滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

１４１：龍脈の棟梁（シガミー）、遭難二日目

「いけねっ！　寝ちまってた！　起きろ迅雷ジンライ！」
　っと――アイツはまだしゃべれねぇんだった。

「んもぉう～、うるさいですわぁよ～レーニアァ～！」
　なんだその、甘あまえた声こえわぁ？
　猫耳頭おれの毛皮けがわに、顔かおを埋うずめている。

　昨日きのうは、妖狐ようこが〝五穀豊穣ごこくほうじょうの神かみ〟の〝眷属けんぞく〟として奉まつられてることや、日ひの本もとではそれなりに敬うやまわれた存在そんざいであることなんかを、話はなしてやって――そのまま寝ちまったらしい。
　くそう、もしもおれが寝ちまったら、兜頭あたまだけ閉じてくれって頼たのんだのに！
　ちなみに、妖狐ようこの執念深しゅうねんぶかい一面いちめんなんかは、言わないでおいた。

「やばかった、踏まれずに済んでほんっとうに、助たすかっ――――――――」
　〝動く物を見えモーションる化する窓なんたら〟なしで、真上まうえから踏まれてたら、おれたちも錫杖しゃくじょうみたいに〝床ゆかの模様もよう〟になってた。

「ぎゃぁぁっぁぁぁっ――――!?」
　だから、そんな声こえを出すな。
　とてもニゲルには、聞かせられねぇ。

　たかが〝馬鹿ばかでかい目玉めだまに、戸口とぐちから見つめられた程度ていど〟で――――正体しょうたいをなくすな――

「ぅぉわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ――――――――――――――――!?!?!?」
　うるせえ。おれがうるせえ。
　こりゃ、おれの声こえだ。

　姫さんリカルルの叫さけび声ごえよか大おおきかった。

　　　§

「いけねっ！　寝ちまってた！　起きろ迅雷ジンライ！」
　っと――アイツはまだしゃべれねぇんだった。

「んもぉう～、うるさいですわぁよ～レーニアァ～！」
　なんだその、甘あまえた声こえわぁ？

　まてぃ――――こりゃさっきも、やっただろ!?
　おれたちは、あまりの光景こうけいに、たぶん――気絶きぜつした――んだと思おもう。

「どこいった、あの目ん玉たまわぁーーーーーーーーっ！」
　ヴッ――――予備よびの錫杖しゃくじょうを――――じゃりぃぃん♪

「あたまを閉じてくれっ！　たたっ切ってくる」
　リカルルに背中せなかを向け――たら、首くびのうしろにくっ付いた〝兜頭あたま〟を押さえこまれた。
　どさり――寝床ねどこに引き戻もどされた。

「なにしてる!?　いそがねぇと逃げられちまうだろっ!?」
「まず落ちついて。私わたくしたちが生きのこることが、先決せんけつでしょ？　それに闇雲やみくもに敵てきを刺激しげきするのは得策とくさくではないわ」
　たまに、まともなことを言うから困こまる。

「わるかった、気が動転どうてんしてた。よし、じゃあ――たたっ切ってくる！」
　どさり――また寝床ねどこに引き戻もどされた。

「全然ぜんぜん、落ちついてないじゃありませんの……さては迅雷ジンライが居ないと、シガミーはポンコツですわね？」
「ばーれーたーかー――いや、ふざけてる場合ばあいじゃなくてな？」

「よく聞いて。私わたくしたちが、気を失うしなってた時間じかんは……５分ふんちょっと。そのあいだ向こうは手を出してこなかったのだから、攻撃こうげきの意思いしはないと思おもいますのよ」
　耳栓みみせんの小ちいさなビードロの読み方かたを、もう理解りかいしてる。
　頭あたまが悪わるくないとは思おもってたけど、おれが時間じかんの数字すうじを読めるようになったのより、ずっとはやい。

「じゃ、ひとまず〝シシガニャン〟の頭あたまは閉じてあげるけど、外そとに飛び出さないこと。いーい？」
「わかったぜっ！」
　ギューッ――ばくん♪

　ぷぴぽぽーん♪
「ハッチ閉鎖へいさを確認かくにん、ハッチ閉鎖へいさを確認かくにん――気密保持開始きみつほじかいしします」
　五百乃大角いおのはらの声こえがして一瞬いっしゅんの暗闇くらやみ――――ヴュパパパパッ――――ビードロがでて、冒険者ぼうけんしゃカードと同おなじ紋章もんしょうが出た。
　チチチピピッ♪。
　小鳥ことりの鳴き声ごえがして――「うふふ、かわいいぃ」――外そとの音おとが、よく聞こえるようになった。

　猫耳頭シシガニャンを着てるときは、耳栓みみせんビードロがいつもの大おおきさになる。
　そして、兜頭あたまもつけたときには、ビードロ（大だい）が使つかえるようになる。

「迅雷にゃっ、耳栓はずせるかみゃみゃにゃぁー？」
　本当ほんとうなら迅雷ジンライが勝手かってに外はずしてくれるんだけど、いまはダメだ。
　耳栓みみせんしたままだけど、ビードロ（大だい）がつかえてるから――このまま行く。

「あら、シガミーの声こえがちゃんと聞こえますわよ？　どういうコトかしら、さっきは頭あたまをつけたら、猫語ねこごになってしまって、まったく聞き取れませんでしたのに――――」

「ほんとかっにゃみゃぁー!?　そりゃにゃ、いーやみゃー♪　このまま話にゃにゃが出来るならにゃにゃ、だいぶ楽になるみゃにゃぁーにゃ♪」
「けど、同時どうじに猫語ねこごも聞こえてくるから――とってもかわいいぃぃ♪」
　だから、執拗しつように腹はらをなでるなってんだ。

　小屋こやの戸口とぐちから、そっと外そとをみる。
　目玉てきが隠れてたら、切りつけられるように――すぽん、ヴッ、ぱしん♪
　小太刀かたなに持ちかえたけど、なにもいなかった。
　ずっと遠とおくの方ほうに大足あしが何本なんぼんか居るけど、コッチに来るまでは大分だいぶかかりそうだ。

「何なにをするにしても、まずは迅雷ジンライだ――にゃ」
　猫語ねこごとまざって、ニャミカみたいになった。

「直なおせるんですの？　あ、まさか神力切しんりょくぎれなんていう、つまらない原因げんいんだったり――」

「違ちがう――にゃ。昨日きのう、猫耳頭シシガニヤンを走はしらせたりしてた――にゃ？　それに予備よびの神力棒しんりょくぼうが、この服ふくには入れてある――にゃ」

「なんだか、猫耳族ねこみみぞくみたいなしゃべり方になっていますわよ？　かわいい」
　な、なんでぇい。にじり寄ってくんな。

「い、五百乃大角いおのはらと話はなしができれば、たぶんなんとかしてくれると思おもう――にゃ。アイツは頭あたまが良いから――にゃぁん」
　ひゅひゅひゅ――ひゅおぉぉん♪
　遠閒とおまから手刀しゅとうを、おみまいしてやる。
　金剛力こんごうりきで放はなった素振すぶりは結構けっこうな風圧ふうあつで、十分じゅうぶん、姫ひめさんへの牽制けんせいになった。

「ふぅー。じゃあ、やっぱり、イオノファラーさま達たちからの連絡れんらくを待つしか、ありませんわねぇー」
　うん。そのためには、この場所ばしょを死守ししゅしねぇと。
　そして、さっきの目玉めだまがまた来たら――是非ぜひとも、たたっ切ってやりたい。

　ことり――戸口とぐちに一本いっぽん、小太刀かたなを立てかけた。