【完結】それは本当に私でしたか? 番がいる幸せな生活に魅了された皇帝は喪われた愛に身を焦がす

堀 和三盆

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番外編

8 消えたロイエと番(ヴィクトリア視点)

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 初夜を終えてからしばらくして。ドラゴディス本国からヴィクトリアの元へ一通の封書が届けられた。

 どうやら魅了薬が使われたらしい。


 使われたのはヴィクトリアの孫に対してだ。ドラゴディス帝国へ観光に来ていた人間夫婦の妻が孫の番だったらしい。一人で買い物に出た妊娠中の妻が倒れて、それに手を貸した孫が暴走して女性を攫おうとしたそうだ。

 体調が悪いようだと、孫はとりあえず番の女性を城の医務室へと運んだらしい。そこで孫と女性は引き離されて、そのまま女性は保護された。

 偶然の要素が強く、また、相手が妊娠中だったこともあり接触も最小限。なので、孫の婚約者に協力をしてもらい、魅了薬を使って全て秘密裏に処理したらしい。孫の好意は全て孫の婚約者へと向けられた。

 女性の体調が落ち着いてから夫婦に事情を話して謝罪をしたが、女性は気付いてすらいなかったらしい。あくまでも体調を崩した自分を保護するために、城へ運んでくれたと思っていたそうだ。

 親切心が招いたことだからと、夫婦は穏便に済ませてくれた。そして、夫婦はひっそりとドラゴディス帝国から出国した。
 彼らは生涯ドラゴディス帝国へ来ることはないだろう。そして彼らの住まう国へ孫が行くことも無い。

 肉体的な接触がなかったせいか、対処が早かったせいか、魅了薬に加え竜鱗を焼いたことで孫は元の状態へと戻ったらしい。

 正気に戻った後で自分のやらかしを聞いて、


『それは本当に私でしたか……?』


 と困惑していたらしい。

 己の愚行を理解した今は、治療に協力してくれた婚約者への謝罪に追われているそうだ。

 元々婚約者と孫は両思いだったらしい。婚約者の令嬢には今もキレイな竜鱗が残されているので孫も必死なのだ。

 今後、婚約者が自分の番に出会うかもしれないし、孫のやらかしを理由に婚約を破棄されるかもしれない。そして一度やらかして信用を失った孫には後がない。


 婚約者も孫を選んで自らの竜鱗を手放してくれるかどうか。それは今後の孫の頑張り次第だろう。


 そして、今回使われたのはあの時に作られた魅了薬だ。

 残されていたロイエの番を原料とした魅了薬だけでは量が足りず、追加でロイエを原料とした魅了薬も使われた。


 孫の暴走を止め、破滅することを防いだロイエの魅了薬。


 残った物は城の地下にある保管庫へと運ばれたが、残念ながら保管中の棚から落ちてダメになってしまったらしい。

 状態保存魔法のかけられた棚からいったいどうやって落ちたのかと、みんなが不思議がっているそうだ。
 今まではこんなことなかったのに――と。

 孫に使われる前。二人を原料とした魅了薬は、今回と同じ場所で隣同士に保管をされていたらしい。

 孫に使用されて――魅了薬へと形を変えたロイエの番がこの世から消えたことで、残されたロイエも後を追ったのだろうか。
 魅了薬と共に床にこぼれたロイエの思いはどこに行くのか。


  もしかして、島に現れたあの邪竜は――。




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