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ウィンザー
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「どこに行くの?」
猫の姿を借りた《妻》がやって来て訊ねた。
「カナルに…」と答えると、彼女は黒い尾をピシリと払った。面白くないのだろう。
「また行くの?貴方も物好きね」
「諦めかけていた《カーティス》の後継が見つかりそうですよォ」
長く待っていた《カーティス》の候補が二人も現れた。
「口説くなら、あの白い子にしておきなさいよ」と彼女は言った。
「最後の《世界を見守る者》の息子は巻き込まないでちょうだい」
「おやおや、いけませんか?
私はスペースの方が良かったのですがねェ…」
「あの子は他の使命があるわ。そうでもなければ、産まれてくるはずがない存在だもの…
彼は、次の《異邦人》のために残さなければならないのよ。ウィンザーに縛ってはいけないわ」
「残念…」と呟いて、彼女の言葉に苦く笑った。
「それは《世界を見守る者》の一人としてのお言葉ですか?」
「そうよ」と猫の姿で彼女は胸を張った。その姿は威厳などはなく、愛らしいだけだ。
彼女は佇まいを直すように座り直すと、私に要件を告げた。
「アーノルド、《彼》を降ろして。話があるの」
「…《彼》をですか?一体、なんの話しです?」
「《彼》と私の約束を果たすわ。
最後のウィンザーが、ウィンザーの民を《呪った》…
私と《彼》で作ったウィンザーはもうお終いよ」と残念そうに彼女は終わりを告げた。
あまりに突然の話に、驚いて彼女を見つめた。彼女の言う《終わり》とは、私たちの《別れ》と同じ意味だ…
「ごめんなさい、アーノルド。
結局、貴方が最後の《カーティス》になってしまったわね…」
「…本当に終わりなんですか?」
「この世界は、次に進まなくてはいけないの…
古い者がいつまでものさばっていては、次来る者の邪魔になるわ…オークランドのようにね…」
彼女は悲しそうに呟いて、尾を体に巻きつけた彼女は俯いた。
「私の《旅》はお終いね…」
「…アナベル」
「《彼》を呼んで」
猫の姿をした《世界を見守る者》は盟友の魂との会話を望んだ。
40年前、先代の《カーティス》に引き取られた時から、彼女の黒い毛並みはずっと変わらない…
『アナベル様はウィンザー公国の《女神》ですよ』と先代に教えられた。
元々、《カーティス》は神官だ。
その不思議な力は、この黒猫の姿を借りた女神によって、次の《カーティス》に引き継がれる。
《カーティス》の本当の役目は、《初代・カーティス》を降ろす事だ。降霊術は禁術の分類であり、代々の《カーティス》とアナベル、当代のウィンザー大公様以外には秘されていた。
《カーティス》とは裏の名前だ。
彼の公の名前は《ウィンザー》という…
「全てが終わったら…貴女は…居なくなってしまうのですか?」
「アーノルド…」黒猫は緑色の瞳で私を見上げた。透き通った色の瞳は別れを惜しんでいるように見えた…
「私の身体はとっくの昔に土に還ったわ…
ここに残ってるのは、心残りのある亡霊よ…」と彼女は自分の存在を否定した。
「国が滅んだのに、私だけが、まだ未練がましく残ってるなんて滑稽でしょう?
