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143 魅了堕ち幽閉王子の異世界生活(王子視点)
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「どこで何をしたと言われても……」
恋愛したり大根作ったり魚釣りしたり魔王を倒したり。
ああ、そうだ。レースで勝ちまくって召喚主を涙目にさせたこともあったっけ。
そう――僕がやったことと言えば、異世界でのゲームだ。
二度と魅了魔法に惑わされることがないように。僕は娯楽を極め、楽しい事への経験を積もうとした。でも、塔の中で出来ることなど限られる。
だから。
幽閉されているなら、塔から出られないのなら、異世界で遊べばいい――そう考えて、異世界召喚魔法陣ラグを開発し、異世界へと行けるようにした。
魔法陣の開発は楽ではなかったし、材料集めで死にかけた。召喚が始まってからも初めはなかなか上手くいかなかった。
悲鳴を上げられ。何度も拒絶されて。ラグを封印されたり除霊とか言って魔法陣を焼かれたこともあった。
その時は供え物のお菓子と共に焼かれたのでうっかり除霊中に召喚されてちょっと火傷した。何か映ったぞ、カメラ回せ! とかいう声を聞きながら慌てて塔に戻った。
そのうち相手の勘違いを利用して、騙し騙し召喚してもらう小技を身に付けて――鈴木さんに出会った。
何かをやらかすたびに怒られ、諭され、根気よくアチラのことを教えてもらった。彼には長い事親切にしてもらったけど、ちょっとしたことで逆鱗に触れてしまったらしく召喚を拒否され魔法陣を売られてしまった。
そして――出会ったのが現在の召喚主だ。
魔法陣の開発。その苦労。努力。
僕はその全てを竜に分かりやすく語り続けた。
途中、はぁ? 何言ってんの、コイツ――と言わんばかりの顔で竜が瘴気を出し始めてイラついているのが分かったのでクマを渡してみたら治まった。
不機嫌に顰められた顔が穏やかに緩み、空気が澄んだ。
竜の言う番の気配というヤツだろうか。まあ、それでなくても召喚主と僕がお気に入りのこのクマちゃんは抱き心地がいいからな。竜にとってもクマの癒し効果は絶大のようだ。
しっかりと両腕で抱きしめ、その感触を楽しんでいる。
クマに満足したのか若干、竜が僕の話に飽き始めていたのは分かったが、ココから! ココからだから!!
「――でさ、前召喚主の鈴木さんから現在の召喚主に異世界召喚魔法陣ラグが引き渡されたんだ。思い出すのは何と言っても乙女ゲームだな。あれは、魅了堕ち経験者としてはとても勉強になった。乙女ゲームのヒロイン視点から冷静に物事を見られるのだから。手練手管を裏側から見せられているというのに話が面白いからいつの間にか主人公目線でゲームに夢中になっちゃって。僕もいったい何人の王太子を落としたことか。逆ハーレムルートは身につまされちゃって心が折れたけど、後々ちゃんとクリアしたぞ! 何事も中途半端は良くないからな!! あとは何と言ってもスローライフゲームだな。土を耕し、畑を作り、種をまき、水をやって収穫する。勿論レベルが上がって余裕が出来たら肥料をやるのも忘れない。時間をかけて野菜の品質を高めるんだ。おっと、農作業だけじゃないぞ。家畜の世話も忘れない。アレにも品質があるからな。細やかな世話は家畜への愛情を示すとともに品質向上への第一歩だ。そんなことをしているだけであっという間に一日が終わってしまうんだ。平民の暮らしをあんなに身近に感じたことがあっただろうか。いや、ない。もっと早く経験したかったと何度思ったか。アチラでやる娯楽のゲームはどれもこれも面白くて勉強にもなって、つい時間を忘れて夢中になってしまうんだ。あーでも、レースゲームで召喚主に勝ちまくったのはちょっと失敗だったかもしれない。もう一度是非ともやりたいがソフトを見かけなくなってしまったし、召喚主に聞いてもはぐらかされるんだ。バレないように1~2回負けておくべきだったかもと後悔している。そうすれば時折ムキになる召喚主を見られたのに。まあ、でも、今は3D酔いを克服したお陰で二人してクラフト系ゲームに夢中だけどな。ゲームで僕が再現したこちらの世界を理想の世界に作り替えるんだ。僕の幽閉されている塔からは召喚主のアパートが見えるし、新たに作った塔も見える。残念ながら風呂は室内だけどな。一応、召喚主は露天風呂を希望していたんだよ。でも、でもさ。やっぱりよくないというか、目のやり場に困るというか。想像しちゃうと色々とその――いや、色々と思うところはあったが紳士としてそこは耐えるべきところだろう。後々、夢にはしっかり出てきたが。――って、少しぶっちゃけ過ぎただろうか。流石に召喚主にはこんなこと言えないからな。なんにしても現在はその新たに作っている『幽閉されたい塔』の建設がいい感じに進んでいて――って、こら寝るな! 起きろってば!!」
いつの間にか竜がクマを抱いてウトウト居眠りを始めていた。今なら睡眠魔法で眠らせられそうだったが、それどころじゃない。いいから聞いて! そっちから聞いてきたんだから最後まで責任もって聞いて!!
