魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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88 ラスボス召喚! 眠れる偽王子(腹黒)

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「…………限界です……」

「まあ大変! 休まないと!! さあ、さあ、こちらへ!」


 コントローラーを力なく落とし、口元を覆う偽王子を彼のお気に入りのビーズクッションへと誘導する。途端にクッションに体を預け、クターっと力を抜く偽王子(腹黒)。


 良かった……! とりあえずサクッとされなくて済みそうだ……!



 昨日の予想通り腹黒さんがやってきて。来るなりクラフト系ゲームを立ち上げて、貼り付けたような笑顔で塔の確認を始めた時はどうしようかと思ったけれど。

 流石は王子渾身の巨大建築。しかも上下の高低差が激しい塔。上を見たり下を見たり、チェックの過程で偽王子(腹黒)はあっという間に3D酔いを起こしてダウンした。


 前の二人の偽王子は3Dに強いようだが、この腹黒さんは私や王子以上に3Dゲームに弱いらしい。10分くらいで限界が来るようだ。

 この調子では細かなチェックは無理だろう。かなり離れた城へと辿りつけるかも怪しい。移動も結構酔いますからね!!


 こうなったらお昼寝が一番ですよー。
 休憩しないと治りませんよー。


 そんな私のアドバイスに嘘はない。なので、嘘を見抜いちゃう系魔法を使われても大丈夫。

 結果、全てを諦め大人しく目を閉じる腹黒さん。


 うふふふふ。これはもう、今日はゲームを止めた方がいいですねえ。酔っちゃいますからねえ。

 あ、眼鏡をお預かりしますね。目の疲れを取るアイピローもありますよ! とりあえず、おでこに冷えるやつピタッとしときましょうか。頭痛が和らぎますよ! よく眠れる系音楽も流しておきますね!


 危機を回避したのは嬉しいが、3D酔いの辛さは身をもって知っている。なので、全力で回復を促すような接待をした。


 3D酔いの影響もあるのだろうが、日頃からお疲れの様子の腹黒さんは一度お昼寝をするとグッスリだった。そして、目覚めた時には召喚終了時刻の五分前。手を付けられなかったおやつを片手に大慌てで帰って行った。

 お疲れ様です!!



 はあ……どうにか危機回避できた。
 ……お疲れ自分。




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