私は私を終わりにするわ…やっと《二クセの船》に乗る日が来たの…
後は、未来ある若者に譲るわ」
彼女の言葉には決意の響きがあった。
彼女は元は長命のエルフだったらしい。
その彼女が身体を失う程の長い時間を超えて、妖精の姿になってまで守り続けたものが消えるのだ…
彼女とて辛いだろう…
その悲しみは私の比では無いはずだ…
「さよならですか、アナベル…」
「貴方が待っていてくれるなら、また巡ってくるわ」
「ふふっ…あたしも…楽しみにしてますよ」
別れの言葉はいかにも安っぽく感じられて、口には出来なかった。
私はお高い《カーティス》なのでね…
安い言葉は使いませんよ。
「《彼》に代わります」
瞳に黒猫の姿の《妻》の姿を焼き付け、《初代》に身体を明け渡した。
「さよなら、アーノルド…」
手放す意識の向こう側で、悲しい女性の声を聞いた。
✩.*˚
ウィンザーの民は、もうウィンザーを忘れたのだ…
彼らは、以前と変わらぬ生活を続けていた。その姿に怒りを覚えた。
大公家が無くなっても、彼らは生活さえ出来れば、頭がすり替わったところで、何の問題もありはしないのだ…
フィーアを拒否することも無く、ヴェルフェル侯爵を《領主様》と呼んでいた元ウィンザーの民に憎しみが生まれた…
惜しんで欲しかった…
私たち大公家の事を、心のどこかに残していて欲しかったのだ…
大公家を忘れてないと、心のどこかで信じていた…
『助けて』と救いを求める声は、私に向けられたものではなかった。
逃げる背に刃を振るった。
もう、彼らはウィンザーの民ではないのだ…
私が殺したのは、憎いフィーア人だ…
「クィン卿…大丈夫ですか?」
村人の死体を眺めながら立ち尽くしていた私に、オリヴァーが訊ねた。彼は気遣うように私の背を叩いて、村人の骸から私を引き離した。
「お辛いでしょうが…」と彼は私を甘やかした。
違う、オリヴァー…
私は悲しいんじゃない…心のどこかで安堵しているのだ…
この殺人を正当化できて…私が殺したのが、自分が守るべき民でなくてほっとしている自分がいる。
「終わったか?」嫌なものから目を背けようと、オリヴァーに訊ねた。彼はいつもと変わらない、落ち着いた様子で頷いた。
「メイヤー閣下は、次の村に向かうようです。我々も向かいましょう」
「分かった」と彼に応えて剣を納めた。
「村人の埋葬と、消火は許されません。このまま出立します」
「オリヴァー」
「はい?」
「誰か、一人でも《ウィンザー》の名を口にした者がいたか?」
私の問いかけに、彼は少しだけ躊躇って、「いいえ」と答えた。
「残念ながら…」
「…そうか」
「クィン卿…」
慰めを口にしようとしたのだろうか?
オリヴァーの言葉を遮って、私の口から出た言葉はどんな感情を乗せていたのだろうか…
「本当に、滅んだのだな…ウィンザーは…」
大公が亡くなり、貴族たちは土地を捨て、土地は名を変え、主を変えた。
彼らの心が変わらない事の方が不自然だ…
なら私は…
こうやって、私だけが生きているのは不自然ではないか?
「オリヴァー…私は、何故生きているのだろうな…」オリヴァーの息を飲む気配がした。
死にたいとかそういうことでは無いのだ。
ただ…単純に、この命に何の意味があるのか知りたくなった…それだけだ…
オリヴァーの手が伸びた。
彼は私の手を握って膝を折った。
「元ウィンザーの民がどんなに否定しようとも、クィン卿の命は、私にとって何にも変え難い宝です…
全て消え去っても、貴方さえ残れば…私は全てを許せます」
「…オリヴァー」
「生きる意味など…私がいるからでいいではありませんか?
私も、貴方がいるから生きています…私はそれだけのつまらない男です…
私には…もう貴方しか…」
言葉が詰まる。オリヴァーの手が震えた。
彼は私をずっと見守ってきた一番の従者だ。彼はウィンザーの民ではないが、私のたった一人の臣下だ…
「貴方の生を喜ぶ人間が、私一人ではご満足頂けませんか?」
「…いや、満足だ」
私の答えに、オリヴァーは顔を上げて安堵したような笑顔を見せた。
「ウィンザーが滅んでも、民が死に尽くそうとも、地獄を作ろうとも…私はお前のために生きるよ…
何も報いることは出来ないが、お前はそれでいいか?」
「何よりの褒美です」彼は私の口約束を喜んだ。
私たちにはもう他に何も無いのだ…
無いからこそ、ここにはたった一つ残ったのだ…
正しくなくても、そんな事はどうでも良かった…
✩.*˚
『貴方は教会の庇護下にあります』と司教は私に伝えて、新しい《オリヴァー》という名前を与えた。
『キンバリー子爵家の事はお忘れなさい。
貴方は《オリヴァー》です。ただの《オリヴァー》…分かりましたね?』
『はい』と素直に返事をしたが、それ以外、私に許された選択肢などなかった。
年の離れた兄のくだらない矜持が、キンバリー家を断絶させた。キンバリーの名は、一族郎党、残さずこの世から消えた…
父は『争うな』と言葉を残したのに、兄は守らなかった。父親の無念を晴らすと、無駄な復讐心に駆られて、結局全てを失った…
残ったのは、何の力も後ろ盾もなく、幼い頃に教会に預けられた私だけだ…
見逃されたのは運が良かったからだ…
『オリヴァー、なんでオリヴァーには姓が無いの?』そんな事を幼いクィン卿に訊ねられた事がある。
『なんでですかねぇ…』と笑って誤魔化した。
『きっとそのうち、誰かに付けてもらうためかもしれませんねぇ…貴方とか?』
『じゃあ!僕が国に戻って、爵位を貰ったら、君に格好いい名前を与えるよ!』
『ふふっ。それはそれは…楽しみにしてますよ、ジョージ様』
もう、そんな話も忘れたでしょう?
