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303 おうじの召喚にっき2(王子視点)
しおりを挟むあの日。昼間に作った雪だるまの感想を聞くためにセルフ召喚をしたのですが、召喚主と話している途中で彼女のお兄さんから電話がありました。召喚機をいじりながら聞き耳を立てているとお兄さんがこれから泊まりに来るらしいと分かったので、大急ぎで3度目の召喚をセットしました。
そして一度塔に戻ったうえで、アリバイ工作の小細工をして出直したのです。
僕は非常に真面目な王子です。なので、ある程度は場の空気も読めるし、常識的な判断もできます。だから来客中の召喚は歓迎をされないだろうということも分かっていました。
――――が。
なんと、来るのは『3番目のお兄ちゃん』だと言うではありませんか!
そうです。僕にいつも異世界のお洋服のお下がりをくれる『3番目のお兄ちゃん』です。
不思議なほど友達が少なくて、兄弟が多い召喚主との会話の中で誰よりも登場回数が多い『3番目のお兄ちゃん』です。
彼女には3人のお兄さんがいます。
やたら明るく家族思いの一番上のお兄さん。
クールで頭のいい、元眼鏡の二番目のお兄さん……このお兄さんの話をするときだけ、召喚主はほんの少しだけ悲しそうな顔をします。でも、『唯一の眼鏡枠が……』とか言っていたので別に大した理由ではないと思います。
そして――家族の中で一番器用な3番目のお兄ちゃんです。
3番目のお兄ちゃんはゲームが上手です。勉強はそこそこらしいのですが、やたら勘が鋭く何故か昔からテストの成績が良いのだそうです。召喚主は2番目のお兄ちゃんからマネをしちゃいけませんと言われているそうです。
ちなみに美容院代をケチった召喚主の切り過ぎた前髪を直しているのもこの3番目のお兄ちゃんだそうです。僕も何回か仕上がりを見たことがありますが、違和感なく綺麗になっていました。
あの状態からどうにかできるのだから本当にお兄さんは器用なのだと思います。
そしてそんな器用なお兄さんですが、不思議な自信で服のサイズだけは間違えるので、僕に新品同様のお下がりをくれるのです。何と素晴らしいのでしょう!
いやまあ、別にお兄さんは僕にくれているわけではなく、召喚主が貰ってくるのを僕が着ているだけなのですが、結果的には同じことです。僕はそういった細かな事は気にしません。幽閉されてはいても王族ですからね。
とにかく僕は日ごろから召喚主にはお世話になっていますから、一度は彼女のご家族に挨拶をしたいと思っていました。
けれど、やはり僕は幽閉中の身なのです。行ける場所にも限りがあります。具体的には駅前くらいまでです。電車は乗れないし、駅の向こうのファミレスすらまだ無理なのです。当然、憧れのドリンクバーも我慢です。
それでもこれは十分すごいことなのです。行動可能範囲は信頼関係に直結しているので、それだけ召喚主といい関係を築けている証です。前召喚主の鈴木さんの時なんて、室内ですら危ういこともありましたからね。
だけど、アレは鈴木さん側にも問題があると思います。だって、鈴木さんは急に僕を呼んでくれなくなったりするから……。
………………………………………………………………………………………………………………………………。
おっと、これはまずいです。何やら嫌な予感でドキドキしてきました。話を戻しましょう。状況を整理しなくては。
僕は今でこそ幽閉をされていますが、元王太子として挨拶のできる子です。召喚主からも言われましたしね。『ありがとう』と『ごめんなさい』の言えない悪い王子はおやつのポテチを30パーセント減らしますよ――と。
つい先日、鈴木さんも僕のごめんなさいとありがとうには泣いて喜んでいました。なるほど、感謝することの大切さがわかります。
とにかく、いつもお世話になっている者として、是非この機会に挨拶と日頃のお礼を言おうと思ったのです。
そして、あわよくばお兄さんと一緒にゲームがしたい! ――――と。
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*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
*約10万字で最終話を含めて全29話です
*他のサイトでも公開します
*10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします
*誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです
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