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4 最期の瞬間まで

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 この世で一番多いのが人間。そして、死んだときに再び人間へと転生できればいいが、時として転生を断られることがある。そんなときには死後、自分で転生先を見つけなければならないそうだ。

 行いが良ければエルフや精霊に。
 悪ければオークやゴブリンに。

 人型が好まれるため、そのあたりの種族に人気が集まるのだという。とはいえ。オークに産まれたからと言って、必ず罪を犯した元人間とは限らない。

 人間が人間として生まれるように、最初からオークとして生を受ける者がほとんどだからだ。

 生物の特性上、常に討伐対象となってしまうオーク。どんどん増やさないと絶滅してしまう。足りない魂を他種族からの転生で賄っている為、自然とこうなったのだそうだ。オークのメスへの転生希望者はほぼいないし……転生オークのオスはどうしても、『元の種族』に惹かれてしまうから。

 減らないように。増え過ぎないように。調整するのが王族の仕事。この、オーク異種族間転生認可局の仕事もその一環なのだという。

 それでも。オークとして生まれても、どうしてもオークとして生きられない者もいる。オーク崩れがそうであったり、繁殖より趣味に生きるオークだっている。

 そんな、オークに向かないオークが人間に転生することがある――都市伝説レベルの噂話だったが、まさかそれが自分の身に起きるとは。

 オークに産まれた以上、オークの生き方を非難することはできない。種族の特性上、仕方のないことだから。でも、他にやり方があるのかもしれないとは思っていた。

 愛ある両親に育てられた自分。それがヒントになっている気がずっとしていた。突き詰めるには、寿命の方が足りなかったが。

 でも、短い時間で出来ることはやった。俺が死んでも母親の生活が守られるようにした。父親が、最後までそこだけは気にかけていたから。

 王子のお陰で高報酬の仕事を受けられたし、しかもギリギリまで働けたおかげで母親が寿命を迎えるまでの生活費はどうにか残せた。後は、命が尽きるその瞬間まで、働くだけ。

 母親との別れは済ませた。

 もう一度会いたい――それを言い出したらキリがない。寿命が決まっている以上、時間は効率的に使うべきだ。最後の愁いは王子が取り払ってくれた。

 オークとして父と母の元に産まれたことに後悔はない。それくらいに愛してもらったし、俺も愛していたと思う。でも、次は人間として家族に――。そう思ったら、若干、胸が熱くなる。

 いや、気が早いな。確実に家族になれるとは限らない。それ以上に、俺が死んだ後も母にはできるだけ長生きをしてもらわなくては。

 いざというときの為に。誰にでもわかるような形で翌日の仕事の資料をまとめ、俺は幸せな気分で――そのまま永遠の眠りについた。



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