私の姓が無いことさえ、気にならなくなったでしょう?
それだけ長い間、私と貴方は一緒にいましたからね…
そして、私たちはとても似ていたのですね…
似て欲しくはなかったのですが…こればかりは仕方ありませんねぇ…
過去に思いを巡らせていると、戻ってきた騎士に呼ばれた。
「貴殿は治癒魔法は使えるか?」
「可能ですが…何か?」
「騎士が二人と馬が負傷した。動ける程度で構わん、治療を頼む」
「かしこまりました」と答えて、団長とクィン卿に断って先に出発した。
次の村は先の村より大きかった。その分凄惨さも際立っていた。
抵抗したのだろう…
村は酷い有様だった…
「こっちだ」と案内された先で、怪我をした騎士の情けない怒声が耳障りに響いた。
「痛い!治癒魔導師はまだか?!早う!」
「グラント卿!お連れしました!」
「遅い!この私に何かあったらどうしてくれるのだ!早う、治療せい!」
頭の肉が割れて骨が覗いていた。身体に刺さったままの鎌は出血を恐れてそのままにしているようだ。
でも彼は割と元気そうだ。問題はもう一人の方だろう…
馬に蹴られたのだろうか?顔色は死人に近かった。
「早く治療しろ!」と喚いてる男よりは重傷だ。
彼に歩み寄ろうとして、他の兵士に止められた。
「グラント卿を早く治療してください」
「しかし、彼の方が危険な状態です」
「グラント卿が先です」と兵士らは譲らなかった。グラント卿とやらが余程怖いらしい。
僅かに苛立ちを覚えたが、それもどうにもならない。彼らの優先順位にしたがって、この不愉快な男から治療することにした。
散々殺しておいて、自分は痛いと、死にたくないと喚くのだな…
その姿がなんとも滑稽に見えた…
治療を終えると、グラント卿は、私に礼ではなく罵声を浴びせた。
「遅かったでは無いか!私に恩を売ろうと勿体ぶったのではあるまいな?賎しい事よ!」
「そのような事はございません」
「ふん!どうだか?!名乗れ!お主らの団長に抗議してやる!」
たかが騎士のくせに、随分威圧的な男だ。
「《黄金樹の騎士団》付きの特別魔導師でオリヴァーと申します」
「姓は!どこの家のものだ?!」
「姓はございません…」
「なるほど!賎しい生まれというわけか!穢らわしい!《名無し》とはな…」
《名無し》とは、オークランドにおいて、姓を剥奪された大罪人もしくはその家族を指す言葉だ。
「そこまでとせよ、グラント卿」厳しい声が威勢の良い騎士の口を塞いだ。
「メイヤー閣下…」グラント卿が青い顔で、見上げた相手は、わざわざ馬を降りて頭を下げた。
「部下の非礼は詫びる。治療にも感謝する」
「閣下!《名無し》などに…」
「グラント卿、貴殿は彼に救われたのだろう?無礼では無いか?」
メイヤー子爵はグラント卿を叱りつけて、私に向き直った。
「確かに、《名無し》は問題だな…
貴殿は魔導師級の働きを見せていると聞く。《アンバー式転移魔法》を使用出来る存在は多くない。
この《騎行》が終了したら、私が召し上げて、正式な騎士号を与えよう」
「申し訳ございません…私には既に長くお仕えしている主がおります。
御無礼ではございますが、何卒、この話は無かった事に…」
「貴殿の名誉も回復できない主では、その能力も存分に使う事ができぬであろう?
