滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

１３６：龍脈の棟梁（シガミー）、女神像とのリンクが切断されました

「（なんかやべぇ――〝再現付さいげんつき〟で出せっ！）」
　ヴヴッ――じゃりぃん♪

　直刀しこみは威力いりょくがやべぇけど――足あしのすぐ下したで、ひらかれようと・・・・・・・しているものは・・・・・・・、たぶん、もっとやべぇ・・・・・・！
　地鳴じなりりは一切止いっさいやんだ。

「迅雷ジンライも、なんか出せ！」
　もう、魔法杖つえの先さきが足あしにとどく。
　うねる妖狐ようこの尻尾しっぽが、別べつの生き物もののように――かま首くびをもたげている。

　――ぽこん♪
　なんだ？　何なにを出した!?

「――なんか着信履歴ちゃくしんりれきついてるんだけどさぁ、ひょっとしてぇ呼・ん・だぁ？・――」
　――――呼んでねぇよ！

　よし、だめだなこりゃあ――あきらめた。
　妖狐てきと梅干しうちなるてきを――同時どうじに相手あいてできるとは、とても思おもえない。
　命いのちまでは取られねぇだろう――たぶん。

　それでも、折角出せっかくだしたから――一太刀ひとたちでも食らわせてやる。
　さっき、生まれて初はじめて到達しとどいた――手習てならいの境地きょうちで。

　おのずと手は、錫杖しゃくじょうの頭あたまをつかむ。
　ぎゃりりりぃぃぃぃぃん♪
　鳴る鉄輪てつわ。

　ふぉん♪
『＞着用者の生体反応に、顕著な【滅反応（仮）】を検出』

「――ねー、いまどーなってんのぉ？・――」
　うるせえ。

　しゅっかぁ――――ん♪
　しずかな剣筋けんすじ――――――――かちん！

　おさめた仕込み直刀かたな。
　あれ？　こんどは視界しかいが――ズレない。
　おれぁ、いま何を切った・・・・・？
　切った感触てごたえは、かすかにあったぞ。

　ごぉっぉぉぉぉぉぉぉぉゎぁっぁぁぁぁぁぁぁっ――――吹きあがる突風とっぷう。
「――――――――っきゃっぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁっ!!!!!!!!」
　うるせえ。

　ふぉん♪
『＞女神像とのリンクが切断されました
　＞再接続を試みています』
　文字もじが出たけど、わからん。

　気づけば――霧きりに覆おおわれている。
　耳みみを劈つんざくほどの――静寂せいじゃく。

「おい、五百乃大角いおのはら、どうなってる？」
　こっちも返事へんじがねぇ。

　そして、足下あしもとに迫せまっていた、地の底そこが――なくなってる。
　伯爵夫人ようかいきつねも、いなくなった。
　大穴おおあなも、鍵星かぎぼしのひかりも何なにも無い。

　ふぉん♪
『＞地表まで１秒』
　なにっ、真っ白しろで何なにも見えねえけど――――

　ひゅるるる――ごずん！
　とっさに錫杖しゃくじょうを地に突き刺し、着地するすたぁん。

　あたりには、何なにも無い。
　地面じめんは雪山ゆきやまか、白しろい石材せきざいを敷き詰めたように――ただ白しろかった。
　あたりの空中ちゅうも、濃い霧きりが漂ただよっていて――やっぱり白しろかった。
　人影ひとかげが蠢うごめいているようにも見えるし、ただの湯気ゆげのようにも見えた。

「おい、迅雷ジンライ――」
　返事へんじがねぇ。

　ビードロにも、何なにも出ない。
　さっきは、地面じめんが迫せまってるのを知らせたから、壊こわれたわけじゃないだろうけど。

　ぽきゅぽきゅむ♪
　真っ白しろな足下あしもとを、踏みしめる。
　硬かたい。
　あたりには、何なにも見えない。
　ただ白しろかった。
　うごめく白しろい影かげが、延々えんえんとつづいている。

