魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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307 気になる発言(王子視点)

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『毎日元気に出かけていた』――――。

 は? いやいやいや、ちょっと待って。
 どうして闇堕ち竜がそんなことを知っているんだ?



 召喚主からの召喚が途絶えたことを闇堕ち竜に相談したら、とんでもないことを言い出した。

 この僕があっちの様子が分からなくてもやもやしているのに、どうしてコイツが召喚主の動向を知っているんだ?? いくらラスボスだからっておかしいじゃないか。


 ――はっ!!! お前、前に番がどうこう言っていたし、それがらみで召喚主に何かしたんじゃ……。そのせいで彼女からの召喚が途絶えて……!??


「落ち着け馬鹿王子。そもそも、お前があっちにワシの依り代を作ったんだろうが。雪だるまだったか? 見せたかったなーってワシに自慢をしてきただろう。なかなかに良い出来だったようだな。適度に魔力も入っていて依り代に使えそうだったから、暇潰しにあちらの世界を覗きに行ったのだ。流石に身体は動かせないから、覗けるのは目から見える範囲だけだったがな。そういえば召喚主もワシを見て感心していたぞ。なかなか良い娘ではないか。毎日ワシに挨拶してくれたからな。『行ってきます』とか『ただいま』とか。後は『ねえ、なんか縮んでない?』とか『…王子の仕業か……』とか」

「ずるい!! 僕が呼んでもらえないのに、どうしてお前だけ召喚主に毎日挨拶をされているんだよ! しかも、なんか僕のことを怒っているっぽいし、どうしよう!」

「別に怒っている様子はなかったぞ? ちょっと呆れてはいるようだったが。『まったくしょうがないわね。王子ったら無駄に器用なんだから』とか言って笑っていたしな」

「なっ!? ソレ、僕が一番見たいやつなのに!!」


 ずるいずるい! 呆れた笑顔の召喚主とか最高のやつじゃないか!
 僕は召喚主に呆れた顔で褒められるのが大好きなのに!!


「そういうところの積み重ねが一番の問題だと思うがな……。大体、そんなに行きたいのなら召喚されるのを待たずに自分で押しかければいいだろう。『全自動召喚機』だったか? 今までだってそれを使って好き勝手に入り浸っていただろうが」

「……セットする前に追い返されたんだよ。もうちょっと遊びたくて粘っていたら、これ以上ねばるようならもう呼んであげないって脅されて慌てて塔へ帰ったから……って、そうだよ! 召喚主からそんなようなことを言われたんだった! どうしよう! きっとギリギリを攻めすぎて空気を読み間違えたんだ! このまま二度と呼んでもらえなかったら困るじゃないか! 召喚機を使って無理やり押しかけるにしても、一度は向こうから呼んでもらわないといけないのに!!」


 セルフ召喚でのポテチの盗み食いはスリルがあって楽しいけれど、それだって召喚主の反応あってこその楽しさなのに。
 ゲームだって一緒に遊ぶから楽しいんだ。

 もしも鈴木さんの時みたいに挨拶もなしに他の誰かに魔法陣を引き継がれでもしたら、二度と彼女に会えない可能性があるわけで……。


「な、なあ、お前あっちを覗けるんだろう!? 少しでも向こうの様子が知りたい。悪いけどちょっと見てきてくれないか?」

「無理だな。お前から話を聞いてしばらくは雪だるまを依り代にして見に行けたが、段々と視界が低くなって今はもうまったく反応しない。依り代が完全に溶けたか、魔力が切れたかしたのだろう」

「そんな……」

「こうなったら召喚主から呼んでもらえるのを気長に待つしかないだろうな。ホラ、いいからお前はもう塔に帰れ。ワシは眠いのだ。せっかくまだ見ぬ番と出会う素晴らしい夢を見ていたというのに、お前と言う奴はどこまでワシの邪魔をすれば……ブツブツ。いいか。お前は馬鹿をやって幽閉されているのだからな。その辺を忘れるなよ。いい加減にしないとこの国ごと滅ぼすからな?」

「うう……そうやって、みんなして僕に帰れ帰れって言って……。分かった、帰ればいいんだろう。……でも、僕が召喚をされなくなったら、お前が楽しみにしている番の気配がするクマちゃんのぬいぐるみだって、こっちに連れてこられなくなるんだからなっ!!」

「!!? な……っ、王子、ちょっと待て! コラ、待てってば! おぉーい……」




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