無理やりに竜を起こして、離宮に送られたことや、3D酔いを防止するための眼鏡を手に入れるために僕が向こうでした努力もしっかりと伝えた。
話したいことはまだまだたくさんある。
しかし、話が眼鏡に魅了魔法を付与してくれたはぐれセイレーンへの報酬に入ったところで竜から『もういいから!』――と止められた。
えー…。まだ話したいのに、と思ったが仕方がない。竜がガチギレ一歩手前の鈴木さんみたいな顔をしているからここは引くべきだろう。
『はあ……いくつになろうが相変わらず人の話を聞かない奴だ』
「え?」
『いい。まあ、とりあえず状況は分かった。何やらおもしろいことになっているようだ。お前は余計なことは考えず、そのまま異世界へ行ってゲームでもしていろ』
「……でも、竜が起きたということは国は滅びるのだろう? 幽閉されている身とは言え、僕だけ逃げ出すわけにはいかない。王族としてそれはできない」
『まあ、そのつもりだったが、起き抜けに飲んだスポーツドリンクとやらで頭と気分が随分とスッキリしたからな。色々思い出すことも出来たし、ソレのお陰で気が変わった。それに、番の気配がするのに滅ぼす理由もない――が、長期間封印された恨みはあるから一つ取引をしよう』
「取引?」
『まだ不安定だが番の気配さえあればワシは正気を保っていられる。夢見も良くなる。だから、コレをよこせ』
そう言って――竜は抱いている召喚主のクマのおでこに愛おしそうにキスをした。
その行動に。一瞬で心が冷える僕。
そして。
「断る」
考える間もなく僕は竜の提案を断っていた。
恋愛したり大根作ったり魚釣りしたり魔王を倒したり。
ああ、そうだ。レースで勝ちまくって召喚主を涙目にさせたこともあったっけ。
そう――僕がやったことと言えば、異世界でのゲームだ。
二度と魅了魔法に惑わされることがないように。僕は娯楽を極め、楽しい事への経験を積もうとした。でも、塔の中で出来ることなど限られる。
だから。
幽閉されているなら、塔から出られないのなら、異世界で遊べばいい――そう考えて、異世界召喚魔法陣ラグを開発し、異世界へと行けるようにした。
魔法陣の開発は楽ではなかったし、材料集めで死にかけた。召喚が始まってからも初めはなかなか上手くいかなかった。
悲鳴を上げられ。何度も拒絶されて。ラグを封印されたり除霊とか言って魔法陣を焼かれたこともあった。
その時は供え物のお菓子と共に焼かれたのでうっかり除霊中に召喚されてちょっと火傷した。何か映ったぞ、カメラ回せ! とかいう声を聞きながら慌てて塔に戻った。
そのうち相手の勘違いを利用して、騙し騙し召喚してもらう小技を身に付けて――鈴木さんに出会った。
何かをやらかすたびに怒られ、諭され、根気よくアチラのことを教えてもらった。彼には長い事親切にしてもらったけど、ちょっとしたことで逆鱗に触れてしまったらしく召喚を拒否され魔法陣を売られてしまった。
そして――出会ったのが現在の召喚主だ。
魔法陣の開発。その苦労。努力。
僕はその全てを竜に分かりやすく語り続けた。
途中、はぁ? 何言ってんの、コイツ――と言わんばかりの顔で竜が瘴気を出し始めてイラついているのが分かったのでクマを渡してみたら治まった。
不機嫌に顰められた顔が穏やかに緩み、空気が澄んだ。
竜の言う番の気配というヤツだろうか。まあ、それでなくても召喚主と僕がお気に入りのこのクマちゃんは抱き心地がいいからな。竜にとってもクマの癒し効果は絶大のようだ。
しっかりと両腕で抱きしめ、その感触を楽しんでいる。
クマに満足したのか若干、竜が僕の話に飽き始めていたのは分かったが、ココから! ココからだから!!
