滅せよ！ ジリ貧クエスト～悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番（金髪幼女）に!?～

５：大森林観測村ＶＳガムラン町

６９７：料理番の本懐、洞窟蟹は超強敵

「ブクブクブクブブブッ――――!?」
　ギャギギッギ、ずざざぁぁと、片腹かたはらを引きずる大蟹おおがに。

「後は苦しませぬようにぎゃぎゃにゃ、一撃で屠るだけみゃぎにゃご――ニャァ？」
　ぽきゅぽきゅむんと、大蟹おおがにに取り付いた所ところで――ジャギン!?
　おれは、刀かたなを止めた。

　五百乃大角いおのはらの注文ちゅうもんは、「こぼすな」だ。
　けど甲羅からを二ふたつに出来できないとなると……どうやって仕留しとめりゃ良いんだ？

　ふぉん♪
『解析指南＞甲殻類の内臓をこぼさず調理するためには、外骨格の損傷を避けて下さい』
　難むずかしいことを言うなぁ。
　ふぉん♪
『ヒント＞甲殻類の絞め方／目の内側から切り込み、内部の神経節２箇所を破壊して下さい』
　ヴォォゥゥン♪
　表示ひょうじされたのは、蟹かにの絵。

　ピ・ピ・ピ・プピッ♪
　目の側そばから伸びた点線せんが、甲羅こうらの中・まで進すすんで止まった。
　なるほど正面しょうめんから目の横よこを、真っ直ぐに突き込みゃ・・・・・・・・・・良いんだな？

　ガチガチィィン――鋏はさみを鳴らす蟹かに。
　片側かたがわの足あしを斬られ、動うごけなくなった相手あいてだがぁ！
　気を抜いたら挟はさまれて、此方こっちが身動みうごき取れなくなりかねん！

　全身全霊ぜんしんぜんれいで、居合いあいを放はなつ――シュッカァァンみゃにゃぎゃぁ――ニャァ！
　ごと、ごどん――鋏はさみを落とした。

　すぽん――ヴヴッ♪
　太刀たちを仕舞しまって、いつも使つかってる長包丁ながほうちょうを出した。

「ウカカカカッ、往生しろふぎゃみゃ――ニャァ♪」
　刃先はさきが突き抜けちまったら・・・・・・・・・、甲羅からが割れちまいかねねぇからな。

　つぅおりゃっ――!!
　シュカカンおらっ――ニャァ――――ガッ、ギィンッ！
　やべぇっ！
　甲羅こうらがあまりにも硬かたくて、両方りょうほうとも折れちまった！

「ゴチャギ、ギッィィィィッ!?」
　ゴドズゥン！
「ふぅ――ニャァ♪」
　何なんとか仕留しとめめられたが――すぽん♪
　折れた包丁ほうちょうを、指輪ゆびわの魔法具まほうぐに格納かくのうし――
　ヴッ――ぱしん。
　元通もとどおりになった包丁ほうちょうを、取り出す。
　短くなった・・・・・気が……しないでもない。

「（おいこれ欠けた刃はが、蟹かにの甲羅こうらの中なかに残のこってねぇかぁ？）」
　欠け一ひとつ無く、つなぎ合わされても――
　折れた分ぶんの目方めかたは、ちゃんと目減りする・・・・・。

　ふぉん♪
『解析指南＞〝食物転化〟スキルを使用することで、食材としての安全が確保されます』
　硬かてぇ食い物ものを柔やわらかくしたり、苦にがさやえぐみ・・・を取り除のぞく他ほかにも――
　そんな使つかい道みちがあったのか。

「おにぎりみゃにゃ、この蟹を仕舞ってみゃにゃぎゃぁおいてくれやぁにゃにゃにゃや――ニャァ！」
　あ、其方そっちのお前が伸した奴・・・・・・・も、忘わすれるなよ。
　甲羅こうらが割れて、ひっくり返かえる蟹かにを、おれは指ゆびさした。

　ビステッカと約束やくそくした、蟹かにと芋いもを揚げた料理めしを作つくる為ためにも――
　食材しょくざいは幾いくらでも、必要ひつようだからな。

　さて――がさがさ、カチャカチャカチャ♪
　岩壁いわかべに空いた穴あなから、這い出てきたのは――
　さっき穴あなの奥おくに見えた、別べつの蟹かに。

　そして、壁かべに灯ともる『▼▼▼ピピピッ♪』『▼▼▼ピピピッ♪』『▼▼▼ピピピッ♪』
　三みっつの気配・・。
　ゴゴゴゴンボゴゴゴン、グワラララッ！
　ゴゴゴゴンボゴゴゴン、グワラララッ！
　ゴゴゴゴンボゴゴゴン、グワラララッ！
　壁かべに三みっつの穴あなが開いた。

「あーにゃー、穴だらけにみゃぎにゃー、しちまいやがってうにゃみゃにゃにゃ――ニャァ！」
　がさがさ、カチャカチャカチャ♪
　がさがさ、カチャカチャカチャ♪
　がさがさ、カチャカチャカチャ♪
　更さらに別べつの蟹かにどもが、姿すがたを現あらわした。

「このぉに゛ゃー――蟹太郎どもめふっぎゃにゃー――ニャァ！」
　おれは――すぽん♪
　包丁ほうちょうを仕舞しまい――ヴッ♪
　もう一度いちど、太刀たちを取り出した。

