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13 王子の居ぬ間に
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時はちょっとだけ戻って日曜日。二日連続の夜召喚をした翌日のこと。
今日はバイトもないし、王子を召喚しなくていいので、私は久しぶりに実家へと帰ることにした。
大学入学後一人暮らしを始めたが、バイトや勉強で忙しく、実家に帰るのはゴールデンウィーク以来初めてだ。たまには帰ってきなさいと言われていたが、ゴールデンウィークの帰省後しばらくして例の魔法陣ラグを手に入れてしまい、王子を召喚することになってからはずっと後回しにしていた。
今日は時間を気にせず実家にいられるし、日曜日だからきっと社会人の兄達もいるはずだから丁度いい。
私は4人兄妹の末っ子で、上には兄が3人。一番上とは10歳離れているし、私は唯一の妹なので割と可愛がってもらっていると思う。
私がゲームをやるようになったのは4歳年上の兄の影響だ。歳が一番近いから、その3番目の兄に遊んでもらうことが多かった。その兄がゲーム好きだったので、自然と私もやるようになったのだ。一番話も合うと思う。
我が家は家族仲が良く、居心地がいいのか社会人になっても長男も次男も家を出なかった。勉強を見てもらえるし、遊んでもらえる私はそれでよかったが、このままじゃ将来お嫁さんこないかも……と心配をした母親が、一度は一人暮らしをしなさいと、上の二人を追い出した。三男から後は大学進学と共に一人暮らし経験をさせることに決め、今に至る。
ちなみに。長男は一人暮らしに慣れたのか、実家近くのアパートに住んでいるが、次男は2~3年ほどで家賃が無駄だからと実家に戻った。私と仲良しの3番目の兄も大学卒業後私と入れ違いに実家へと戻った。長男も夕飯は実家で食べているらしいし、実家大好きなのは変わらないらしい。
親も一人暮らし経験をさせるという当初の目的は果たしたからそれでいいようだ。
私が実家に帰ると両親は喜んで、揃って車で買い物へと出掛けて行った。夕飯はご馳走にするそうだ。その材料を買いに行ったらしい。ちょっと考えていたことがある私はとりあえず自分の部屋へと行ったのだが。
見事に物置になっていた。
まあ、実家を出た子供の部屋なんてこうなるか……とも思うが、置いてあるのは3番目の兄の物ばかり。それで、察する。
これ、あれだ。大学卒業と共に実家に戻ったから、片付けていない荷物をとりあえず入れ違いに出てった私の部屋に突っ込んだんだ。ゴールデンウィークは初めての帰省ということもあり、お出かけばっかりしていて部屋には入らなかったから気が付かなかった。
今日は日曜日。ゲームで夜更かししたであろう3番目の兄はまだ寝ている筈だ。叩き起こして文句を言ってやろうかと思ったが、部屋に入ってすぐのところで私はお宝を発見してしまう。
数年前に私が買えなかったスポーツメーカーの福袋。
男物の福袋の方が中身が好みで、Sサイズを買いたかったのだが売り切れで手に入らなかったヤツ。それが、中身が入ったままで置いてある。
兄の物だからLLサイズでかなり大きいが、使っていないようだしコレは欲しい。ってか、他にもないかなと思って荷物をゴソゴソしていたら3番目の兄が起きてきた。
「お早う、お兄ちゃん。これ頂戴!」
「いや、何で居るんだよ……。ってか一声目がそれか。お早う」
兄によると、好みだったから買ったはいいけど着てみたら入らなかったらしい。ゲームもそうだけど、この兄とはかなり好みが近いのだ。身長体重はかなり違うけど。
家族の中で一番大きいこの兄は上もでかいけど横にも少しでかい。……ってか、また太ったな。だから入らなかったのか。
「あげてもいいけどサイズ違うだろ。あっ! もしかして彼氏でもできたのか!?」
「……」
スン……とした顔になる私。そういう人を傷つける冗談はよろしくないと思う。
「ま……まあ、あれだ。女の子っていうのはダボっとした感じで大きめをあえて着たりもするからな。よくあるよくある」
表情から何かを察した兄が慌ててフォローを入れてくるが。
「……その女の子はちゃんと3次元?」
私の言葉に、スン……とした顔になる兄。ふふん。兄妹ですからね。同類なのは分かってる。
「なんだ、なんだ。久しぶりなのに相変わらず仲良しだなー。同じ顔してる」
「「……」」
騒いでいたら2番目の兄まで起きてきた。
「ま~突っ立ってないでいつも通りゲームで勝負すりゃいいんじゃないか?」
それもそうかと3番目の兄の部屋へ行きゲームを起動。懐かしのレースゲームで勝負をするが……。
「相変わらず真っ向勝負で、アイテムの使い方ド下手だな~」
「うるさいな」
ガチゲーマーの兄に勝てるはずもなく散々ボロ負けを繰り返す。これ、どうやったら勝てるのか……昔っから苦手なんだよな。レース系。恥を忍んで勝利へのアドバイスを求めれば。
「このゲーム知らない奴とやれば勝てるんじゃないか?」
と、それなりに役にたつアドバイスをいただけた。思い浮かんだのは当然王子だ。
そうだ、ゲーム初心者であろう彼相手なら勝てるかもしれない……!!