　錫杖しゃくじょうを地面に刺したまま――ぽきゅん♪
　一歩いっぽあるいてみた。
　がくがく、ずどん。
　痛いてぇ。

　なんか、膝ひざをついちまった。
　また金剛力こんごうりきを、使い切っちまった・・・・・・・・か？
　つくり置きをしとくって言ってたから、まだまだ残のこってるはずだけど。

　四つんばいのまま――ぽくぽくぽきゅり♪
　錫杖しゃくじょうから、すこし離はなれて見る。
　湯気ゆげは漂ただよってるけど、視界しかいは妨さまたげられない。

「ココわぁ、いったいドコだぁー!?」
　立ち上がり――――ぽきゅぽきゅぽきゅきゅむ♪
　走はしり出しても――がくがくがく――またすぐ膝ひざをついちまう。

　なんか重おもい荷物ものでも、背負せおってるみたいに……背負せおってた。
　姫ひめさんを背中せなかに、張りつけたままだったよ。

「迅雷ジンライ――なんか忙いそしいんだろうけど――姫さんリカルルをおろしてやってくれねぇか？」
　ビードロの中なかが、いろいろ無くなってスッキリしてる。
　いつもは見方みかたがわからない、絵や文字もじが邪魔じゃまなほどだけど――ここまで何なにも出ないと、すこし、さみしく思おもえる。

　ぷぴぽぽーん♪
『＞〝狐耳族：リカルル・リ・コントゥル〟を携帯装備１から外しました。
「携帯装備１をドロップします、携帯装備１をドロップします」
　五百乃大角いおのはらの声こえ。
　ヤツは居ねぇけど、声こえがする。
　いろんな意味いみで、ぞっとした。

　がしり――おろした途端とたんに、肩かたをつかまれた。
「――――――――、――――!?」
　おろした荷物ひめさんのすごい剣幕けんまくに――後あとずさる。
　ぽきゅぽきゅむ♪

「――、――――！　――――――!?」
　外そとの声こえが聞こえねぇのか。
　服ふくの脱ぎ方かたが……わからねぇ。
　頭あたまの取り方かたは……おぼえてる。

「温泉おんせん入浴にゅうりょく八町分はっちょうぶん！」
　ぷぴぽぽーん♪
『＞〝頭部防具：シシガニャン・へっど〟を装備から外しました。
「ハッチ開放かいほうします、ハッチ開放かいほうします」
　また五百乃大角いおのはらの声だ。
「いるのかー？」
　念ねんのため、ビードロの中なかをもう一回いっかい、見わたしたけど、居なかった。

　ぶっつん――ビードロが消えて真っ暗くらになる。
　ぷっしゅしゅしゅぅぅぅぅっ――――ごっぱぁ♪
　おおきな頭防具かぶとが、もちあがる。
　目のまえが開ひらけ、姫さんリカルルの怒鳴どなり声ごえが聞こえてきた。

　こんなのでも、静しずかすぎて耳みみが痛いてぇよかマシだ――と思おもったのは最初さいしょだけで。
　あらためて、ニゲルのヤツは――筋金入すじがねいりの物好ものずき……もとい、大物おおものかもしれないと思おもった。

　　　§

「じゃーソコに居てくれ、スグもどる！」
　ぽきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅきゅむぅん！
　霧きりの中なかを一気いっきに走はしり抜ける。

　振り返かえれば、リカルルが居る。
　どれだけ離はなれても、霧きりに邪魔じゃまされることは無いみたいだ。

　ふぉん♪
『＞レア度７、伝説級以上の可能性を秘めた、未鑑定アイテムの反応があります』
　なんかでた。
　この矢印やじるしのずっと先さきに、ものが落ちてるらしい。

「えーっと、姫さんリカルルの居場所いばしょを、ずーっとわかるように出来できるか？」
　ふぉん♪
『▼――――リカルル・リ・コントゥル』
　ふぉん♪
『↓――――未鑑定アイテム』
　出来できたっぽい。

　矢印やじるしを追いかけると――――本当ほんとうに、なんか落ちてた。
　それは手で持つには、ちょおと大おおきすぎるくらいの長ながい箱はこ。
　長ながい箱はこが割れたところから、細こまかいものが、こぼれ落ちている。

