滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

４：龍撃の学院

４８０：大陸間弾道卵の謎、おいでませネネルド……湖？

　馬車ばしゃが繋つながれた、巨木きょぼくの根元ねもと。
　広ひろい足場あしばのような場所ばしょに、〝ルードホルドの魔法杖まほうつえ〟が降りたった。

「ひっひひひひひひぃぃぃぃいぃんひひぃん!?」
　困惑こんわくの天てんぷら号ごうが、そこに居た。
　あいつはいつも困惑こんわくしとるが――

「天てんぷら号ごうに村人が・・・……とっ捕つかまってやがる！」
　いまの慌あわてぶりは、いつもの比じゃなかった。

　ぽっきゅらぽっきゅら、ぽきゅぽきゅぽきゅぽきゅきゅららっ――――どごぽぎゅむ♪
　半狂乱はんきょうらんで走はしり回まわり、巨木きょぼくの幹みきへ激突げきとつする黄緑色の子馬てんぷらごう。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ、と、止まったぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁっ――――――!?!?
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
　訳わけもわからず引きずられていたっぽい人々ひとびとが――
　魔物のような子馬てんぷらごうもろとも、巨木かべへ激突げきとつした。

　すげぇな、子馬こうま。
　一馬力いちばりきでは利かない、その力ちから。
　見かけからは想像そうぞうもつかない、最新さいしんの魔導工学製まどうこうがくせい。
　それを一瞥いちべつした白眼鏡しろめがねが、口くちを開ひらく。

「さきほどタターが言ってたのは、こういうこと・・・・・・だったのですね」
　給仕服メイドふくの裾すそをひるがえしコツコツコツと、木製もくせいの足場あしばを踏んでみせる美の権化リオレイニア。

　巨木きょぼくが生えた水面すいめんには、物置小屋ものおきごやのような船ふねのような。
　そんな物ものが浮かべられ、木や縄なわで繋つなぎ合わされていた。
　そしてそのつらなる屋根やねが、まるで大おおきな地面じめんと化し――
　柱はしらを立て、巨木きょぼくへと上陸じょうりくしたんだな。
　その様さまは、目に浮かぶようで――

「まるで……鉄砲虫てっぽうむしだぜ」
　そうなのだ。
　ネネルド村むらの人々ひとびとは生えたばかりの謎なぞの巨木きょぼくの幹みきに、小ちいさな集落しゅうらくを形成けいせいしていたのだ。

「ウケルー・・・・、なにこのバイタリティー♪・」
　美の権化リオレイニアの頭上ずじょうで、美の女神御神体いおのはらがくつろいでやがる。
　だから御神体ごしんたいさまよぉ、勝手かってに何なにかを安請やすうけ合いするんじゃねぇ。
　どうぜ、やるのはおれと迅雷ジンライだろうが。

「まだまだ立て込んでいて、お恥ずかしい限かぎりですじゃ♪」
　そうご満悦まんえつな白髪はくはつのご老体ろうたいを、「村長そんちょうのプランターさんです」と紹介しょうかいしてくれたのは新米しんまいメイドのタター。

　いつものように、子馬てんぷらごうに引きずられていた彼女かのじょが――すぽん♪
　ようやく子馬こうまの尻尾しっぽから、解放かいほうされた。
　それにはコツが要る・・・・・ようで、村長そんちょうを子馬こうまから引き剥がしてやっている。

「まったくもうもう、こんな〝水みずはけが良くて大水おおみずに流ながされることのない地面じめん〟なんて……久ひさしぶりだわ♪」
　若わかく豪華絢爛ごうかけんらんな体からだつき。タター曰いわく「村長そんちょうの孫娘まごむすめ、イャナターちゃんです」。
　どうにもコツが要るようで、孫娘まごむすめを子馬こうまから（略りゃく）。

「そうだな。十年じゅうねんまえに巨石きょせきが流ながれ着いた時とき、以来いらいだ」
　まだ若わかく屈強くっきょうな体からだつき。タター曰いわく「村長そんちょうの息子むすこさんのナゲッターさんです」
　どうにもコツが要（略りゃく）。

　全員ぜんいんが全員ぜんいん、子馬こうまに絡め取られ・・・・・――
　少女しょうじょタターにより、解放かいほうされていく。

「こノ場合ばアいハ天てンプら号ゴうが……捕獲ほかクされていルと考かンがえるべきデは？・」
　困惑こんわくのおれたち。子馬被害者こうまひがいしゃも数かずが増えりゃぁ、こうして立場たちばが逆転ぎゃくてんする。

「まさか、タター嬢じょうの特異性とくいせいがネネルド村むら……特定地域とくていちいきの住人じゅうにんに発現はつげんする、何なんらかの未確認みかくにんスキルの発露はつろであるとは――」
　ソコソコ大おおきな帳面ちょうめんに、何なにかを書き付けていく顧問秘書こもんひしょ。
「――製作者せいさくしゃである王女おうじょさまにも……気づく訳わけがないニャァ♪」
　顧問氏こもんしの顔かおには、〝さっきは死ぬかと思おもったけど、ここに来て良かったニャァ♪〟と書いてある。

