【完結】虐げられた可哀想な女の子は王子様のキスに気付かない

堀 和三盆

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2 森の中の出会い

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「それにしても、なかなか雨が止まないわねえ」

「にゃあ~…」

「あら。ふふふ、頭のいい黒猫ちゃんね。お返事してくれているみたい。ねえ、『王子様』?」

「にゃあ!」


 私が適当に着けた名前に元気よく返事をする黒猫。

 義母と妹に珍しくピクニックに誘われ森の中に置き去りにされた後。急な大雨で木の下へと逃げ込んだのだが、少し遅れて足にケガをしたこの黒猫がやってきたのだ。

 最初に話しかけた時。にゃあにゃあと私が発した『王子様』という言葉にやたら反応を示していたのでその名前を付けた。


 ゴロゴロゴロゴロ♪
 スリスリスリスリ♡


 それからは付けてあげた名を呼ぶとこうして嬉しそうに私に擦り寄ってくる。おかげでとても温かい。

 本人? ならぬ本猫がこの名前をとても気に入っているみたいでよかった。


 最初のうちは傷が痛むのかその鳴き声がかすれていたものの、雨が小降りになった時に薬草を摘んできてケガの手当てをしたお陰か大分元気になったようだ。

 父の再婚後、家族に放置されてきたため身に付けざるを得なかった知識だが、それがこんなところで役に立ってくれるとは。世の中何があるかわからない。
 あとは家に連れ帰ってゆっくり安静にさせれば元気に回復するだろう。


「今日はもう遅いから、明日の朝になったら動きましょうか。夜は女の子一人じゃ危険だしね。ったく、義母と妹も酷いことするわよね。……いくら、婚約者との顔合わせに私を出席させたくないからって」


 そう。明日は午前中に婚約者との顔合わせが予定されていた。相手は侯爵令息なので、私より優位に立ちたい妹が興味を示していた時点で気を付けるべきだった。

 ……まあ、食べ物の誘惑には逆らえないので結果は変わらなかっただろうけど。




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