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10 黒猫の正体
しおりを挟むこの国には現在三人の王子様がいる。王妃様が産んだ第一王子殿下と第二王子殿下。そして、側妃様が産んだ第三王子殿下。
私が助けた猫の『王子様』は、なんとこの国の第三王子であるアスク殿下その人だった。
いったい、何故王子様があんな猫の姿になっていたのだろうか。
私がベッドで起き上がれるようになると、王子様――アスク殿下はそのあたりの詳しい事情について話してくれた。
現在。この国の王太子となっているのは正妃様がお産みになった第一王子殿下であるのだが、彼はあまり優秀とはいえず、また素行もよろしくない。第二王子殿下は優秀ではあるのだが全体的に大人しく華がない。
そのせいで、側妃様の美貌を受け継ぎかつ、成績優秀で周囲からの評判もいい第三王子殿下を担ぎ出す勢力が産まれてしまい、それに焦った王太子殿下が第三王子殿下を罠に嵌めたらしい。
王太子殿下は禁術をつかう闇の魔女の力を借りて第三王子殿下を猫の姿に変え、その正体を見破られない限り魔法が解けないような制約をつけさせた。
家族や使用人から放置され社交を制限されている私は一切知らなかったのだが、外の世界では貴族も庶民も、突然失踪した第三王子殿下についての噂で持ち切りとなっていたらしい。
猫の姿へと変えられて、そのままひっそりと暗殺されることを恐れた第三王子殿下は城を抜け出し、伯爵領にあるあの森へとたどり着いた。そしてケガをして困っているところを私に助けられた。
しかも、
『貴方は王子様? 私を迎えに来てくれたの?』
何の気なく発した私のあの一言でサクッと魔法を解く条件を満たすことが出来たので、王子様は自分の好きなタイミングで人間の姿に戻ることが可能になった。
それで一安心した王子様はとりあえずほとぼりが冷めるまで身を隠そうと決め、伯爵家の私の部屋でこっそり暮らし始めた。そうして一緒に暮らしているうちにあの騒動が起こってしまったのだそうだ。
私はうまく王子様をあの場から逃がしたつもりだったけど、彼は逃げたふりをして陰からこっそりとこちらの様子を窺っていたらしい。
王子様は怒った父に突き飛ばされた私が大ケガをしたのを見てすぐに城へと戻り、大急ぎで伯爵家へ騎士団を派遣して助けてくれた。
そして、虐待の疑いがあるとしてそのまま私を城で保護してくれたのだ。
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