魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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146 竜の番疑惑再び(王子視点)

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 満開の。夜桜の下で僕を振り返りながら微笑む召喚主。
 やや幼い顔立ちの召喚主が、柔らかな街灯に照らされてほんのちょっぴり大人に見える。

 それに何より。無数に舞い散る桜の花びらが彼女を際立たせるように視界いっぱいに広がっていて――。


 うん! 安定の高画質。あの時の僕、いい仕事した。一瞬で目も思考も奪われる素晴らしい仕上がりだ。


『ほぉう……? ソレが召喚主か』


 やはり。竜はバッチリ僕の思考を読みとっていたようだ。でも、大丈夫! お気に入りの映像のお陰で、僕の頭はすっかり桜色だから!! 見られて困るものなどない!


『これは……美しいな』

 ……ん?


「ええと……桜だよな?」

 念の為に聞いてみる。確かにこの召喚主は多少大人っぽく見えるが、召喚主はどちらかと言えば可愛い系だ。それにしてはちょとだけ……出るとこ出てるけど。横になって寝ていてもしっかりと膨らみが分かるくらいの存在感で。

『ほほう。なかなかスタイルもいいようだ』

 ……ついウッカリ、秘蔵のパジャマ写真まで再生してしまった。こら、見るな! コレは撮影した僕だけが見ていいものだ!!

 慌てて記憶魔法をオフにした。忘れろー忘れろーと、思考の限りを尽くして訴えるとニヤニヤと竜が笑う。

 不愉快だ。……忘れろー。忘れろー。


『ふむ。この映像からも僅かだが番の気配を感じるな』

 魔力結晶を仕舞った宝箱を静かに撫でながら、目を細める竜。


 え。待って。いや、でも、さっき。――え!?


「あの……えっと、その。確認したいんだが、召喚主は……違うよな……?」

『さあ?』

「ちょ、お前、さっきおそらくそれはないって」

『おそらく、だ。正確なところは正直分からん。実際に召喚主とやらに会った訳でもないからな。長く気配は感じてきたが、ワシも番に出会ったことがないから、ハッキリとは言えぬ』

「そんな!」


 騙された気分だ! 再生なんてするんじゃなかった!!

 ……あれだ、こうなったら記憶魔法を極めよう。記憶消去まで出来るようになれば竜の記憶から今の映像を消せるはず。

 努力! もっと努力をしなくては!!

 心の中でそう決意を固める僕を、竜は面白そうに眺めていた。


『今日は良いものを貰ったし、良いものを見せてもらった。大暴れしてやろうと思っていたが、おかげで久しぶりに良い夢を見られそうだ』

 満足そうにそう言って、一つ大きなあくびをすると、目の前の男は竜化した。

 正直そっちの姿の方が僕には見覚えがある。何度も寝ているところを見ているし、何度も永遠の眠りにつかされそうになったから。

 でも、常に纏っていた禍々しさはすっかり消えていた。どことなく空気が爽やかだ。

 そして、大きな体を横たえて、ゆったりとした動きでいつも枕にしている台座に頭を乗せ――ようとしているときにあることに気が付いた。


「ちょっ、ストップ! ストーップ!! それ! 枕にしているヤツ、ダンジョンのリセットボタンじゃないか!?」




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