滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

２：カブキーフェスタへの道

１７０：龍脈の棟梁（シガミー）、恋する（？）オルコトリア

「いただきます」
　手をあわせ、三みつ叉またの一本箸いっぽんばし……フォークで寿司すしを小皿こざらに取る、鬼娘オルコ。

「あと同おなじ皿さらで三みっつ作《つく》ったから、どんどんオカワリしてくれ♪」
　朝飯あさめしは終始無言しゅうしむごんでおこなわれ……迅雷ジンライが食後しょくごの茶菓子ちゃがしを用意よういするまで、１０分ぷんもかからなかった。
　なんでこいつら飯めしを食うのに、こんな全力ぜんりょくなんだ。
　飯めしの神かみであらせられる所ところの、五百乃大角いおのはらは……いつものこととしても。

「ぃやぁー、たべたたべた。腹はら６分目ぶんめってとこだけど、まだ朝あさだしねぇ――ごぉちぃそぉうぅさぁまぁでぇしぃたぁぁ♪」
「おいしかったよ、シガミー」

「「おそまつさまでぇい」」
　全部ぜんぶの食器しょっきを――すぽん♪
　迅雷ジンライにしまう。
　これだけで、洗あらい物ものもせずに片付かたづけが済んじまうのに、最近気さいきんきづいたんだが――

　〝食器専用しょっきせんように調整ちょうせいした収納魔法具しゅうのうまほうぐ〟を作つくれりゃ便利べんりだって話はなしをしたら、リオが待ったを掛けた。
　魔法的まほうてきなことと、仕事しごとの分担的ぶんたんてきなことと、あとなんかの兼ねあいで……もめ事ごとの種たねになるかもしれないらしいのだ。

　なので、「みずのたま」――ばしゃしゃ！
　からの――「ぼそり……乾燥のつめひてぇ魔法またほまう」。
　ぼっふぁぁ、ぼふむっん♪
　乾燥かんそうの魔法まほうは、実じつはまだ、あんまりうまく出来できない。

　なぜなら、生活魔法せいかつまほうを〝ふたつ同時どうじに唱となえはじめる〟のはとてもむずしいからだ。
　この新あたしいやり方かたは、たぶん生活魔法の天才リオレイニアも知らない。

　この高度こうどなやり方かたは、飯の神いおのはらに教おそわった。
　虎とらの巻一回分まきいっかいぶんの教え・・で――〝ムシュル貝がいのドラゴーラ焼き（うり切れ中ちゅう）〟を二皿ふたさら。
　高たかあがりだったけど、使つかいこなせれば呪文じゅもんを唱となえる……詠唱時間えいしょうじかんとやらが短みじかくなって、なんでか威力いりょくも上がるらしい。

　ぽふん――ヴッ――カチャ、カチャン♪
　皿さらを魔法まほうで洗あらった体裁ていさいで、棚たなに戻もどした。
　魔法まほうの神髄しんずい――光ひかりの紐ひもの先端さきは、使つかえば使つかっただけ伸びるらしいし、これも修行ぎょうだ。

「今日きょうもぉ良いお味あじでしたぁ！　それで、何なんのご用よぉなぁのかしらぁ？　なんでも言ってねん、あ、そのワンピ、すっごく似合にあってるわよ♡」

「あ、ありがとう。コレは相当そうとうまえに、隣町となりまちで仕立したててもらった物もので、そのなんというか、その――――」
　ガタガタと椅子いすと机つくえを揺らし始はじめる、鬼の娘オルコトリア。
　武者むしゃぶるいかな。血の気がおおいな。

「はっはぁぁぁぁん、ズバリ！　それっ――勝負服しょうぶふくなのぉねぇ？」
　なんだ、図針ずばりてのわ……勝負服しょうぶふくってのはわかるが。
　ふぉん♪
『ヒント＞〝ズバリ〟／本質、核心』

「勝負しょうぶ……服ふく？　……あー、ああぁ、そうだ！　コレはいつかこんなことのため・・・・・・・・にと、リカルルにそそのかされるまま購入こうにゅうした……のだろうか？」
　なんだか、浮ついてるな。

「勝負しょうぶってんなら、鎧よろいが無けりゃ始はじまらねぇだろ？」
　遠征えんせいのときみたいな例外れいがい。
　そうそうでるたぁ思わねぇが、また変異種バリアントがでたらいけねぇ。

「ちょっ、バカシガミー！　なに言ってくれちゃって――――!?」
「そうか！　やはり、ソウだな！　では、この上うえから、いつもの甲冑かっちゅうを着けるとしよう♪」
　いそいそと、いつもの胸当むねあてや兜かぶとを取りだす鬼娘オルコ。
　ちなみに、剣けんの皮紐ベルトについてる板状いたじょうの収納魔法具しゅうのうまほうぐは、迅雷ジンライが〝聖剣切りの閃光ヴォルトカッター〟の面々メンバーに作つくってやった中なかのひとつだ。
　ちゃんと使つかえてるな。よしよし。

「えぇーーーーーーーーっ!?　鬼おにっ娘こちゃんまで、なに言ってんのさっ？」
　なんだよ。あわてる御神体すしみたいな。
　なんか、話はなしが食いちがってる？

「（いいえ、オルコトリアの生体反応バイタルは、まさしく戦いくさや決闘直前ちょくぜんの血気けっきや覚悟かくごをあらわしています）」

「勝負しょうぶの相手あいてわぁ……誰だれなんでぇい？」
　まずはソイツを聞かねぇと。

「ちょっ、バカシガミーッ！　そんな聞きづらいことを、こともなげに――――」
「ふう、そうだな。ここへ来たのは、そのためだ――」
　シガミー邸わがやへ来たのは――勝負しょうぶのため？

「（相手あいては……おれか？　いやでも、用事ようじがあるのは五百乃大角いおのはらだろ？）」
　ガッチャリン♪

　取りだされたのは鏡餅いおのはらより大おおきな革袋かわぶくろで、『オルコトリア』って名前なまえが入はいってた。
　いつだかギルドの長机カウンターで、見たおぼえがある。

「この金かねで、一騎打いっきうちを申もうし込むっ！」
　うむ、じつに勇いさましい態度たいど。
　女おんなにしておくのが、もったいないくらいだ。

「「「だから、誰だれにっ？」」」
　おれと五百乃大角いおのはらと迅雷ジンライの声こえが、重かさなった。

「そ、そんなの――――れ、烈火れっかの如ごとき剣けんの使つかい手にして、我々われわれ、〝聖剣切りの閃光ヴォルトカッター〟の命いのちの恩人おんじんであらせられる――――――――天狗殿てんぐどのしか居おらんだローガァー!!!」
　耳みみまで真っ赤。一本角いっぽんづのまですこし伸びて・・・・・・、青白あおじろい雷光らいこうがほとばしった。
　鬼おにだ。鬼おにが居る。
　日の本ぜんせにも居た、青あおかったり赤あかかったりする、すっげー強えヤツ・・・・・・・・。

　一本角つのに結むすばれた、可憐かれんな花はなの髪飾かみかざりが揺れた。