか……ら」
テスト前の学生か! あれだ。マンガ読んだりゲームしたりの現実逃避。でもまあ、やりたくないことやらなくちゃいけないって意味では同じかな。
何とか説得しないと。
とはいえ、あんまりもう召喚しないぞって脅すのも良くない気がする。傷つけそうだし効果が薄れそうだし。何より本日二回目だ。
鞭がダメなら飴だよな。ってことで。
「明後日来るとき、好きなおやつ用意しておいてあげるから。ほらリクエストは? 何がいいの?」
「コーラとポテトチップス……」
「分かった。チョコレートもつけるから」
……と、言ったらご機嫌で帰って行きました。
ちなみに。
この日は土曜日。日曜を挟んで月曜日に呼び出すとき、チョコレートのかかったポテトチップスを用意しておいたらそうじゃないと微妙な反応が返ってきた。
あれー? これ美味しいのにな。
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