「タター。ネネルド村住人むらじゅうにんの方々かたがたは……ひそひそ……仮かりにも女神めがみや辺境伯へんきょうはく名代みょうだいをまえにして……度胸試どきょうだめし的てきな風習ふうしゅうでもあるのですか？」
　いまだ子馬騒動こうまそうどうの渦中かちゅうにあり、困惑こんわくしているのだとしても――
　村長そんちょうを始はじめ解放かいほうされた村人むらびとの首こうべが、垂れる様子ようすは確たしかにない。

　コントゥル家に仕つかえ、美の女神いおのはらとも懇意こんいな――
　超ちょう、出来できる女おんなであるリオレイニア。
　そんな彼女かのじょからしたら、言いたいことの一ひとつもあるだろうが――

「ふぅふん♪　わがイオノフ教きょうにあるのわぁー、〝おかわり・・・・〟のぉー四文字・・・だけぇでーすーがーぁ（きっぱり）♪・」
　美の権化できるおんなの慎つつましい胸元むなもとを、高速・・ですべり降り――
　その手のひらで、ぽとりと受け止められた御神体ごしんたいさまが、宣のたまふ。

「なんですかな、こちらの喋しゃべる……魚さかなの卵たまごのような物ものは？　ふぉっふぉっふぉっ♪」
　呑気のんきな爺じいさんだぜ。

「ふっふっふぅーん、聞いてぇ驚おどろきなさぁい♪　アナタの世界せかいのよりどころっ・――」
　イオノファラーは、いつもと変わらねぇ。

　わいわいわいわい。がやがやがややや。
　おれたちの喧騒けんそうに、他ほかの村人むらびとたちまで集あつまってき――

「ひっひぃぃぃん？」
　ぽっきゅらぽっきゅらららっ――――「ぬぅぉわぁぁぁっずざざざざぁぁっ♪――――!?」
　引きずられていく、追加村人ついかむらびと一号いちごう。

「馬うまのの魔物まものが居――っきゃぁぁぁぁっ!?」
　おなじく追加村人ついかむらびと二号にごう。
「狩るか――ぬぅうぉぉぉぉわぁぁぁっ!?」
　おなじく追加村人ついかむらびと三号さんごう。
「いやまて。うまそうな魚さかなの卵たまごを手にされた、天女てんにょさまがい――うぉぉおぉぉおおぉぉおぉわわわぁっ!?」
　おなじく追加村人ついかむらびと四号よんごう。

「ひっひいひひひっひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ――――!?」
　ぽっきゅらららららららっ――――♪
　木の幹みきに空けた無数むすうの洞窟どうくつ（？）から、わらわらと這いでてきた村人むらびとたちが――
　ひとり残のこさず、子馬こうまの餌食えじきと化していく。

　　　§

「みんなぁー、驚おどろかないで聞いてねぇーん。じつわぁ、あたくしさまわぁー――お魚さかなの卵たまごでわぁ、あ・り・ま・せぇーんぅ♪・」
　天女てんにょによって天高てんたかく掲かかげられた、うまそうな魚さかなの卵たまごが――ふたたび宣のたまうが。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「うっそだぁぁぁぁっ、そんなにおいしそーなのにぃ――魚さかなの卵たまごじゃなぁいぃーのぉぉぉぉおっ!?!?
」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
　うるせえ。

　ここネネルド村むらでは、〝うまそうな魚さかなの卵たまご〟であることが何なによりも肝要かんようらしいぜ。
　けど理解りかいしたぞ。日の本もとにも、こういう土地とちがあったからわかる。

　ここはトッカータ大陸たいりくにおける、とんでもなくひどい田舎なのだ・・・・・。

　　　§

　自分じぶんで吐いた狐火きつねびをすぅと吸い込む奥方おくがたさまの、手足てあしがニョキリと伸びた。
　そんな芸当げいとうも出来できるんだな……初はじめてみたぞ？

　ふぉん♪
『＞妖狐としての特性はおいそれと、人へ見せるような物ではないのでは？』
　その割わりには日頃ひごろから狐火きつねびを操あやつり、おれには七曜の星かぎぼしとわかる陣じんを仕掛しかけたりしてたけどな。

　村むらの発展はってんにときどき手を貸していたらしい伯爵夫人ルリーロさまが、登場とうじょうするに至いたり――
　全村人ぜんむらびとが片膝かたひざを突き、手を組んで鼻はなに押しあてた。

「アナタの世界せかいのよりどころっ、美びの女神めがみやってまぁすぅー。イオノファラーちゃんでぇーすぅ♡・」
　それ、順番じゅんばんが逆ぎゃくだと、まるで締まらねぇなぁ。

　ふぉん♪
『イオノ＞そこのシガミー。お静かにしないと、おかわりを要求しますよ？』
　やかましいやい。