魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

１５５ 悪夢を祓うおまじない(王子視点)

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え？」


　何だ？　今、おでこに何か……プチュっと？？

　召喚主のおでこに残された魔力の痕跡やら何やらを考えていたら、自分のおでこに変な感触がした。

　もしかして、深く考えすぎて感触まで再現された……とか？　いや、でも、それにしては感覚が生々しい。

　まさか……。いや、でも、もしかして。


「あの、召喚主。今、考え事をしてる僕に何かした……？」

「あ、うん。悪夢を祓う？　おまじない」

「……ッ！」


　――――何てことだ！！

　余計なことに気をとられていたら、せっかくのおまじないに気が付かなかった。痕跡とか、番の気配とか、今はどうでもいいのに！！！


「あの……召喚主、も、もう一回！」
「あーハイハイ。王子が悪夢を見なくなりますよーに！」


　ぷちゅ☆


　僕のおでこに一瞬広がるひんやりとした感触。夢じゃない。気のせいでもない。召喚主が、僕におまじないをしてくれた。


「…………ぐすっ」
「！！？？？　えっ、ちょっ！　何で泣くの！？」



　幽閉されてから僕はずっと一人だった。閉ざされた塔で。一人きりで強制的に繰り返される代わり映えのしない日々。

　あれやこれやと気を紛らわすための努力はしていたけれど、異世界召喚魔法陣が完成するまでは、悪夢すらも珍しい娯楽の１つと感じるような毎日だった。

　それが、悪夢ごときを心配しておまじないをかけてもらえる日がくるなんて。


「……僕の努力は間違っていなかった！」
「え！　何が！？　何でそうなった！？」