　それは、柄つかのようなものや、棒ぼうや石いしや、板いたや球たまや紐ひもとかで。

「つまり、こいつは、壊れてる・・・・ってワケだな？」
　上級鑑定じょうきゅうかんていをつかう。

　ふぉん♪
『星間通信機【非売品】
　別ワールド（別惑星）との通信が可能になります。
　追加効果／オープンβ期間中に作成されたＤＥＭＯワールドが存在する場合に、
　　　　　　一度だけ、そちらとも通信が可能になります』

　わからん。
　とりあえず、壊こわれてるなら直なおそう。

　この長ながい箱はこがどういうものでも、修復出来しゅうふくできるスキルを、ぼくは持っている。
　最悪さいあく、完璧かんぺきには直なおせなかったとしても、伝説でんせつの職人しょくにんスキルで強力きょうりょくな機能きのうを書き込めば・・・・・、ちゃんと使つかえるようになる――と思おもう、たぶん。

　　　§

「――きゃっ、まってまって、私、食べられてしまいますぅわぁー！」
　食べられない、食べられない。

　背中に付いた小さな金具を引っ張りあげると、脱ぐときに開いた穴が閉じられる――そうだ。
　普通ふつうの収納魔法具しゅうのうまほうぐでは仕舞しまえなくて、脱ぎ方かたがわからなかったけど。
　姫ひめさんが背中せなかに付いた金具かなぐを見つけて、脱がせてくれたのだ。

　そしていま、〝よほど大柄おおがらじゃ無ければ誰だれにでも着られる〟っていう迅雷ジンライの言葉ことばを信じんじて――姫ひめさんに着せてみてる。

　コッチの声こえが聞こえなくなるけど――ビードロが使つかえなきゃ、意味がない・・・・・。
　迅雷ジンライは強い服ししがにやんと兜頭あたまをつなぐ蝶番ちょうばんみたいになってて、取り出せない・・・・・・。
　もうこれしか、方法がない・・・・・。

　ぼくは、うしろから兜頭ねこみみあたまにとびつき――ちから一杯いっぱい、押し込んだ。
　ムギュッ――ばくん♪

　ぷぴぽぽーん♪
　閉じる音おとが聞こえ――――

「ふぎゃ、にゃみゃみゃにゃにゃっ――――!?」
　猫耳頭リカルルが叫さけぶ。なるほど、こうなんのか・・・・・・。
　たぶん、〝私、食べられてしまいましたわー〟だ。

「いーから落ちつけ。まずコレを見てくれ。たぶん上級鑑定結果じょうきゅうかんていけっかが、目のまえに出るから――」
　これは、聞こえてねえとは思おもうけど――指ゆびを指し、身振みぶり手振てぶりりで〝鑑定結果かんていけっかを見ろ〟と訴うったえた。

　チーン♪
　自分じぶんの上級鑑定じょうきゅうかんていスキルで、ソレをもういちど・・・・・見る。

　串揚くしあげが出来できる、串揚くしあげ一式いっしきがそろった収納魔法具しゅうのうまほうぐ。
　その中なかから椅子いすと机つくえを出し、そのうえに置いたのは――

　さっき見つけた、長ながい箱はこには〝手で持つ所ところ〟がある。
「見方みかたによっちゃ、迅雷ジンライみたいにも見える……かな？」
　柄つかや板いたや石いしや、なんかの摘つまみがやたらと付いてるから、迅雷ジンライか飯めしの神かみが居ないとまるでわからない。

　目のまえの、ひかる板いたっぺら。
『星間通信機【非売品・雅】
　　　　　　別ワールド（別惑星）との通信が可能になります。
　追加効果／アカウント内に別ワールドが存在する場合、
　　　　　　１分につき２ヘククの料金で通話が可能になります。
　　　　　　※データ通信の場合、容量にかかわらず１パケタ／回の、
　　　　　　　料金が必要になります』

　これは、ぼくにしか見えない上級鑑定じょうきゅうかんてい結果けっかだけど、〝猪蟹屋ししがにやん〟のビードロ（大だい）にも、おなじ物のが見えてるはず。