「――でさ、前召喚主の鈴木さんから現在の召喚主に異世界召喚魔法陣ラグが引き渡されたんだ。思い出すのは何と言っても乙女ゲームだな。あれは、魅了堕ち経験者としてはとても勉強になった。乙女ゲームのヒロイン視点から冷静に物事を見られるのだから。手練手管を裏側から見せられているというのに話が面白いからいつの間にか主人公目線でゲームに夢中になっちゃって。僕もいったい何人の王太子を落としたことか。逆ハーレムルートは身につまされちゃって心が折れたけど、後々ちゃんとクリアしたぞ! 何事も中途半端は良くないからな!! あとは何と言ってもスローライフゲームだな。土を耕し、畑を作り、種をまき、水をやって収穫する。勿論レベルが上がって余裕が出来たら肥料をやるのも忘れない。時間をかけて野菜の品質を高めるんだ。おっと、農作業だけじゃないぞ。家畜の世話も忘れない。アレにも品質があるからな。細やかな世話は家畜への愛情を示すとともに品質向上への第一歩だ。そんなことをしているだけであっという間に一日が終わってしまうんだ。平民の暮らしをあんなに身近に感じたことがあっただろうか。いや、ない。もっと早く経験したかったと何度思ったか。アチラでやる娯楽のゲームはどれもこれも面白くて勉強にもなって、つい時間を忘れて夢中になってしまうんだ。あーでも、レースゲームで召喚主に勝ちまくったのはちょっと失敗だったかもしれない。もう一度是非ともやりたいがソフトを見かけなくなってしまったし、召喚主に聞いてもはぐらかされるんだ。バレないように1~2回負けておくべきだったかもと後悔している。そうすれば時折ムキになる召喚主を見られたのに。まあ、でも、今は3D酔いを克服したお陰で二人してクラフト系ゲームに夢中だけどな。ゲームで僕が再現したこちらの世界を理想の世界に作り替えるんだ。僕の幽閉されている塔からは召喚主のアパートが見えるし、新たに作った塔も見える。残念ながら風呂は室内だけどな。一応、召喚主は露天風呂を希望していたんだよ。でも、でもさ。やっぱりよくないというか、目のやり場に困るというか。想像しちゃうと色々とその――いや、色々と思うところはあったが紳士としてそこは耐えるべきところだろう。後々、夢にはしっかり出てきたが。――って、少しぶっちゃけ過ぎただろうか。流石に召喚主にはこんなこと言えないからな。なんにしても現在はその新たに作っている『幽閉されたい塔』の建設がいい感じに進んでいて――って、こら寝るな! 起きろってば!!」
いつの間にか竜がクマを抱いてウトウト居眠りを始めていた。今なら睡眠魔法で眠らせられそうだったが、それどころじゃない。いいから聞いて! そっちから聞いてきたんだから最後まで責任もって聞いて!!
無理やりに竜を起こして、離宮に送られたことや、3D酔いを防止するための眼鏡を手に入れるために僕が向こうでした努力もしっかりと伝えた。
話したいことはまだまだたくさんある。
しかし、話が眼鏡に魅了魔法を付与してくれたはぐれセイレーンへの報酬に入ったところで竜から『もういいから!』――と止められた。
えー…。まだ話したいのに、と思ったが仕方がない。竜がガチギレ一歩手前の鈴木さんみたいな顔をしているからここは引くべきだろう。
『はあ……いくつになろうが相変わらず人の話を聞かない奴だ』
「え?」
『いい。まあ、とりあえず状況は分かった。何やらおもしろいことになっているようだ。お前は余計なことは考えず、そのまま異世界へ行ってゲームでもしていろ』
「……でも、竜が起きたということは国は滅びるのだろう? 幽閉されている身とは言え、僕だけ逃げ出すわけにはいかない。王族としてそれはできない」
『まあ、そのつもりだったが、起き抜けに飲んだスポーツドリンクとやらで頭と気分が随分とスッキリしたからな。色々思い出すことも出来たし、ソレのお陰で気が変わった。それに、番の気配がするのに滅ぼす理由もない――が、長期間封印された恨みはあるから一つ取引をしよう』
「取引?」
『まだ不安定だが番の気配さえあればワシは正気を保っていられる。夢見も良くなる。だから、コレをよこせ』
そう言って――竜は抱いている召喚主のクマのおでこに愛おしそうにキスをした。
その行動に。一瞬で心が冷える僕。
そして。
「断る」
考える間もなく僕は竜の提案を断っていた。
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