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18 気づく系夫と私(シェルタ視点)
しおりを挟むその他にも彼が色々と便宜を図ってくれて、今、大国では空前の魚料理のブームが起きている。新鮮であればあるほど良い値がつくため、大国主動で輸送の為の道路整備が進んで、我が国では驚くほど輸出品の販路が広がった。おかげで各国からの旅行客も増え、口コミで特産品である真珠や貝殻細工なども貴族の間で人気になっており、元夫の隣国ルートに頼らずとも国の経済が潤うようになった。
本当に、私だけでなくこの国の経済まで助けてくれた彼には感謝しかない。
そんな彼にプロポーズをされた時は驚いた。
私は再婚――どころか、戸籍を誤魔化し死んだ存在になっているのだ。だから最初は断ったのだが、『高位貴族令嬢でありながら自分のドレスを売ってでも食べていくくらいの気概があって、どんな国でも生きていけそうな意外と図太い所に惹かれた。私と一緒にあちこち旅をしよう!』と言われて心が動いた。
小さい頃から未来と愛する人が決められていた自分。
政略で嫁いで虐げられて死んだと思ったけれど、親切な旅人さんのお陰で命を救われた。『シェル』として生まれ変わった新たな人生。彼の手で新たに開拓された販路と共に、自分の未来まで無限に広がったような気がしたのだ。
元々私が隣国に嫁いだ後、うちの侯爵家は妹が継ぐことになっていた。けれど、その妹が学園で伯爵家の嫡男と恋仲になったことで、妹はそちらへ嫁ぐことが決まった。
なので、この侯爵家は戸籍上では養女となった遠縁の娘のシェル――私が継いで、彼には婿に来てもらうことになった。
ただ、今はまだ両親も元気だし、元夫も何かとうるさい。だからささやかな結婚式を挙げた後は、彼と一緒に新婚旅行と称してあちこちの国を回ることになっている。
――後日。
元夫から私の日記帳が送られてきた。中身を読んで両親が怒っていたけれど、手元に置いておきたくなくてそのまま元夫に送り返してもらった。
隣国でお世話になった買取店の店主は、大国との取引が好調で経済が潤っているこちらの国へと移住してきた。意識のない私に付き添ってきてくれたお医者様はそのまま我が家の専属医師となっている。
こうして生きているおかげで私はわざわざ元夫の手を借りなくても、お世話になった人への感謝も両親への愛も自分で伝えることが出来る。
――勿論、新たに婚約者となった旅人さんへの愛も、だ。
何もしてくれなかった旦那様は死んだ妻に何もすることが出来ないまま、空っぽの墓に語り続けていればいい。元気に生きている私の耳には届かない。
「どうしたんだ?」
「ふふ、何でもないわ。こうして貴方と生きていけるのが嬉しいの」
「そうか。さてと、新婚旅行はどこに行こうか、愛する奥さん? この辺は全て回ってしまったし」
「私はどこでもいいわ。貴方と一緒なら」
「よーし、それじゃあ、せっかくだからうんと遠くに行ってみよう! 何かとうるさい、邪魔な声が届かないくらい遠くへ行こうよ」
「いいわね!」
ふふふ、今度の旦那様はわざわざ口に出さなくても、私の心の愁いにはすぐに気付いてくれるのね。
私を虐げた夫の謝罪はもう聞こえない。旅人さんとだったら幸せになれる。私が聞きたいのは貴方の声だけよ。
耳障りな雑音は空っぽな墓にまかせて。
生まれ変わった私は、私を愛してくれる夫と一緒に旅に出る――。
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