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第二章 初級講習
20 害獣! 悪魔の子羊(前編)
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「素晴らしいです太田様! これは奇跡です!! まさか一度も即死せずに香車ウサギの討伐を達成するなんて。まあ、角折り職人になった時はどうなることかと思いましたが」
香車ウサギの討伐をクリアした翌週。インストラクターはニコニコとご機嫌だった。俺が死亡せずに討伐を終わらせたことで彼の評価が上がったらしい。
いや、一度も即死せずに、ってなんだ。マジで死亡前提なのかよ。怖ぇ。
あ、でも待てよ。ここまで評価されるということは。俺、結構すごいことしちゃったんじゃないか? 今後入ってくる人たちに語り継がれちゃうような。
「あの……俺、もしかして死なずに討伐できた初めての人間ですか? 伝説作っちゃいました?」
「あ、いえ。記録を確認しましたら82歳の会員様が初見で左右から突進してくる香車ウサギをインストラクターの剣を奪って、ご自分の剣と合わせて二刀流で一気に二匹串刺しにして生還されたそうなので初めてではないですね」
何それかっけぇ!! もうヤダ叶う気しない。
「でも、生きたまま角だけ採取したのは太田様が初めてです。現地では太田狩り戦法と呼ばれていますよ。ただ、ギルドから待ったがかかったのでこの先は禁止事項となりますね」
どうやら稼げるからとマネする人続出でケガ人が出たらしい。幸い死亡者はいないようなのでそれだけは安心した。
しかし、悪い方に名前が残ってしまうなんて。なんという黒歴史……。
「さあ、この勢いで初級の討伐を終わらせてしまいましょう! 用意はいいですか? 最後は『悪魔の子羊』の討伐です」
そうしていつも通りに魔法陣から異世界へと飛ぶと、そこは草原だった。いつもと若干景色が違う。聞いてみたら、狩りやすいように、転移先を対象の魔物がいる所に指定したらしい。
「悪魔の子羊は魔物よりの害獣です。大人しいんですが、その生態にちょっと問題がありまして。積極的に討伐したい魔物に指定をされています」
「問題って? どんな生物なんですか?」
「パッと見は普通の羊なんですがね。ただ、死んだような特殊な目をしておりまして、その目がラブリーと悪魔から絶大な人気を得ています。――で、人間からは気持ちが悪いと迫害され、悪魔から猫っ可愛がりされているわけですが――」
「悪魔……。異世界にはそんなのもいるんですか」
「ええ。いるんですね。悪魔のささやきで人生を狂わせてきたりする人型の魔物です。上級冒険者の討伐対象となっています。――で、その悪魔が癒しを求めて悪魔の子羊に会いに来るのはいいんですが、この羊は割と頭が良く、魔力の痕跡を覚えちゃうんですよ。日頃、人間から迫害されている分、大人になって力を付けると、可愛がってくれた悪魔に再会したいがため魔法陣型に草を食み、勝手に悪魔を召喚します。ちなみに召喚された悪魔はご機嫌で周囲に被害をまき散らします」
「迷惑な……」
「なので、悪魔の子羊に遭遇した場合は積極的な討伐をお願いします。悪魔召喚しちゃう以外は大した能力もないので、遭遇すれば簡単に討伐できます」
トゥルルルル~♪ トゥルルルル~♪
――と、討伐対象についての説明を受けていたらインストラクターの携帯が鳴った。
えっ! ココ携帯の電波入るんだ!?
「はいっ! インストラクターの……えっ!? 82歳の会員様が……。 はっ、はいっ! 分かりましたすぐ伺います」
慌てた様子のインストラクター。緊急事態のようだ。その会話内容から生死が心配になる。82歳の会員さん。年齢が年齢なだけに……。
「あ……あのっ! 82歳の会員さん、どうかしたんですか?」
「それが……色々すっ飛ばして、中級の中ボスを討伐してしまったらしくて、すいませんちょっと手続き行ってきます」
すげえな!? 82歳の会員さん! 俺が心配出来る立場じゃなかったわ!!
香車ウサギの討伐をクリアした翌週。インストラクターはニコニコとご機嫌だった。俺が死亡せずに討伐を終わらせたことで彼の評価が上がったらしい。
いや、一度も即死せずに、ってなんだ。マジで死亡前提なのかよ。怖ぇ。
あ、でも待てよ。ここまで評価されるということは。俺、結構すごいことしちゃったんじゃないか? 今後入ってくる人たちに語り継がれちゃうような。
「あの……俺、もしかして死なずに討伐できた初めての人間ですか? 伝説作っちゃいました?」
「あ、いえ。記録を確認しましたら82歳の会員様が初見で左右から突進してくる香車ウサギをインストラクターの剣を奪って、ご自分の剣と合わせて二刀流で一気に二匹串刺しにして生還されたそうなので初めてではないですね」
何それかっけぇ!! もうヤダ叶う気しない。
「でも、生きたまま角だけ採取したのは太田様が初めてです。現地では太田狩り戦法と呼ばれていますよ。ただ、ギルドから待ったがかかったのでこの先は禁止事項となりますね」
どうやら稼げるからとマネする人続出でケガ人が出たらしい。幸い死亡者はいないようなのでそれだけは安心した。
しかし、悪い方に名前が残ってしまうなんて。なんという黒歴史……。
「さあ、この勢いで初級の討伐を終わらせてしまいましょう! 用意はいいですか? 最後は『悪魔の子羊』の討伐です」
そうしていつも通りに魔法陣から異世界へと飛ぶと、そこは草原だった。いつもと若干景色が違う。聞いてみたら、狩りやすいように、転移先を対象の魔物がいる所に指定したらしい。
「悪魔の子羊は魔物よりの害獣です。大人しいんですが、その生態にちょっと問題がありまして。積極的に討伐したい魔物に指定をされています」
「問題って? どんな生物なんですか?」
「パッと見は普通の羊なんですがね。ただ、死んだような特殊な目をしておりまして、その目がラブリーと悪魔から絶大な人気を得ています。――で、人間からは気持ちが悪いと迫害され、悪魔から猫っ可愛がりされているわけですが――」
「悪魔……。異世界にはそんなのもいるんですか」
「ええ。いるんですね。悪魔のささやきで人生を狂わせてきたりする人型の魔物です。上級冒険者の討伐対象となっています。――で、その悪魔が癒しを求めて悪魔の子羊に会いに来るのはいいんですが、この羊は割と頭が良く、魔力の痕跡を覚えちゃうんですよ。日頃、人間から迫害されている分、大人になって力を付けると、可愛がってくれた悪魔に再会したいがため魔法陣型に草を食み、勝手に悪魔を召喚します。ちなみに召喚された悪魔はご機嫌で周囲に被害をまき散らします」
「迷惑な……」
「なので、悪魔の子羊に遭遇した場合は積極的な討伐をお願いします。悪魔召喚しちゃう以外は大した能力もないので、遭遇すれば簡単に討伐できます」
トゥルルルル~♪ トゥルルルル~♪
――と、討伐対象についての説明を受けていたらインストラクターの携帯が鳴った。
えっ! ココ携帯の電波入るんだ!?
「はいっ! インストラクターの……えっ!? 82歳の会員様が……。 はっ、はいっ! 分かりましたすぐ伺います」
慌てた様子のインストラクター。緊急事態のようだ。その会話内容から生死が心配になる。82歳の会員さん。年齢が年齢なだけに……。
「あ……あのっ! 82歳の会員さん、どうかしたんですか?」
「それが……色々すっ飛ばして、中級の中ボスを討伐してしまったらしくて、すいませんちょっと手続き行ってきます」
すげえな!? 82歳の会員さん! 俺が心配出来る立場じゃなかったわ!!
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