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64 前期試験のお時間です
しおりを挟む「早速、今日はコンビニを建設……」
「あ、ごめん。私そろそろテスト勉強しなきゃいけないの」
幽閉中の塔の横に見事な私の理想のアパート(お風呂広め)が完成した翌日。王子にコンビニの建設を誘われたが断った。
本音を言えば是非ともやりたい。でも、テストの日程は変えられない。そろそろ勉強しないとまずいだろう、という時期だ。
私はテスト勉強は嫌いじゃないけど、かといって別に好きなわけでもない。なので、流石に3D酔いしながらのテスト勉強はやりたくない。だからあのゲームはしばらく封印。私としてはテスト勉強中の気晴らしにゲームをするなら一狩り行くぐらいが丁度いい。まあ、一狩りじゃすまなくなるから我慢するけどね。うう……我慢。
と、いう訳で。私はひとまず建設からは離れ、大人しくテスト勉強を頑張ることにした。こればかりは仕方がない。憂いなく夏休みを迎えるためだから。
それに、その方が王子にとっても結果的にはいいはずだ。無事に夏休みを迎えられれば召喚時間も増えるしね☆
「そうか。それなら仕方がないな。テスト後にしよう」
そう言うと、王子は大人しくスローライフゲームを始めた。王子は真面目を拗らせていたというだけあって、こういう事にはとても理解がある。
さりげなくイヤホンを使い、勉強の邪魔をしないようにしてくれる配慮がありがたい。
なるほど。建築はひとまず休んで、しばらくはスローライフを楽しむようだ。1人でクラフト系ゲームをやって、3D酔いを起こして召喚時間を無駄にするよりは、他のゲームで思う存分遊ぶことを優先したのだろう。
――と、思ったのだけど。
勉強の気晴らしに時折王子の動きを眺めていたら。二時間ほどスローライフゲームを楽しんだ後、クラフト系ゲームに切り替えたことに気が付いた。
我慢できなくなったのだろうか。いや、でもスローライフはスローライフで楽しんでいた。時刻は午後17時少し前。
もしや、コレは――。
一時間ほど建設に勤しんで、顔色を悪くしつつも満足そうな王子がそろそろ帰ると言い出した。やはり、コレは――。
「うん。やはり、こうすれば時間を無駄にすることなく効率的にゲームが出来るな。テスト期間が終わるまではこれでいこう」
顔色悪く力なく微笑んで、王子はフラフラと自分の世界へと帰って行った。
……間違いない。これは。
召喚時間は約三時間。一時間で3D酔いを起こして遊べなくなる。ならば――二時間別のゲームで思いっきり楽しんで、最後の一時間で心置きなく3D酔いを起こすまでクラフト系ゲームを楽しもう!!
――という意思の表れだ。
この日を境に、王子が決めたこの新3D酔い対策は実行され続けることになる。そのせいでとんでもない事態になるのだが――この時の王子も私も気付く訳がない。
――こうして王子の、方向性を間違えた努力が始まった。
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