魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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213 魅了堕ち幽閉王子とプリンアラモード

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「ええと……食べないの? 気分じゃなかった??」

 何だろう。苦手な物でもあったのだろうか。特別珍しいフルーツは入っていないし、プリンも王子の大好物だったはずだけど。


「うん? あ、ああ、いやすごく美味しそうなのだが、その……」


 王子はプリンアラモードと私を交互に見ると。


「その……君は今日も一緒に食べないのか?」

 ――と、眉を下げて寂しそうに言ってきた。


 あー、ハイ。王子はそっちの、寂しがりやの構ってちゃん属性もありましたね。

 隔離された塔に一人幽閉中の王子は誰かに世話を焼かれたり、手をかけられたりするのが大好きだ。

 それに、人と一緒に何かを食べるのも楽しいらしい。

 召喚を始めてすぐの頃、一緒におやつを食べているときにそんなようなことを言っていた。

 まあ、一人暮らしをしているとその気持ちはよく分かる。確かに一人の食事は味気ないし、おやつも誰かと一緒の方が美味しいよね。

 私も実家ではよく2番目のお兄ちゃんと甘い系のおやつを食べてたな。3番目のお兄ちゃんとはしょっぱい系のスナック菓子を一緒に食べて、1番上のお兄ちゃんには軽食系を食べさせてもらうことが多かった……って、あれ? 総カロリー考えると……。

 …………。

 ――ま、まあ、お兄ちゃん達とは年齢も離れてていつも一緒に居るわけでもなかったし。途中からはお兄ちゃん達も一人暮らしをしたりで、居ない期間も長かったし。
 ……よく手土産にお菓子を持って家に帰ってきてたけど……。


 ――って、よし! あまり深く考えるのはやめよう!!

 お兄ちゃん達と一緒に食べるおやつは美味しかったし、私も育ち盛りだったんだから大丈夫!



 それにしてもこの状況をどうするか――。


 明日は早朝からバイトだし、ちょっと凝ったおやつで王子を呼び出したら、後は放っておいて寝ちゃうつもりで寝支度を整えちゃったんだけど。

 ここのところはこっそり夜召喚の偽王子(猫)に夢中になるあまり、昼間に王子を召喚しているのに寝不足でうっかり眠っちゃったりだとか、召喚生活に慣れ過ぎて、気がすんだら勝手にお帰りくださいモードで対応したりだとか、扱いがちょっと雑になっていたかもしれない。

 正直、明日のバイトのことを考えると速攻寝たいけど、おやつを一緒に食べるくらいはしてもいいかな。

 歯磨きやり直しになっちゃうけど、思ったより美味しそうだし――って、ああ、いやいや。食い気に負けたわけではないですよ? ちょっと先輩探しで動き回ったせいか、今になって少しお腹も空いて――って、いやいやいや。

 ……うん。言い訳やめて一緒に食べよう。ノリノリで王子のおやつを作っていたら自分も食べたくなっちゃった。

 カットフルーツは王子の分しかないけれど、プリンとバナナはありますし。寝る前だし、むしろこのくらいの方がいいかもしれない――とか思っていたんだけど。


「召喚主の分も作るなら僕の分のフルーツを分ければいい。二人で同じものを食べた方が楽しいし。おっと、バナナは譲れないがな!!」

 ――と、ニコニコ顔の王子のご厚意でカットフルーツを分けていただけた。二個ずつあるものは一個ずつ。一個しか入っていなかった網目のメロンは譲ってくれた。その分、バナナを希望した王子はホクホク顔だ。

 ……それ、原価考えるとバナナの方が安いんですけどね。ってか、王子ってば本当にバナナが好きなんだな。安上りで非常に助かります。

 せっかく生クリームでキレイに盛り付けたものの、食べる前に王子の分のカットフルーツを二人で分けたせいでぐちゃぐちゃになってしまった。――が、王子は何故かすごく嬉しそうだ。


 まあ、あれかな。せめてものお詫びに追加で大好物のバナナを足してあげたからかもしれない。



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