　　　§

「はぁふぅひぃにゃぁにゃあぁ……硬えなっにゃぎゃ、こん畜生みゃぎゃぁ――ニャァ♪」
　もう一匹いっぴきを、倒たおしたまでは良かったが――
　その後あとがいけねぇ。

　ドゴガァァァァンッ――――ガチャガチャッ、がさがさがさささっ！
　鋏はさみを一閃いっせんした後あと、ものすげえ速はやさで、逃げるもんだから。
　鋏はさみの付け根と脚先あしさきを、突くことが出来できねぇ！

　ぽきゅぽぽきゅきゅむん――♪
　逃げ込んだ穴あなに、近寄ちかよれば――――シュガ、ガギィン♪
　透かさず鋏はさみが、飛び出してくる。

　鋏はさみに合わせて――シュッカァァン！
　太刀たちを振り抜くも――ガギュギギチッ！
　兎に角硬かくかたくて、些ちっとも刃はが通とおらねぇ。

　つうか、通とおらねぇどころか――ガキィィン！
「ぐっ!?　放はなせぇ、放はなしやがれぇぇっ!!」
　太刀たちを奪うばおうとする、始末しまつで――

「みゃにゃぎゃぁー♪」
　ぽぎゅごぉむん――「ギュギッ!?」
　おにぎりが跳び蹴り・・・・を、食らわせてくれなかったら――
　太刀かたなを、奪うばわれていた所ところだ。

「ぶくぶくぶく――!!」
　蟹かには半身はんみの状態じょうたいで穴あなに、潜ひそんでやがるから――
　鋏一はさみひとつで、強化服二匹分おれたちにひきぶんの手足てあしを凌しのいでやがる。

　太刀かたなに強つよい、鋏はさみを持ち――
　全身ぜんしんの甲羅からが、魔法まほうを弾はじく上うえに――
　頭あたまも、悪わるくねぇと来たぜ。

「（おい迅雷ジンライ、この世界せかいの蟹かにわぁやべぇ！　守まもりに入はいられると、おにぎりとおれが二人ふたりがかりでも切り崩くずせねぇ！）」
　倉庫そうこをチラ見して、相棒ジンライに助たすけを請こうてみる。

「（最初さいしょから強敵きょうてきであると、意を決けっして挑いどんだのでは？・」
　おう、わかったから、助たすけろやぁ。

　それでもおれたちは、魔法まほうに頼たよらねぇから――
　そこそこ戦たたかえてると思おもう。
　これで、リオレイニアとかロットリンデみたいな、魔法一点張まほういってんばりの奴やつだと――

「（はい。まず苦戦くせんすることは、免まぬがれないかと・）」
　だよなぁ……大申女ロットリンデが、泣き言ごとを言うはずだぜ。

「にゃぎゃぁぁー♪・」
　ぽきゅむん――ゴギャギン！
「ぶくぶくぶく――？」
　おにぎりの岩塩こぶしを喰らっても、鋏はさみには傷一きずひとつ付かねぇ。
　砕くだける、塩しおの塊かたまり。

「ぱくぱくぱくぱく――ぶくぶくぶくく♪」
　怯ひるみもせずに、落ちた岩塩がんえんを――
　拾ひろって口くちに運はこぶ、余裕よゆうまでありやがる。

「（本来ほんらい、陸上りくじょうでは息いきを吸えず苦くるしいはずなのですが、洞窟蟹どうくつがにたちは――生活魔法せいかつまほう〝みずのたま〟を使つかい水分補給すいぶんほきゅうをし、呼吸こきゅうをしていると類推るいすいされます・）」

　ふぉん♪
『イオノ＞＞リオレイニャちゃんに聞いたけどさ、生活魔法で出せる水わあ、ぜーんぶ真水って話だったわよ？』
　五百乃大角いおのはらは、一行表示ティッカーを使つかってきた。
　がたごとん――カチカチチカチ、ピピプー♪
　何なんかの音おとが、倉庫むこうから聞こえる。
　真面目まじめに仕事しごとを、してくれてるようだな。

「（あー、まて真水まみず……それで、おにぎりが投げた塩しおの塊かたまりを、せっせと口くちに運はこんでやがるのか？）」
「（はい。洞窟蟹どうくつがにたちは海うみを渡わたって、島しまに辿たどり着いたと思おもわれます・）」
　ふむ。茹でりゃぁ丁度良ちょうどよい、塩加減しおかげんなんだろうが――

「先ずはあの鋏をみゃにゃぎゃにゃ落とさねぇとっにゃぎゃふぎゃぁー、〝全自動射撃ＬＶ３みゃぎゃにゃぎゃ〟ににゃ、鉄丸を込めとけみゃぎゃぎゃぎゃあ――ニャァ！」
　おれは号令ごうれいをかけ――
　ふぉん♪
『イオノ＞＞駄目わよ！　折角の天然のスープを、こぼすことわ許しません！』
　――即座そくざに却下きゃっかされた。

　がたごとん――カチカチチカチ、ピピプー♪
　仕事しごとをしてくれてる以上いじょう、〝女神に・加護〟を与あたえてやらんとならんかぁ。

「やっぱり面倒めんどうなことに、なっちまったぜ――ニャァ！」
　ったくよぉぅ、飯めしが絡からむと……いつもこうだぜ。