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12 僕が妻に出来ること
逝ってしまった妻に謝りたい。
ちゃんと君を愛していたと伝えたい。
僕は王太子殿下の側近の仕事を正式に辞めて、毎日のように妻が眠る墓地に通った。少しでも妻に寄り添いたかった。
シェルタに嫌がらせをしていた料理人は屋敷から追い出した。メイドも全て入れ替えて教育を徹底させた。妻の名が刻まれた墓石にそれを報告するけれど、返事はないしやり直しのチャンスもない。
僕から妻への謝罪は無意味に風に溶けるばかり。
それでも僕はそれを繰り返した。少しでも妻に僕の言葉が届くことを祈って。
死んだ妻に僕が出来ることはそれだけだから――。
(…………本当に?)
ある日。死んだ妻へいつもの謝罪を繰り返しているときに唐突にそう思った。何度も何度も読み返した妻からの手紙。そして遺書とも言える日記。
特に日記の方は暗記するほどに読み込んだ。綴られた言葉のすべては消えない罪の意識と共に僕の頭に刻まれている。
だから改めてページをめくるまでもない。
『この日記を見つけてくれた人。
どうか、どうか隣国にある私の実家にこの日記を届けてください。
お父様、お母様。愛しているわ。私なりに頑張ったけれど、もうダメみたい。最後のお願いです。私を実家のお墓に入れてください。』
妻の日記の最後ページに書かれていた文章だ。
隠されていたこの日記を見つけたのは僕。形見だからと大事にしていたし、毎日毎日読み込み彼女を思い出していたけれど。
妻の日記は今も僕の手元に在るし、遺された日記を妻の実家には届けていない。妻の墓もここにある。
――僕はまだ、妻の最後の願いを叶えていない。
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