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「は? 僕のせいだと? 貴様、使用人の分際で言うに事欠いて何を……」
「確かに――確かに若奥様の件につきましては、大奥様に言われるがままに嫌がらせをしてしまった私達使用人にも罪はあります。けれど、大奥様に関しましては間違いなく旦那様の責任です」
「いい加減なことを言うな! 僕は何もしていないだろうが!!」
「何もしなかったからでしょう! 旦那様がお帰りになられて全てが誤解から始まったことに気が付いた大奥様は罪の意識に苛まれ、旦那様にお手紙を書かれておられました。何度も何度も何度も。届いていないなどとは言わせませんよ。大奥様に頼まれて、私が直接、城に泊まり込んでいらっしゃる旦那様のもとまでお持ちした分もあるのですから」
「それ……は」
長期出張の後、城の執務室に届いていた大量の私信。愛する妻の死に触れられたくなくて、読まずにずっと放置していた。
いいや、それだけでなく……。
「大奥様だけではございません。長期出張に行かれる前、若奥様だって王城に泊まり込んでお仕事をされている旦那様にお手紙を送っておられました。もしも、旦那様がその一通でもお読みになられていれば、今回のような事態は防げたのではありませんか!?」
ヒュ……ッ。
メイドの言葉に声が出なかった。メイドを締め上げていた手を離すと、僕は馬車の用意をさせて急いで城へと向かった。
確かに――長期出張に出発する以前、城に泊まり込んでいる間に何通も何通も屋敷から手紙が届いていた。妻からだけでなく――母からもだ。どうせいつもの下らぬ愚痴だろうと思い、封を開けすらしなかった。
(下らぬ愚痴……本当に?)
『嫁の好き嫌いが酷い。せっかく用意した食事に文句をつける』
『お義母様が食べられない物を出す』
僕が下らぬ愚痴だと耳を貸さなかったものの中に、ヒントはなかったか。僕は結婚する前から側近として第二王子殿下に付いてあちこちの国をまわっていたからそれなりに他国の事にも詳しいけれど――この国で生まれ育って、この国から出たことのない母上は違う。
「ん? どうした? お前はまだ休職中だろう。部屋に忘れ物でもしたのか?」
「はい……ちょっと、確認したいことがありまして」
自分に与えられていた部屋へと向かう途中、主人である第二王子殿下に声をかけられたが、それだけ答えるのが精一杯だった。
部屋に入ると以前のままだった。僕が休職する前と同じように、私信を入れる箱には溢れんばかりの手紙が詰め込まれている。
開けたくない。手紙を読みたくない。
けれど、開けずに放置する度胸もない。
僕はバクバクと嫌な音を立て続けている心臓を無視し、震える手で一通一通過去に届いた手紙を開封していった。
「確かに――確かに若奥様の件につきましては、大奥様に言われるがままに嫌がらせをしてしまった私達使用人にも罪はあります。けれど、大奥様に関しましては間違いなく旦那様の責任です」
「いい加減なことを言うな! 僕は何もしていないだろうが!!」
「何もしなかったからでしょう! 旦那様がお帰りになられて全てが誤解から始まったことに気が付いた大奥様は罪の意識に苛まれ、旦那様にお手紙を書かれておられました。何度も何度も何度も。届いていないなどとは言わせませんよ。大奥様に頼まれて、私が直接、城に泊まり込んでいらっしゃる旦那様のもとまでお持ちした分もあるのですから」
「それ……は」
長期出張の後、城の執務室に届いていた大量の私信。愛する妻の死に触れられたくなくて、読まずにずっと放置していた。
いいや、それだけでなく……。
「大奥様だけではございません。長期出張に行かれる前、若奥様だって王城に泊まり込んでお仕事をされている旦那様にお手紙を送っておられました。もしも、旦那様がその一通でもお読みになられていれば、今回のような事態は防げたのではありませんか!?」
ヒュ……ッ。
メイドの言葉に声が出なかった。メイドを締め上げていた手を離すと、僕は馬車の用意をさせて急いで城へと向かった。
確かに――長期出張に出発する以前、城に泊まり込んでいる間に何通も何通も屋敷から手紙が届いていた。妻からだけでなく――母からもだ。どうせいつもの下らぬ愚痴だろうと思い、封を開けすらしなかった。
(下らぬ愚痴……本当に?)
『嫁の好き嫌いが酷い。せっかく用意した食事に文句をつける』
『お義母様が食べられない物を出す』
僕が下らぬ愚痴だと耳を貸さなかったものの中に、ヒントはなかったか。僕は結婚する前から側近として第二王子殿下に付いてあちこちの国をまわっていたからそれなりに他国の事にも詳しいけれど――この国で生まれ育って、この国から出たことのない母上は違う。
「ん? どうした? お前はまだ休職中だろう。部屋に忘れ物でもしたのか?」
「はい……ちょっと、確認したいことがありまして」
自分に与えられていた部屋へと向かう途中、主人である第二王子殿下に声をかけられたが、それだけ答えるのが精一杯だった。
部屋に入ると以前のままだった。僕が休職する前と同じように、私信を入れる箱には溢れんばかりの手紙が詰め込まれている。
開けたくない。手紙を読みたくない。
けれど、開けずに放置する度胸もない。
僕はバクバクと嫌な音を立て続けている心臓を無視し、震える手で一通一通過去に届いた手紙を開封していった。
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