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299 偽王子(大)とプロテイン
しおりを挟む「…これは……!!」
食後のミルクたっぷり甘さ控えめコーヒーと共にプロテインバーを提供すれば、それまでのしょんぼり顔はどこへやら。相変わらず口数は少ないものの、喜んでいるのがわかる。
――ま、味はただの美味しいお菓子ですしね。
「良かった。王子もコレ、絶対気に入ると思ったんだ。甘くておいしいし、プロテイン入りだから筋肉作りにも「何て?」」
「……え?」
「…今、何て?」
「甘くておいし「それの後!」」
え……な、何?
「ええと……プロテイン入りだから、筋肉作りにも……効果的で?「そこ! そこのところをもっと具体的に!!」」
「…は……?」
あ……れ? おかしいな。偽王子(大)って、もっと口数少なくなかったっけ? 何か、今日の偽王子(大)、やたらぐいぐい来るんですけど。
「……ええと、プロテインは筋肉の材料になるから、食べると効率的に身体作りができるというか」
「…なるほど」
あ。良かった、納得してくれたか。やっといつもの寡黙な偽王子(大)に……。
「それで、このプロテインバーとやらは食べるだけでいいのか? 運動もした方がいいのか? 運動量は? 運動をするのはこれを食べる前か? 後か? それとも食べながら運動するのか? 食べる時間帯は? 食べれば食べるほどいいのか? 量に決まりはあるのか? 三食コレを食べるのはダメか? 筋肉と言うが、どこの筋肉にいいんだ? 運動方法に決まりはあるのだろうか? 暗殺者との死闘も運動に入るか? 今日は2人ほど始末したのだが、侵入者への拷問はどうだろうか? 情報を聞き出す際に少々手荒なことをしたが、それも運動に入れていいか? コレは一回だけ食べればいいのか? それとも定期的に食べ続けた方がいいのか? 向こうへ持って帰って食べても効果はあるか? もしかして魔法なんかも運動に含まれるのだろうか? だとしたら運動に含まれる魔法の種類は? 攻撃魔法と防御魔法で効果に違いはあるか? 癒し系魔法なんかは? 擬態魔法についてはどうだろうか? 私達の正体が周囲にバレないよう擬態魔法は常時発動だから、王子の姿に擬態したり、自分の魔力を王子の魔力に同調させたりし続けるのに割と体力を使うのだが……」
戻ってないな!! え。何、この人ってこんなにしゃべるんだ? いつものこっちが察するしかない無言状態はなんだったの?
……ってか、この人のこの感じ、王子のマシンガントーク臭がするんですけど。あと、情報漏洩とか、そこまで王子に似るのほんとにやめて。
何だ、暗殺者始末したって……正体バレたら(私が)まずいのに、偽王子(大)ってばアレコレぶっちゃけ過ぎじゃない?
これアレだ。この人あんまりしゃべらせたらいけないやつだ。まさかの偽王子(大)は無言状態が正解だった。
仕方なく、情報漏洩部分は適当に濁しつつどうにか聞かれたことに答えた。……のだが、偽王子(大)のマシンガントークは止まらない。出るわ出るわ、偽王子(大)からの追加質問……に見せかけた情報漏洩。それを華麗にスルーしつつ追加質問にも分かる範囲で応じて、彼が少し落ち着いたところで残っていたプロテインバーをお土産に押し付け……渡したら、それで満足したのか偽王子(大)は笑顔で帰っていきました。
……おかしいな。
身体が大きいから見た目は怖いけど、寡黙で優しいし対戦ゲームでは負けてくれるし、それでいて猫ちゃんや腹黒さんみたいに私の命狙ってこないから割と癒し枠だったはずなのに……何でこうなった。口数の少ない偽王子(大)の声をこんなに聞いたのは初めてな気がする。
偽王子(大)が打ち解けてくれたみたいで嬉しい。嬉しい……が……。
…はあ……。…なんか……メッチャ疲れた…………。
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