それはオークランドにとって不利益である。
今は有事。有能な人間を遊ばせておけるほど、余裕は無いのだ」厳しい言葉を残して、彼はまた馬に跨って立ち去った。私の話は聞いて貰えそうになかった…
陰鬱な気持ちのまま、もう一人の怪我人に足を向けた。
治療を待つ重傷の兵士の傍らには付き添う仲間の姿があった。
「治療を…」
「不要です」と咽び泣く声が若者の死を伝えた。
優先すれば、助かったかもしれない…
なんとも後味の悪い結果に、自分の無力さを噛み締めた。
確かに、能力があっても、生かせる環境がなければただの持ち腐れだ…
苦い感傷に浸る私に、またあの子爵からお呼びがかかった。
「《黄金樹》の、メイヤー閣下がお呼びだ」
「何事ですか?」
「貴殿は魔法に詳しいのだろう?確認したい事があると仰っていた」
私を呼び来た兵士は曖昧な回答しかしなかった。
仕方なく杖を手に、馬を引いてメイヤー子爵の元に急いだ。
「貴殿は、《黒い炎》を知ってるか?」と彼はいきなり私に問い質した。
「《黒い炎》ですか?」と言われたまま返してしまった。
そんな物騒なもの、文献でしか知らない。元より、その炎を扱える《人》が居るなどとは到底思えなかった。
「この先の道を塞いでいるらしい…何ヶ所もだ…
消火しようとしても一向に弱まる気配もなく、近づくこともできないという…」
「《黒い炎》は、古い文献でしか見たこと有りません。確か、ヴォルガの心臓で温められた、焼けた石から生まれた大精霊にそのような話があったはずです。
確か《炎翼の獅子》、もしくは《有翼の炎獅子》と呼ばれていたと記憶してます」
「大精霊を従えるほどの精霊使いがいるということか?」
「分かりません。《黒い炎》自体、私は見たことが有りません」
「珍しいのか?」
「《祝福》を持つ者でも、《黒い炎》を操る存在など、聞いたことがありません」
先日見た炎の《祝福持ち》の男も《青い炎》だった。
「閣下、いかが致しましょうか?このままでは進めませぬ」メイヤー子爵の側近が口を挟んだ。
メイヤー子爵も考え込む素振りを見せて黙り込んだ。
「進めるか、確認してくれぬか?」
メイヤー子爵は逡巡して、確認を依頼した。
私を重用することで、《黄金樹の騎士団》の発言力が上がることを恐れたのだろうが、それでも、この場に居合わせた者の中で、私が一番適任だと判断したようだ。
どうせ、団長らが追いつけば同じ事を言われるのだ。他に任せて問題になっても目覚めが悪い…
先程の若者のように死人を増やすのは辛かった。
仕方なく承諾して問題の場所に向かった。
道を横切るように伸びた《黒い炎》の境界線が、行軍を阻んでいた。馬を降りて炎に近寄った。
「確かに《黒い炎》ですね…」
「近付くと強くなるのです。
跨ごうとした者は灰になって死にました…」
なんとも物騒だ…
石を拾って炎に投げ込んだが何も無かった。石は炎をすり抜けて反対側に落ちた。
木の枝も燃えたが普通の炎に炙られたような印象だ。人が灰になるほどの炎には思えなかった。
「動物を」と兵士に求めると、彼らは村から奪った山羊を1頭連れてきた。
嫌がる山羊を炎に向かって押し出すと、《黒い炎》が山羊に反応した。大蛇のようにうねった炎が哀れな生贄を飲み込んだ。
「メェェ…」
悲鳴をあげた白い山羊が一瞬で黒く色を変え、灰になって崩れた。
「…なるほど…」厄介な仕様の魔法だ…
さすがに人を跨がせる訳にはいかないな…
そう思いながら兵士らに視線を向けると、彼らは慌てて目を逸らした。
まぁ、そうでしょうねぇ…
とりあえず可能性をひとつずつ潰すしかない。
「皆さん、ウロウロしないでくださいね。
