魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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224 偽王子(猫)は召喚主に伝えたい

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 いつでも羽織れるようにと魔法陣横に置かれたローブ。

 そう。猫ちゃんが見つけたのは、この冬一押しの節約アイテム。私が所属するサークルのユニフォーム的存在である――オカルト研究会特製ローブ。

 冷暖房完備で空気清浄機能までついている謎技術満載の優れモノだ。


 王子のハイブリッド魔改造により動力源はこちらでは使われていない魔力。

 コレを羽織ると季節を問わず使用者の望んだとおりの適温状態になるので、幽閉中の塔でコレを使うと塔の冷暖房魔法を切ることが出来るらしい。

 そして余った魔力は異世界往復魔法陣へ――。


 魔力の節約は異世界召喚に繋がる。それは幽閉生活の環境改善にもなり、より楽しく、より快適に、王子は塔に幽閉されることが出来る。
 それにより幽閉する方も心行くまで王子を幽閉できる。
 幽閉する方もされる方も損をしない、winwinの幽閉環境向上システムである……とか何とか。


 いつもの調子で長々と語ってくるウチの王子様は相変わらず方向性の間違えた努力を重ねているようです。

 ――で、そのために王子はこのローブを頻繁にお持ち帰りしているので、たまにしか来ない猫ちゃんがコレを目にするのは随分と久しぶりかもしれない。

 ああ、大学祭前日のアレが最後かも。

 偽王子(猫)はコレが気に入らないらしく、何度も爪を立てて、どうにかローブを引き裂こうとしていた。まあ、王子の品質保持魔法のお陰でキズ1つ付いていないけど。

 もしや今回も――と、少し警戒したのだが。


「ニャンニャンにゃにゃんニャにゃ、ニャニャにゃんにゃんにゃニャンニャンにゃ………」


 ぽす、ぽす、ぽす。


 ……にゃんという事でしょう!!

 可愛いお手手で。オカ研ローブを叩きながら、猫ちゃんが何やらにゃんにゃんと訴えかけてきます。
 コレは初めてのケース。かわいい。

 しかし、残念ながらそのにゃんにゃん言葉は私には解読不可能。


 ……けれども、猫ちゃんは諦めない!!

 肉球でオカ研ローブをぽすぽすしながら、全身を使って身振り手振りでコミュニケーションを図ってくる。
 まさかのモフモフボディーランゲージ。きゃわいい。


 フムフム――なるほどね。
 ここは飼い主(?)としての腕の見せ所ではないだろうか?


 異世界からの王子(偽者含む)の召喚歴も既に一年以上。
 王子だろうが偽王子だろうが王家の影だろうが猫ちゃんだろうが、バイトと大学生活の合間を縫って諦めることなく地道に交流を続けてきた私。

 巻き込まれるままに、それなりに状況把握能力は高めてきたつもりだ。サクッとされる恐怖に耐えたりうっかり忘れたりしながら。

 ……いいでしょう。猫ちゃんが諦めないというのなら私だって諦めない。


 召喚主としてそして飼い主として。
 猫ちゃんが納得いく答えを導き出してみせましょう!!




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