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6 同情と失望(オディオ視点)
ルシクラージュはクアリフィカの異母妹。アートルム公爵の庶子だった。
彼女の母親は下位貴族でアートルム公爵の元愛人だが、公爵が本妻と死別した後に後妻に入っている。それと同時にルシクラージュも正式に公爵家へと迎え入れられたのだ。
その複雑な生い立ちが関係しているのかルシクラージュのマナーは今一つで、公爵家の恥になるからと公式の場にはあまり出してもらえなかったらしい。
ああ、それでこれまで姿を見たことがなかったのかとオディオは納得した。
「あのね、本当は私もお姉様のようにお茶会や夜会に参加したいのだけど、許してもらえなくて……」
そんな風に寂しそうに語るルシクラージュが可哀そうで、同情したオディオがあちこち連れまわしているうちに彼女との距離は縮まり、二人は自然とそういった関係になった。
上位貴族でありながらルシクラージュは男爵家や子爵家の令嬢のような自由な視点を持っており、それでいて大人しかった伯爵令嬢のように口答えすることなくオディオの話を聞いてくれる。
しかも、頭は良いがクアリフィカほどではないため、ルシクラージュはちょっとしたことでもオディオを褒めて頼ってくれるのだ。
顔も声も雰囲気もクアリフィカとよく似た、だけど今一つ能力が及ばないルシクラージュ。
劣等感を刺激しない相手との逢瀬は心地よく、気づけば正式な婚約者であるクアリフィカではなく、その妹であるルシクラージュに会うためだけにオディオはアートルム公爵家へと通うようになっていた。
そんなある日。
ケーキをドレスにこぼしてしまったルシクラージュが、自分はマナーに自信がないのだとオディオに悩みを相談してくれた。
「お姉様はちょっとしたことでもアレコレと厳しく注意をしてくるのだけれど……私は庶子だったから。生まれながらの公爵令嬢であるお姉様とは違う育ち方をしたから、どうしてもお姉様みたいに上手にはでき、なく……て……ひっく」
――そうやって。ルシクラージュはポロポロ泣きながらオディオに話してくれたのだ。他にも彼女は小さい頃から姉とは違う生活を強いられてきたらしい。姉妹でありながら、二人は一緒に遊んだこともなかったそうだ。
ルシクラージュから話を聞いてオディオは憤った。
王族や上位貴族の能力が高いのは、幼い頃からそれに見合った教育を受けているからだ。勿論、公爵家で生まれ育ったクアリフィカもそれは変わらない。なのに、その恵まれた環境を己の力と過信して、力なきものを馬鹿にするとは許せない。
オディオとクアリフィカは小さい頃から励ましあいながら共に厳しい教育を耐えてきたのだ。オディオとしてもクアリフィカのことはそれなりに信頼していたつもりだったが……だからこそ彼女に裏切られたような気がしたし、相手の見えざる悪意に失望した。
もしかしたらクアリフィカは婚約者である自分のことも同じように馬鹿にしていたのではないだろうか。
――そんな風に。オディオは自分が持つ劣等感を泣いているルシクラージュに重ね合わせてしまったのだ。
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