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第二章 初級講習

21 害獣! 悪魔の子羊(中編)

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 やはり年齢と経験値は比例するのかもしれない……。

 引きこもり体質の若者代表として、心の中で人生の大先輩である82歳の会員さんに対し尊敬の念を抱いていたら、ハッと気付いた時にはインストラクターの姿がはるか遠くにあり、豆粒のようになっていた。


「あっ! って、ちょっと、ちょっと!! インストラクターさん、俺は!? 待っている間どうしたら……」


 駆け足で去って行くインストラクターの背中にそう叫べば。


「悪魔の子羊は見れば分かりますし、危険は無いので討伐を進めていてくださーい!」


 ……と、はるか遠くからよく通る声で返ってきた。この距離あるのにすごい声量。流石腹筋割れてるだけある。

 しかし……。


「見れば分かる、とか言われてもなあ……」


 正直、普通の羊すら見たことないのに。目にするのなんて年賀状くらいだわ。しかも12年に一回。友達の数だけ。

 そう、友達の数だけ……はあ。
 自分で自分の地雷を踏んで死んだ目をしていたら。


「めぇめぇ」

 死んだ目と目が合った。え。コレ、あれか。お前か。


「めぇめぇ」

 お前だな。


 なんか、慰めるような響きを感じるが間違いないコイツだ。死んだ目をしている。怖い。

 怖い……が。何か親近感あるなあ……。

 例えていうならネトゲで3徹した後、やっべ、今日一時限目必修科目だ……と気づいたときの俺の目。行くしかないか、代返頼める友達いないし……と諦めた時の俺の目。


 じ~~。


 死んだ目で何かをじっと見ている悪魔の子羊。目線を追うと、俺のジャージの右ポケットだった。中にはちゃぽんっと中身の入った水がある。
 ちなみに左ポケットは200g。ぽよんぽよん言っている。

 あ、コレあれだ。喉乾いたからジュース買おうと思ったら、小銭足りなくて水しか買えなかったんだ。その、飲み残し。


 ゴクリ。


 喉を鳴らす悪魔の子羊の死んだ目を見て、飲みたいのかな? と思った俺は落ちていた大きめの葉っぱに水を注いでやった。

 すると。


「!!(♡)」

「おー、飲んだ、飲んだ。ん? もっと欲しいのか? よしよし」


 悪魔の子羊は一心不乱にもらった水を飲んでいる。よほど喉が渇いていたのだろう。無くなったら足す、を繰り返していたら水が無くなった。

 おっと、自分の分が無くなっちまったぜ☆


「よーし、よし。いっぱい飲んだな~。でも、ごめんな? もうないんだ」

「めぇ」


 ペットボトルを逆さに振ったら鳴き声と共に軽く頷いてのろのろと帰って行った。え? 言葉通じてる? 

 …………。


 ってか、討伐忘れてた!!!





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