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18 いい方法を考えよう
しおりを挟む「あ、ご、ごめん、嬉しくて、つい。でもさ、ほら。せっかくお互い思いを確認しあえたのだから、前向きに考えようよ。二人で考えれば、きっといい方法が見つかると思うんだ。そうだ、結婚式を中止にするんじゃなくて、いっそ前倒しにしちゃうのはどうだろう? 君に一世一代の珠玉のドレスを贈れないのは残念だけど、僕は君と結婚さえできれば、豪華な式じゃなくても構わないし」
「そうね……。確かに獣人相手ならそれで誤魔化せるわ。結婚して神殿に婚姻届を出せば、その後は正式な配偶者が優先されて、たとえ番がいたとしても探せなくなるから」
どういう仕組みかは分からないが、はるか昔からそうなっている。種族に関係なく神殿は各国共通で存在するし、それは新獣人国と国交のないこの国でも変わらない。国同士で交流は無くても、神殿だけは繋がっているのだ。
「だったら……」
「でも、ダメなの。私の番は竜人だから……種族的に『嘘』を無抜く能力があるのよ。貴方も身近で見てきたから、その能力の正確さは知っているでしょう? 新獣人国では番以外と結婚をすれば、神殿に婚姻届を出した段階で番感知機能が働かなくなるのは周知されているから、結婚歴は必ずその能力を使って確かめてくるはずよ」
先祖返りとはいえリベルタも竜人。同じ能力を持っている。
実際、この嘘を見抜く能力というのは国を治めるうえでなかなかに便利だ。この能力があるからこそ『竜人は政略に長けている』などと言われるのだ。リベルタもこの国を立て直すのに幾度となくこの能力を利用してきた。
だからこそ分かる。この能力を持つ者を敵に回すとこれほど厄介なものはない。
「でも、僕と結婚しちゃえば君が番だと簡単には分からなくなるんだろ? バレなきゃそれでツイてるし、結婚はしていないと嘘をついて、運悪くそれが相手にバレたとしても……既に君は結婚しているのだからと、大人しく諦めて番が身を引いてくれたりは……」
「……しないわね。体内にある番感知器官が反応しなくなるから探せなくなるだけで、二人が番であるという事実が消えて無くなる訳ではないから。実際、初代の新獣人国国王と番の人間はお互い再婚で、国王様は番感知器官を使うことなくお相手の女性と出会っているわ。初代の国王様は婚姻して本当の意味で結ばれたときに、始めてお相手が番であると気が付かれたそうよ。そして出会う経緯はどうあれ、番と結ばれることで得られる恩恵が失われることもない。その証拠に、かなりの高齢ではあるけれど、まだお二人ともご存命よ」
「!? ご存命って、まさか……! いや、だって……新獣人国が建国されたのって」
「500年以上前ね。獣人や竜人は番を得ると本来の力を取り戻すと言われているから、初代国王様は竜人としてもかなりのご長寿よ。まあ、元々竜人は長寿ではあるけれど――それでも初代王妃様の方は人間だから流石に解るでしょう? 番の恩恵があるからこそ、人間の彼女も竜人である初代国王様と同じ寿命を生きているのよ」
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