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噂
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人の口にとは立てられないとはよく言ったものだ。
「ウィル、巷で噂になってる面白い話を知ってるかい?」
アインホーン城の門をくぐるなり、私の主はワクワクした表情で私にそう言った。
私はため息混じりに主に応じた。
「噂とは間抜けなオークランド王国の失敗談ですか?」
「そう!それだ!」
子供のような歓声を上げた三十二歳の少年の目はキラキラと輝いている。
オークランド王国に潜ませた間者からの報告だ。
「魔王に勇者を取られて、奪還しに行った英雄まで帰らぬ人になったというお粗末な話だよ。
でもあの気に食わない鼻っ柱が折られたと思うと愉快愉快!」
「閣下は余程オークランドがお嫌いみたいですね」
「過去の栄光に縋る終わった国だ。
そのくせ年季が入って頭が硬くてプライドも高い。
何も得ることができない国だ」
散々な言い様だ。
それもそのはず。
我々の国は、巨大な魔の森アーケイイックフォレストと、カナル大河を境として、大国オークランド王国と幾度となく戦争をしてきた国だ。
元々、異端者の国と揶揄されることもある我が国は、他国から追われた魔術師や、龍神・ヴォルガを信仰する民が創建したことに始まる。
人間の中でも少数派の国だ。
オークランド王国は、アーケイイックフォレストを自分達の領土だと言い、彼の地に幾度となく軍隊を送り込んでいた。
我々フィーア王国はオークランド王国との緩衝地となるアーケイイック連邦王国を国として認めている数少ない国なのだ。
元より、魔物が多く住み、人が住むには不向きな場所だ。
秘密裏に交渉を重ね、同盟とまではいかないが、お互いの利益のために不可侵条約を締結している。
意外とアーケイイックの魔王は律儀なまでにこれを守っていた。
越境もなく、諍いもない。
同じ人間の支配するオークランド王国よりは信頼出来る相手だ。
私の主はそれを高く評価していた。
しかしまさかあんな事を言うなんて…
「私はアーケイイックに行くぞ。
両国に訪問の許可を申請しろ」
「閣下!」
「大きな声を出さなくても聞こえてるさ」
眉を顰めて、私の主・ヴェルフェル候ヘルリヒト様はそう言った。
「すぐにでも各国で勇者の争奪戦が始まる。
出遅れるのは面白くない。
直接勇者の存在を魔王に問うことにしよう」
「そんな尤もらしい事言って、面白そうだから顔を突っ込みたいと顔に書いてありますよ」
「こんな面白い事、放っておく手は無いだろう?」
ヴェルフェル候は私に向かっていたずらっぽく笑った。
そのいたずらっぽい笑みは子供の頃から変わらない。
幼馴染の私が諌めたところで、この若い侯爵の貪欲な好奇心は抑えることは不可能だった。
私はため息を吐いて我儘な主に返事をする。
「分かりましたよ。
地獄だろうとお供致します、閣下」
「ウィル、巷で噂になってる面白い話を知ってるかい?」
アインホーン城の門をくぐるなり、私の主はワクワクした表情で私にそう言った。
私はため息混じりに主に応じた。
「噂とは間抜けなオークランド王国の失敗談ですか?」
「そう!それだ!」
子供のような歓声を上げた三十二歳の少年の目はキラキラと輝いている。
オークランド王国に潜ませた間者からの報告だ。
「魔王に勇者を取られて、奪還しに行った英雄まで帰らぬ人になったというお粗末な話だよ。
でもあの気に食わない鼻っ柱が折られたと思うと愉快愉快!」
「閣下は余程オークランドがお嫌いみたいですね」
「過去の栄光に縋る終わった国だ。
そのくせ年季が入って頭が硬くてプライドも高い。
何も得ることができない国だ」
散々な言い様だ。
それもそのはず。
我々の国は、巨大な魔の森アーケイイックフォレストと、カナル大河を境として、大国オークランド王国と幾度となく戦争をしてきた国だ。
元々、異端者の国と揶揄されることもある我が国は、他国から追われた魔術師や、龍神・ヴォルガを信仰する民が創建したことに始まる。
人間の中でも少数派の国だ。
オークランド王国は、アーケイイックフォレストを自分達の領土だと言い、彼の地に幾度となく軍隊を送り込んでいた。
我々フィーア王国はオークランド王国との緩衝地となるアーケイイック連邦王国を国として認めている数少ない国なのだ。
元より、魔物が多く住み、人が住むには不向きな場所だ。
秘密裏に交渉を重ね、同盟とまではいかないが、お互いの利益のために不可侵条約を締結している。
意外とアーケイイックの魔王は律儀なまでにこれを守っていた。
越境もなく、諍いもない。
同じ人間の支配するオークランド王国よりは信頼出来る相手だ。
私の主はそれを高く評価していた。
しかしまさかあんな事を言うなんて…
「私はアーケイイックに行くぞ。
両国に訪問の許可を申請しろ」
「閣下!」
「大きな声を出さなくても聞こえてるさ」
眉を顰めて、私の主・ヴェルフェル候ヘルリヒト様はそう言った。
「すぐにでも各国で勇者の争奪戦が始まる。
出遅れるのは面白くない。
直接勇者の存在を魔王に問うことにしよう」
「そんな尤もらしい事言って、面白そうだから顔を突っ込みたいと顔に書いてありますよ」
「こんな面白い事、放っておく手は無いだろう?」
ヴェルフェル候は私に向かっていたずらっぽく笑った。
そのいたずらっぽい笑みは子供の頃から変わらない。
幼馴染の私が諌めたところで、この若い侯爵の貪欲な好奇心は抑えることは不可能だった。
私はため息を吐いて我儘な主に返事をする。
「分かりましたよ。
地獄だろうとお供致します、閣下」
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