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202 消えた先輩 後編
しおりを挟む「それで、いったい何があったの? ルカちゃんはあの子の話――しっかり聞いたのよね?」
お隣サークルからの壁ドン☆ 疑惑が晴れてホッとしていると、思いのほか深刻そうに花原さんが聞いてきた。なんだろう。そんなにお勧めの怖い話だったのだろうか。
それとも――何かもっと重大な話でもあったとか?
困ったな。恋愛相談だったとしたら――当事者(おそらく)の花原さん本人には言えないし。他に考えられそうなことといえば、出席率や進路的な悩みとか? 先輩は朝が弱いからありそうだ。
何にしても本人に聞かないことには分からない。
「あ、いえ。実はその……」
高校の時、一度やらかされているのを思い出し、先輩の話はこっそり耳栓で回避したこと。
なので怖い話(おそらく)は一切聞いていないことを説明した。
「え? でも、耳栓くらいじゃ少しは聞こえちゃうわよね? 多少音は控えめになるとはいえ」
「あー、いえ。あの……これ完全防音なんで」
そう言って、使った耳栓を見せる。魔法で改造してあるとはいえ、見た目はごくごく普通の耳栓だ。なので鼻歌機能は伝えない。説明を求められても困る。
「ちょっ、何コレ、まりょ…………!? ……ああぁ、なるほど。それでこその『完全防音』なのか。これじゃあ成功しない筈だわ。ルカちゃん、貴女すっごいモノ持っていたのねぇ……。いったいどこで手に入れたのかしら……。世間は広い――いえ、狭いからこそ入手できたともいえるわね。(……こんな魔道具)」
「あの……、それで、先輩は……大丈夫なんですか? もしかして、私に何か相談したいことでもあったんでしょうか。先輩が脅すような思わせぶりなこと言うから、また怖い話されるーって思って耳栓しちゃったけど、重要な相談ごとならそう言ってくれればちゃんと聞いたのに。何か急に居なくなっちゃって……。一人で大丈夫かな? 先輩……」
――――ダメだ……俺は、お前が居ないと……
「うーん。まあ、ルカちゃんの同意を取らなかったあたりで同情の余地はないわねえ。それならそれで警告なんてしないでもっとうまい事やればいいのに。まあ、こんなまど……こほん、便利耳栓持ってるとか流石に予想外だし、あの子も運がなかったのね」
「どうしよう。心配だから先輩に電話してみようかな……でも、出てくれなかったら意味ないし」
「そんなことないわよ。出られるかは分からないけど、かけてあげたらあの子もきっと喜ぶわ。メールなんかもいいかもね。返事は期待できないかもしれないけど、形に残る分、見るだけで元気が出ると思うし。……かけてあげてくれる?」
「はい……。先輩の無事を確認したいんで、とりあえず電話してみます……」
――――ルカ……ルカ……俺はココに居るのに……目の前で話しかけているのに……どうして見ない? ホラ、眼鏡……好きなだけ見ていいからさ……。だから、俺を見てくれよ……
――――いつもみたいに……頼むから……
――――ル、カ……
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