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ウィッキー先輩とベクトル

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ウィッキー先輩とベクトル君

 はじまり

美味しく、頂く。
それは、食材に感謝をし、料理のすべてに
通づる、人類そして、食への探究心に、
答えを導く、唯一、万人に許された、
最初の手段の、一歩である。
そして、食事を楽しむ。
これは、食欲という欲求を、
満たす、大きなご褒美でもある。


「節分の日に、平気で、餃子の名将に行く奴には、なりたくないなぁ。」
 ベクトルが、仕事終わりに、
ウィッキーさんに、しゃべりかけた。
ウィッキーさんは、職場の先輩だ。
3つ年上の先輩だ。
 ベクトルは、気さくな感じの先輩に、
親しみをもっている。
「ベクトル君、そんなこだわりを、
持ってどうするのだ。」
「僕らの、楽しみといえば、大衆に、かつ、なおよく、安くて、うまい、名将の餃子に行くことじゃないか。」
「節分の日ですよ。先輩、僕は、恵方巻きを、かぶりついてやりますよ!。」
「かぶりつくのは、皆んなやっている。
そんなに、気合いを入れておくもんでもない。」
「それより、君は、いつも餃子を、タレでなく、塩で、食べるのが、好みみたいだが、私は、邪道だと思っている。」
「だが、しかし、いつも美味しそうに食べる君を見ていると、試してみたくなった。」
「今夜、仕事終わりに、名将でも、一緒に、行こうか。」
「さすが、ウィッキー先輩。ちょうど、餃子が、食べたくて。それに、今日は、給料日じゃないですか!。」
「ご馳走するよ。」
「ウィッキー先輩、かっちょいいー。」
 彼らの、話題にしている、餃子の名将とは、
日本のお店で、有名な中華チェーン店である。
もはや、知らない者は、いない。
 仕事が、今日も、無事に終わり、駅前の手前、コンビニのATMで、お金を下ろして、意気揚々に、ウィッキー先輩が、ベクトルにしゃべりかけた。
「ベクトル君、好きなだけ餃子を食べよう。」
すぐそこにある、お店から、いい匂いがしている。
ニンニクやら、なにやら、あの中華特有の匂いだ。
「ウィッキー先輩、ごちそうになりす!。」
ウィーン。
「いらっしゃいませ~。」
「お2人様ですか?こちらの席へどおぞ。」
いつもの2人掛けの席が、空いていた。
「どうも。」
「ご注文お決まりですかー?」
「とりあえず瓶ビール大、グラス2つで。」
「餃子は…。」
「4人前で!」
 ベクトルが、間髪入れてきた。
「今日は、餃子パーティーだな。」
「じゃあ4人前で。」
「ご注文を、繰り返します。
瓶ビールと餃子4人前ですね。」
「うん。」
先輩らしく、ウィッキーさんは、大きく頷いた。
 店内は、節分の日だったが、賑わいを、
みせていた。調味料カウンターに、塩が、
置いてある。
「今日は、塩で、食べよう。物は試しに。」
「ウィッキー先輩、俺は、塩が、1番好きですよ。」
「ベクトル君、1番おいしい食べ方は、わかるか?」
「だから、塩ですよ。」
「いや、それは味付けに過ぎない。」
「1番、美味しいのは、仕事を、頑張って、疲れた後に、食べるご馳走さ。空腹に、勝るものはないのだよ。」
「ウィッキー先輩、俺、お腹空いてます。」
「今日も、仕事頑張りました!。」
「それが、なにより。餃子を美味しくさせるだ。」
「先に瓶ビールです。」
「ありがとう。」
「ベクトル君、まぁ一杯。飲みたまえ。」
「頂きます。」
 グラスに、ビールが注がれ、ベクトルも、
この仕事終わりの食事に、ウィッキー先輩に、感謝しているのだ。
「お疲れさん。」
 2人は、グラスを鳴らし、交わした。
喉を、ぐびぐび鳴らし、グラスのビールを、すぐに飲み切った。
「うまいすねっ。」
「これが、たまらんのだ!ハハハ!。」
 しばらくの談笑した後、餃子が運ばれてきた。
「お待たせしました。餃子4人前です。」
「ありがとう。」
「さぁ。食べようじゃないか。」
「皿に、塩をのせて。」
「よし、これでよし。」
「いただきまーすっ。」
 ウィッキー先輩は、塩をつけて、一口大きな口で、餃子をほうばった。
(これは、、!。いける!美味い!いやぁ!!
あなどっていたのは、私の方だった。
塩、たかが塩だと馬鹿にしていたのかもしれない。
これは、完全に負けた。完敗だ。どうしよう。
ベクトルに、なんて言おう。普通に、うまい。と言うのもなんだか気に触る。それ以上にうまい。
どう伝えるべきか…!。)
「ウィッキー先輩、どうしたんすか?。」
「いや、私の負けだ。」
「いきなりなんすか!。」
「想像以上に、うまいじゃないか!」
店内に、ウィッキーさんの声が、響いた。
「塩で、餃子を食べたら、どうしお(塩)うもなく
美味い!塩だけにっ!!。」
「…。」
店内の賑わいの雰囲気が、一気に冷えて、
視線が、ウィッキー先輩に、注がれた。
ここに、来ての、親父ギャグに、
ベクトルも焦ったが、間髪入れて、
「店員さん、餃子おかわりっ!瓶ビールも!。」
「何人前ですかー?。」
厨房の方から、店員が、気を利かせた。
ベクトルは、
「4人前、4人前!。」
「瓶ビールも。」
 ウィッキー先輩に、恥をかかせまいと、
少し汗がでたが、注文をした。
「4人前と瓶ビール追加ね!。」
 一方、親父ギャグで、素直な気持ちを放った、
ウィッキー先輩は、何故か、清々しい感じが、していた。店内も、波が引くように、沈静も消え、
また、それぞれの食事を楽しんでいた。
 その後、お腹いっぱいに、食事を終え、会計を済ませて、2人は、帰宅した。
 帰り際、ウィッキー先輩が、
「合格!合格!。」と意気揚々に、大声で、
「時代は、餃子に塩だよ!。」と、
行き交う人に言っていたのが、
少し恥ずかしくなる、ベクトルだった。

  おしまい




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