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番外編 獣人学者は運命の番を許さない
45 増えていく重荷(リスペット視点)
しおりを挟むクロワールとの間に生まれたのは息子だった。リスペットによく似た、かわいらしい男の子だ。子供の顔を見たクロワールは複雑そうな顔をしたが、それでも夫は息子には愛情を注いでくれた。
そして、息子がそろそろ学校へ入る年頃になると、ある事情から家族で引っ越すことになった。
これまで、リスペットはずっと近所からの冷たい視線に耐えてきた。近所にはリスペットが引き起こしたあの日のことを知られているし、クロワールは前妻との思い出が残る家に執着をしていて、引っ越すという考えはなかった。
だから、近所からの突き刺さるような視線を当然のものとして受け止めていたし、泥棒猫、とすれ違いざまに暴言を吐かれたこともある。
リスペットのせいでクロワールは最愛の妻を喪ったのだ。彼女との思い出が残るであろうこの場所を引っ越したいとは言えず、歯を食いしばって耐えるしかなかった。
しかし、どうやらリスペットだけでなく、息子も同じような目に遭っていたらしい。過去のことでただでさえ近所からの評判が悪いのに、猫獣人としての特徴を有している自分たちはどうしたって目立ってしまう。同じ特徴を持つ息子にも、多かれ少なかれソレは向けられていた。
それを知ったクロワールが引っ越しを決めたのだ。
正直、嬉しかった。
引っ越し先は元の家から遠く離れた田舎町だった。この頃には二人とも勤め先である研究機関を退職していたので、家の近所にこだわる必要はない。
引っ越しの日、近所からの冷たい目も気にならないほどリスペットは浮かれていた。ようやくクロワールに許された、これで過去から解放される、そうやって思い込んでいた。
けれど――
家を離れる前。
まるで幸せだった過去を目に焼き付けるように、家のあちこちをゆっくりと見て回るクロワールの寂しそうな姿を見て、リスペットは自分の背負うものがまた一段と重くなったのを感じていた。
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