福袋の方はやっぱり痩せたら着るだ、無理だ、色々あったが、取りあえず一緒にゲームをしていたら仲直りしたので最後は快く譲ってくれた。ありがたし!!
その日は結局泊って帰ることになった。長男も夕飯を食べに来たから久しぶりの家族全員集合になった。久しぶりの実家だけど、自分の部屋は3番目の兄のせいで段ボールだらけだけど、やっぱり人がいるのは落ち着くな、と思った。
そして思う。
一人で幽閉されている王子は今、何をしているんだろうか……。
――で、思い出した。
最近、帰るのをごねだした王子。飴を追加する意味で、古い、今は使っていない携帯ゲーム機を貸してあげるために取りに来たんだった。1人きりの生活でも、ゲームがあれば寂しくないよね。私がそうだから。
最新ゲーム機種は使っているから渡せないけど、古いのでもソフトは結構あるし、充電さえしておけば動くから王子に貸すにはちょうどいいと思う。
何となく、好きそうなソフトを選別していたら、早く渡したくなってきた。喜んでくれるかな?
とりあえず3番目の兄からもらったギャルゲーは入れておいた。
こういうの鈴木さん家でやっていたみたいだし、きっと喜ぶよね!
今日はバイトもないし、王子を召喚しなくていいので、私は久しぶりに実家へと帰ることにした。
大学入学後一人暮らしを始めたが、バイトや勉強で忙しく、実家に帰るのはゴールデンウィーク以来初めてだ。たまには帰ってきなさいと言われていたが、ゴールデンウィークの帰省後しばらくして例の魔法陣ラグを手に入れてしまい、王子を召喚することになってからはずっと後回しにしていた。
今日は時間を気にせず実家にいられるし、日曜日だからきっと社会人の兄達もいるはずだから丁度いい。
私は4人兄妹の末っ子で、上には兄が3人。一番上とは10歳離れているし、私は唯一の妹なので割と可愛がってもらっていると思う。
私がゲームをやるようになったのは4歳年上の兄の影響だ。歳が一番近いから、その3番目の兄に遊んでもらうことが多かった。その兄がゲーム好きだったので、自然と私もやるようになったのだ。一番話も合うと思う。
我が家は家族仲が良く、居心地がいいのか社会人になっても長男も次男も家を出なかった。勉強を見てもらえるし、遊んでもらえる私はそれでよかったが、このままじゃ将来お嫁さんこないかも……と心配をした母親が、一度は一人暮らしをしなさいと、上の二人を追い出した。三男から後は大学進学と共に一人暮らし経験をさせることに決め、今に至る。
ちなみに。長男は一人暮らしに慣れたのか、実家近くのアパートに住んでいるが、次男は2~3年ほどで家賃が無駄だからと実家に戻った。私と仲良しの3番目の兄も大学卒業後私と入れ違いに実家へと戻った。長男も夕飯は実家で食べているらしいし、実家大好きなのは変わらないらしい。
親も一人暮らし経験をさせるという当初の目的は果たしたからそれでいいようだ。
私が実家に帰ると両親は喜んで、揃って車で買い物へと出掛けて行った。夕飯はご馳走にするそうだ。その材料を買いに行ったらしい。ちょっと考えていたことがある私はとりあえず自分の部屋へと行ったのだが。
見事に物置になっていた。
まあ、実家を出た子供の部屋なんてこうなるか……とも思うが、置いてあるのは3番目の兄の物ばかり。それで、察する。
これ、あれだ。大学卒業と共に実家に戻ったから、片付けていない荷物をとりあえず入れ違いに出てった私の部屋に突っ込んだんだ。ゴールデンウィークは初めての帰省ということもあり、お出かけばっかりしていて部屋には入らなかったから気が付かなかった。
今日は日曜日。ゲームで夜更かししたであろう3番目の兄はまだ寝ている筈だ。叩き起こして文句を言ってやろうかと思ったが、部屋に入ってすぐのところで私はお宝を発見してしまう。
数年前に私が買えなかったスポーツメーカーの福袋。
男物の福袋の方が中身が好みで、Sサイズを買いたかったのだが売り切れで手に入らなかったヤツ。それが、中身が入ったままで置いてある。
兄の物だからLLサイズでかなり大きいが、使っていないようだしコレは欲しい。ってか、他にもないかなと思って荷物をゴソゴソしていたら3番目の兄が起きてきた。
「お早う、お兄ちゃん。これ頂戴!」
「いや、何で居るんだよ……。ってか一声目がそれか。お早う」
兄によると、好みだったから買ったはいいけど着てみたら入らなかったらしい。ゲームもそうだけど、この兄とはかなり好みが近いのだ。身長体重はかなり違うけど。
家族の中で一番大きいこの兄は上もでかいけど横にも少しでかい。……ってか、また太ったな。だから入らなかったのか。
「あげてもいいけどサイズ違うだろ。あっ! もしかして彼氏でもできたのか!?」
「……」
スン……とした顔になる私。そういう人を傷つける冗談はよろしくないと思う。
「ま……まあ、あれだ。女の子っていうのはダボっとした感じで大きめをあえて着たりもするからな。よくあるよくある」
表情から何かを察した兄が慌ててフォローを入れてくるが。
「……その女の子はちゃんと3次元?」
私の言葉に、スン……とした顔になる兄。ふふん。兄妹ですからね。同類なのは分かってる。
「なんだ、なんだ。久しぶりなのに相変わらず仲良しだなー。同じ顔してる」
「「……」」
騒いでいたら2番目の兄まで起きてきた。
「ま~突っ立ってないでいつも通りゲームで勝負すりゃいいんじゃないか?」
それもそうかと3番目の兄の部屋へ行きゲームを起動。懐かしのレースゲームで勝負をするが……。
「相変わらず真っ向勝負で、アイテムの使い方ド下手だな~」
「うるさいな」
ガチゲーマーの兄に勝てるはずもなく散々ボロ負けを繰り返す。これ、どうやったら勝てるのか……昔っから苦手なんだよな。レース系。恥を忍んで勝利へのアドバイスを求めれば。
「このゲーム知らない奴とやれば勝てるんじゃないか?」
と、それなりに役にたつアドバイスをいただけた。思い浮かんだのは当然王子だ。
そうだ、ゲーム初心者であろう彼相手なら勝てるかもしれない……!!
福袋の方はやっぱり痩せたら着るだ、無理だ、色々あったが、取りあえず一緒にゲームをしていたら仲直りしたので最後は快く譲ってくれた。ありがたし!!
その日は結局泊って帰ることになった。長男も夕飯を食べに来たから久しぶりの家族全員集合になった。久しぶりの実家だけど、自分の部屋は3番目の兄のせいで段ボールだらけだけど、やっぱり人がいるのは落ち着くな、と思った。
そして思う。
一人で幽閉されている王子は今、何をしているんだろうか……。
――で、思い出した。
最近、帰るのをごねだした王子。飴を追加する意味で、古い、今は使っていない携帯ゲーム機を貸してあげるために取りに来たんだった。1人きりの生活でも、ゲームがあれば寂しくないよね。私がそうだから。
最新ゲーム機種は使っているから渡せないけど、古いのでもソフトは結構あるし、充電さえしておけば動くから王子に貸すにはちょうどいいと思う。
何となく、好きそうなソフトを選別していたら、早く渡したくなってきた。喜んでくれるかな?
とりあえず3番目の兄からもらったギャルゲーは入れておいた。
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