11 / 20
11 私の飼い主と夫と家族
しおりを挟む結局、私とグレイは領主様のお屋敷で働くことになった。詳細を聞いて、最初グレイは難色を示していたけれど、実際領主様に会ったらわだかまりは消えたようだ。
私に新たな命が宿り、安定を欲していたせいもあるのだろうが、領主様の人柄に惹かれる所もあったのだろう。
今では領主様がたまに頭を撫でることを許しているくらいだ。少し、神経質なところがある人なのに。領主様曰く、グレイは触り心地がいいらしい。
そしてグレイ曰く、あの撫で方は卑怯だ、つい喉を鳴らしてしまう。領主様はいったいどれだけの頭を撫でてきたのか。
――ということらしい。
まあ、前世を入れていいのなら、結構な数になると思う。私を含め、他にも色々と面倒を見ていたみたいだから。
番ではないけれど、グレイと私は次々と子宝に恵まれた。領主様のご厚意で、敷地内に保育所が出来たのでご近所の子供達も含め、仕事中は面倒を見てもらっている。
領主様も、仕事の合間に子供達の様子を見に行くことを楽しみにしているようだ。
家族が増えて大変だろうということで、お屋敷に住み込みで働かせてもらえることになった。元気な子供達の声はうるさいと思うのだけれど、領主様は幸せそうに笑っている。子供達も領主様に懐いている。
将来はこの子たちに屋敷を任せてもいいかもなぁ、そんな風に漏らすこともあるけれど、それはおそらくないだろう。
子供達の面倒を見てくれている若い保育士の女性との間に、同志のような、穏やかな愛情が育っているのを私達家族は知っている。寂しさから私達家族を手元に置いていた領主様が、自分の家族を手に入れる日も近いだろう。
そして、そうなってもおそらくこの穏やかな関係は変わらない――そんな予感もある。
保育士の女性の、獣人との接し方を見ていて思い出した。
前世。町会長亡き後、私は子供に拾われた。『首輪してるけど迷子さん? 家族が見つかるまでお家で一緒に暮らそうね!』そう言って家に連れて行かれ、まあ、全力で可愛がられた。
正直逃げ出したかったけど、鍵っ子の一人っ子でまだ小さいその子が心配で目が離せなかったのもある。お世話をしているつもりで、結局は最期までお世話になった。
……彼女に記憶はないようだが、私が身をもって教えてあげた直伝の猫への接し方は体がしっかり覚えているらしく、たまに撫でられるとつい喉を鳴らしてしまう。
領主様とは少し年齢差はあるが、前世ほどではない。価値観が同じ二人はきっとうまくいくだろう。
飼い主二人が前世、本当に望んでいた物を知っているから――そんな幸せな未来を掴む手助けが出来たら嬉しいと思う。
223
あなたにおすすめの小説
[完結]貴方なんか、要りません
シマ
恋愛
私、ロゼッタ・チャールストン15歳には婚約者がいる。
バカで女にだらしなくて、ギャンブル好きのクズだ。公爵家当主に土下座する勢いで頼まれた婚約だったから断われなかった。
だから、条件を付けて学園を卒業するまでに、全てクリアする事を約束した筈なのに……
一つもクリア出来ない貴方なんか要りません。絶対に婚約破棄します。
貴方は私の番です、結婚してください!
ましろ
恋愛
ようやく見つけたっ!
それはまるで夜空に輝く真珠星のように、彼女だけが眩しく浮かび上がった。
その輝きに手を伸ばし、
「貴方は私の番ですっ、結婚して下さい!」
「は?お断りしますけど」
まさか断られるとは思わず、更には伸ばした腕をむんずと掴まれ、こちらの勢いを利用して投げ飛ばされたのだ!
番を見つけた獣人の男と、番の本能皆無の人間の女の求婚劇。
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
番など、御免こうむる
池家乃あひる
ファンタジー
「運命の番」の第一研究者であるセリカは、やんごとなき事情により獣人が暮らすルガリア国に派遣されている。
だが、来日した日から第二王子が助手を「運命の番」だと言い張り、どれだけ否定しようとも聞き入れない有様。
むしろ運命の番を引き裂く大罪人だとセリカを処刑すると言い張る始末。
無事に役目を果たし、帰国しようとするセリカたちだったが、当然のように第二王子が妨害してきて……?
※リハビリがてら、書きたいところだけ書いた話です
※設定はふんわりとしています
※ジャンルが分からなかったため、ひとまずキャラ文芸で設定しております
※小説家になろうにも投稿しております
番認定された王女は愛さない
青葉めいこ
恋愛
世界最強の帝国の統治者、竜帝は、よりによって爬虫類が生理的に駄目な弱小国の王女リーヴァを番認定し求婚してきた。
人間であるリーヴァには番という概念がなく相愛の婚約者シグルズもいる。何より、本性が爬虫類もどきの竜帝を絶対に愛せない。
けれど、リーヴァの本心を無視して竜帝との結婚を決められてしまう。
竜帝と結婚するくらいなら死を選ぼうとするリーヴァにシグルスはある提案をしてきた。
番を否定する意図はありません。
小説家になろうにも投稿しています。
番が1人なんて…誰が決めたの?
月樹《つき》
恋愛
私達、鳥族では大抵一夫一妻で生涯を通して同じ伴侶と協力し、子育てをしてその生涯を終える。
雌はより優秀な遺伝子を持つ雄を伴侶とし、優秀な子を育てる。社交的で美しい夫と、家庭的で慎ましい妻。
夫はその美しい羽を見せびらかし、うっとりするような美声で社交界を飛び回る。
夫は『心配しないで…僕達は唯一無二の番だよ?』と言うけれど…
このお話は小説家になろう様でも掲載しております。
彼女は白を選ばない
黒猫子猫
恋愛
ヴェルークは、深い悲しみと苦しみの中で、運命の相手とも言える『番』ティナを見つけた。気高く美しかったティナを護り、熱烈に求愛したつもりだったが、彼女はどうにもよそよそしい。
プロポーズしようとすれば、『やめて』と嫌がる。彼女の両親を押し切ると、渋々ながら結婚を受け入れたはずだったが、花嫁衣装もなかなか決めようとしない。
そんなティナに、ヴェルークは苦笑するしかなかった。前世でも、彼女は自分との結婚を拒んでいたからだ。
※短編『彼が愛した王女はもういない』の関連作となりますが、これのみでも読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる