魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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273 腹黒さんを攻略しよう

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「おいしいですね。こんな食事は初めてです」


 良かった……! 出すおやつ出すおやつどれも反応薄くて、仕方なくダメ元で王子の昼食用に作っておいたおでんを出したらこれは気に入ってくれたようだ……!!


 ――どうやら。

 腹黒さんは前にも栄養補助食品的なクッキーを好んでいたことから、『おやつ』よりも『お食事』的な物の方が向いているらしい。あまり間食に重きを置いていないのかもしれない。
 これは今後腹黒さんがこちらへ召喚されてきた際の、おもてなしの参考になりそうだ。


 先輩がくれた超有名店の高級ケーキなんかは喜んで食べていたけれど、あんな高いもの貧乏学生の私にはそうそう用意できないからな……。あれ自腹で買ったら、一日分のバイト代が余裕で飛んじゃうし。


「……別にあれは美味しいから食べていたわけではありませんよ。ただ、あのケーキは魔力が――まあ、その辺は魔力がゼロの貴女には関係のないお話です。どうかお忘れください。でも、『おでん』でしたか。初めて食べましたがこのお料理は本当に美味しいですよ。貴女にこんな才能があったとは。こんなに余計な味が一切しないお料理は初めてです」


 ……悪かったですね、魔力がゼロで。いいんですよ、こっちの世界には魔法とかないんだから。


 でもまあ、おでんを気に入ってもらえたようで良かった。時間をかけてじっくりと煮込んだ甲斐がありましたね。……とはいっても、ガス代が勿体ないから保温シートとタオルを駆使しての保温調理ですが。
 手間をかけた分、大根なんかは味が染みててなかなか美味しくできたと思う――んだけど。

 前に先輩にも言われたけど、『余計な味がしない』ってどういうことなんだろう。まったく褒められている気がしないんですが……。

 もしかしたら腹黒さんは先輩と一緒で元が高級志向な分、シンプルな味付けが好みなのかもしれない。
『黒ローブと眼鏡』で見た目も何となく似ているし。

 今日みたいにぶっつけ本番で試すのは精神的にきついから、二人の味覚が似ているなら先輩に協力してもらって、あらかじめ色々と試してみるのも有りかもしれないな、うん。


 ――その後。

 エナジードリンクとおでんでお腹を満たした腹黒さんがクラフト系ゲームを立ち上げて、昨日王子がご機嫌で塔に再現していたクリスマスイルミネーションを見て怒りが再燃するという一幕はあったものの――ゲームの気を逸らすためには別のゲームに夢中にさせちゃうのが一番! ……ってことで、ダメ元であれこれオススメしているうちに、腹黒さんお気に入りの一本を見つけることに成功いたしました!


 それは――――。




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