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305 不安だらけの人生相談(王子視点)
しおりを挟む「――と、いうわけなのだがどう思う?」
あれからというもの召喚主からのお呼びがかからない。
魔法陣が光った瞬間に飛び込む準備は出来ているのだが……イメージトレーニングがはかどるばかりで、時間だけがむなしく過ぎていく。
おかげで僕は部屋を離れることが出来なくなってしまった。
いや、だって。魔法陣から目を離した途端に召喚されるかもしれないし。
それでもって行き違いになったりしたら、二度と呼んでもらえないかもしれないし……。
ベッドに腰を掛けて反応しない魔法陣を眺めていると泣きたくなってくる。
召喚主に貸してもらった携帯ゲーム機はあるけれど、そっちに夢中になって呼ばれていることに気付かなかったらと思うとやる気が起きない。
あれは、日々の召喚が順調だからこそ楽しめるのだ。
最近は特に召喚主の部屋に入り浸っていたから、僕は彼女に呼ばれなくなったことのショックを受け止めきれないでいた。
この状態で魔法陣から目を離すのは不安だが、この日は闇堕ち竜とのお茶会の日。この日だけはそもそも召喚がないので、話を聞いてもらおうとラスボス部屋までやってきたのだ。
だから僕の話を聞いて!
僕に有益な助言をして!!
不安ばかりが先に立ってうまく説明は出来なかったけど、コイツは僕がわざわざしゃべらなくてもしっかりと心を読んでくれるから相談する上で都合がいい。
だから、召喚主を怒らせたこととか、どうして鈴木さんが召喚主の部屋にいるんだ自分だけお泊りしてずるいとか、召喚主の3番目のお兄さんは僕が思っていたよりも色々な意味で大きかったとか、もっと遊んでほしかったとか、今度はいつ呼ばれるかとか、召喚主がいれてくれるノンカフェインコーヒーはいつもおいしいとか、闇堕ち竜に片っ端から心を読んでもらった。
きっと、ラスボス的存在のコイツならば僕が自分でも把握しきれていない不安感を読み取って、建設的なアドバイスをしてくれるだろう。そう思ってのことだ。
だからホラ早く!!
一通り僕の説明を聞き終わった闇堕ち竜はたった一言。
「眠い」
と言って、お気に入りのビーズクッションに顎をのせた。
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