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41 魔法医師の記憶3(先生視点)

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 そして三回目。
 前回に引き続き今回も記憶を残してもらえた――が。

 流石に三回目ともなると脳に負担がかかるのか、一回目と二回目の記憶が混ざったりして記憶が曖昧だし、細かいことなどは忘れてしまっていることも多かった。


 けどまあ、研究に関する事だけ覚えていれば特に問題はない。


 嬉しいことに今回は前回よりも医療技術がかなり進んでいた。
 そして偶然にもかなり早い時期にふわふわ耳の彼女に出会う機会に恵まれた。

 なので、以前の研究結果を参考にしつつ最新の医療技術も積極的に取り入れて早期治療を進め、やっとふわふわ耳の彼女を助けることが出来た。

 今後も魔力の調整は必要だが、これで彼女は普通の獣人としての寿命を迎えることが出来るだろう。


 ようやくやり遂げた。

 嬉しい反面、寝食を忘れてのめり込める何かがなくなって、自分はこのまま燃え尽きてしまうのでは……と危惧していたのだが。


 どういう訳か、今回の私は獣人に対して並々ならぬ興味があるようだ。何故だかは分からない。前回、もしくは前々回。私が心惹かれるような何かがあったのだろうか。思い出すことは出来ないが。


 獣人の生態。死生観。そして……番という彼ら独特の習慣。特にその辺のことに興味を魅かれた。

 猫獣人、犬獣人、竜人……獣人は元となった生物の種族ごとにかなり細かく分かれており、それぞれで寿命も違う。その辺による考え方の差などもあるようだ。

 獣人とは何て奥が深いのだろう。調べれば調べるほど気になることが増えていく。
 全てを知りたい。解き明かしたい。なので、次の研究テーマは獣人に決めた。


 幸い。私が長年、治療をしてきたふわふわ耳の彼女が多くの質問や疑問に答えてくれるので、研究を進めるうえでとても参考になっている。

 初めは病院で顔を合わせる際に話を聞いている程度だったが、聞きたいことが多すぎてすぐにそれでは間に合わなくなった。なので、その為だけに彼女と会うようになった。

 病院を私的に利用するわけにはいかないので、話をする場所はカフェが多い。彼女はクリームたっぷりのケーキが好きなようなので、お礼も出来て一石二鳥だ。
 まあ、彼女は鳥ではなく猫獣人なのだが。


 今日もカフェで話を聞く予定だった。と、いうか時間が勿体ないので、待ち合わせ場所で彼女をこちらの馬車に乗せた後、目的地へ移動する間もフライングで話を聞いていた。

 予定していた個室があるカフェに到着し、馬車から降りる彼女に手を貸した。

 そして、移動中に聞いたことを忘れないように、その場ですぐにメモを取る。彼女の話は面白い事ばかりなのだ。一つだって忘れたくない。店内に入るまで待ってなんかいられない。
 そんな、いつも通りの動きをしていたら。


「番が見ているのでさようならっ!!」

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………え?」

 焦ったような声が聞こえ。突然、彼女が駆け出した。


 ああ、あんなに走れるようになったんだなぁ……。

 元気に走り去る後ろ姿を眺めながらメモ帳片手に感慨にふけっていたら。


 いつの間にか、完全に彼女を見失ってしまっていた。





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