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338 ほろ酔い王子と召喚主 中編(王子視点)
しおりを挟む「うぅ~……頭痛い~気持ち悪いぃ~……」
「だから言ったじゃないか。僕に触れている間は平気でも、召喚主の身体にはお酒が残っているから、離れればそこで効果が消えてしまうのだからな。飲めないなら無理はしない方がいい」
「そんなぁ~……うぅ……頭が痛い……」
余計な事を考えていたせいで、つい召喚主を止めるのが遅くなってしまった。気付いてすぐにグラスを取り上げたが、その際に身体が離れたことで酔いが回ったようだ。
取り上げたグラスを見れば、半分くらいまで酒が減っている。
……って、たったこれだけの量でここまで酔うのか!? これはもう、練習とかいう問題じゃないだろう。『飲まない』一択だ。
心配が尽きないが、召喚主が先輩とやらと飲む前に酒の弱さを自覚できただけでも良かったのかもしれない。お兄さんはコレが判ったからこそ、召喚主に酒は飲むなと言ったんだな。
流石は僕が尊敬するゲームが上手なお兄さん。
召喚主のことを誰よりもよく解っていらっしゃる……!
改めて召喚主のお兄さんの有能さに感心しつつ残ったお酒を飲んでいたら、召喚主が再び僕にしがみついてきた。
「ちょちょちょ、召喚主いったい何を……!?」
「あ、やっぱり。王子とくっついている間は身体が少し楽になる!」
どうやら、酔いを覚ます効果を期待して僕にしがみついてきたらしい。しかも、まだ完全には眼鏡の効果が消えていなかったのか、多少は効果があったようだ。
それは良かった……のだが。
いやいやいや、さっきよりも顔が赤いし目が潤んでキラキラしているし、見るからに酔いが進んでいるだろう!
しかも、その潤んだ目で僕をガン見してくるし……って、眼鏡だ! 彼女は僕の眼鏡を見ているんだ!!
解っている!
それは解っている……けど!!
潤んだ瞳と童顔なくせに一部分だけやたら成長のいいところが気になって慌てて離れようとしたのだが、そうすればそうするほど召喚主は僕にしがみついてくる。
「あ、ちょっ、王子どこ行くの!? お願い! 身体が楽になるから、今は私から離れないでええぇ……!!!!(ぎゅううううううぅ!!!!)」
「……や……でも……………………っ、……わ……かった…………」
流石に体調不良の召喚主を無理やり引き剥がすわけにもいかない。仕方がないのでそのままにしていたが、勧められてもこれ以上の飲酒については固辞した。
だって、まだたいして飲んではいないが、腕が温かいし柔らかいし、ふわりと石鹸のいい匂いが……ああ、これは結構酔っているのかも。
顔が熱いし、心臓の鼓動が早い。召喚主のも……って、いや違う、気のせいだ! 理性、理性を保つんだ!
召喚主がくっついているせいで身体全体がやけに熱い。
眼鏡に向けられた召喚主の熱い視線も体温も、ゲームをしているときには全然気にならなかったのに。コレが飲酒の影響なのか……。
熱を冷まそうとジュースを飲みまくっていたらトイレが近くなって、召喚主から離れれば召喚主の悪酔いが復活して、そのせいでより一層しがみつかれて、もう駄目だと思ったら落ち着くまでトイレに逃げ込んで、部屋に戻ればまたお薬感覚でしがみつかれて……天国なのか地獄なのか判断に困る状態が延々と続いて、限界を感じたところで決意した。
よし! 少し早いが、間違いが起こる前に今日は帰ろう!!
「えぇー……王子もう帰っちゃうの? できれば今夜は朝まで一緒に居てほしい」
…………。
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