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11 王子様の取引
しおりを挟む「そうやって君を助け出したのはいいけれど思いのほか重症でね。中々目が覚めないから肝を冷やしたよ」
「王子様、ゴメ…あ、いえ。……御心配をおかけいたしまして申し訳ございませんでした。私をお助けくださいましたこと、心より感謝申し上げます。第三王子殿下」
私の言葉に王子様は瞳を揺らし、寂しそうに表情を曇らす。
「……どうか今までのように話して欲しい。今までが今までだったし、改まった態度をとられるとまだどこか調子が悪いのかもしれない、と心配をしてしまうだろう? 僕は君のお陰で人の姿を取り戻せたのに、その恩人を僕のせいで喪ってしまうところだったんだ。一週間も生きた心地がしなかったのだから、そろそろ僕を安心させてくれないか?」
「かしこまりまし……ううん、分かったわ。ありがとね、王子様。でも、お城に戻ってしまって大丈夫だったの? 命を狙われていたのでしょう?」
「ああ、それなら大丈夫。取引をしたんだ」
「取引?」
「うん。『第二王子殿下』とね」
敬語をやめたことで機嫌がよくなった王子様は、ペラペラと第二王子殿下との取引内容を語ってくれた。
第二王子殿下は第二王子殿下で王太子位を狙っていたらしい。
なので。
第三王子殿下が城へと戻り現王太子殿下の罪を告発することで失脚させた後、第三王子殿下は第二王子殿下が次の王太子になることを支持する。
その見返りとして、第三王子殿下の身の安全と猫の姿となった彼を匿ってくれた、恩人の伯爵令嬢を保護する為の助力をして欲しい。
――――と頼んだそうだ。
第二王子殿下は王太子殿下の同母弟。なので、第二王子殿下の仲介で二人の母親である王妃様も全て秘密裏に処理することを条件に、取引を飲んだそうだ。
王妃様は王妃様で、素行の悪い王太子殿下には頭を痛めていたらしい……って、いくら王子様の機嫌がいいからって、そこまでペラペラと部外者の私に王家の内情を話してもいいのかしら。
……それに。
「この国の第三王子殿下が優秀だという話くらい私だって知っているわ。他の誰よりもこの国を率いるにふさわしい人物だって。それなのに、私なんかのためにそんな無茶な取引をしていいの?」
派閥を越えて支持を集めている第三王子殿下。姿を消しただけで大騒ぎになったくらいだ。
そんな彼が華々しい表舞台から退場するのは国にとって大きな損失になるのではないか。しかもその原因が私だなんて、流石に申し訳が無さ過ぎる。
「誤解しないでくれ。僕は元々王太子位なんかに興味はないんだ。そんなものよりも、自分が困っている時に貴重な食料を惜しみなく分けてまで助けてくれた、大好きな女の子と共に暮らしたい」
透明で柔らかな王子様の目が、どこまでも真っすぐに私を見る。キレイなのに、どこかじっとりとした熱を感じさせる王子様の目。
王子様の言わんとすることを正確に理解し頬が熱くなる。そして素直に嬉しいと思う。
これまで言葉の通じぬ猫の状態の王子様と、あの狭い部屋の中で二人助け合って暮らしてきたのだ。猫の頃と変わらぬその目を見れば、彼が本気で言ってくれているのだと解る。
――でも、だからこそ何も考えずに頷くことは出来ない。
そのまま受け入れるには、あまりにも置かれている立場や身分が違い過ぎるからだ。
それを思うと胸にチクリとした痛みが走る。
私は見つめていると吸い込まれそうになる王子様の目から視線をそらし、下を向いてそっとため息をついた。
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