出来れば1箇所に集まっていただけませんか?」と兵士らを集めた。
「これ嫌いなんですよね…
頭の中ぐちゃぐちゃになるんで…まぁ、仕方ないですけど…」
独り言をブツブツ呟きながら魔法を発動させた。
「《魔法強化》、《範囲拡大》、《照準補正》、《探索》」
魔法陣が重なって展開される。全ての魔法陣が重なり、発動条件を満たした。
魔法の発動と同時に、周辺の情報が一気に頭に流れ込んでくる。
《探索》の魔法は、そのままであれば、自分を中心に半径10m前後の情報がせいぜいだ。
それを10倍の範囲に広げて、細かい情報まで拾うのだから苦痛を伴う魔法だ…
「ぐっ…」込み上げた吐き気を何とか堪えて、《探索》の情報を精査した。
脳内に引っかかる影を見つけた。
「《視界分離》…うっぷッ…」追加の魔法を発動してさらに気持ち悪くなる。
長くは持たない。魔法を解除する前に、見つけた影に意識を集中させた。
人間だ…二人…そう遠くない…方角は…
「うぅ…」限界だ…脳が焦げ付く…
仕方なく魔法を解除させたが、押し寄せた吐き気に負け、その場に蹲って吐瀉した。
危なかった…意識が飛ぶかと思った…
「オリヴァー殿…だ、大丈夫ですか?」
「…何とか…」クラクラする頭を抑えて杖を頼りに立ち上がった。
すぐ近くに軍隊がいるのに、逃げないということは見張っているに違いない。
あの二人を検めさせた方が良さそうだ…
「林に…二人潜んでいます」と兵士に伝えた。
兵士らがざわついた。
彼らの顔に張り付いた恐怖は、私を見てはいなかった。彼らの顔を見て血の気が引いた。
「オリヴァー殿!炎が…」
悲鳴に振り返ると、《黒い炎》が鎌首をもたげた蛇のように揺らめいた。
まずい!
ふらつく足と、目眩を抱えた身体では、素早く対応する事が出来なかった。
すぐ傍にいた兵士が身を呈して庇ってくれなければ、死んでいた…
突き飛ばされた先で見たのは、炎に巻かれて身をよじる人の姿だった。
心臓が締め付けられるような恐怖を覚えた…私がああなるはずだった…
「…諦めて、退けば殺さなかった」と炎の向こうから残念そうな声が聞こえてきた。
「あなたは…あの時の…」覚えのある男の姿に、死んだ友の顔が過ぎった。
あの時、リューデル伯爵と一緒に居た《祝福持ち》の炎使い…
「オークランドに帰れ」と彼は炎の境界線の向こうで警告を発して、上の服を脱ぎ捨てた。
服の下から現れたのは、刺青のような魔法の模様だ。目を疑った…
「まさか…そんな…《神紋》?」
神に連なる存在が、自らの力を示すために《祝福》を人に与えると言われている。
その中から、さらに選ばれた人間が、神の《所有物》として与えられるのが《神紋》だ…
あの刺青なような模様は、その力を約束された《眷属》の証だ…
昔は全身に刺青を施して、その力にあやかろうとした者たちもいたらしいが、今では完全に廃れた文化で、知ってる者も限られた人間のみだ…
私も、文献上の知識としてたまたま知っているに過ぎない。
噂では、《冬将軍》は《神紋》を持っているということだったが…
目の前の男のこれはははったりか?
でも…この《黒い炎》は…本物?
「帰れ!俺の平和を乱すな!」
目の前の男の怒鳴る声が、思考の沼に嵌りそうになった意識を現実に戻した。
彼は動かない兵士らに苛立ちを募らせた。動かないのではなく動けないのだ…
嫌な汗が滲んだ。
「《灼腕》」と呟いた男の背から、赤い巨大な腕が伸びた。
左右二本ずつ伸びた腕が伸びて、兵士らを襲った。
赤い炎の腕に捕まった兵士の悲鳴と、逃げ出す者の悲鳴でその場が地獄と化した。
逃げ損なった者にまた腕が伸びる。
街道は一方的な惨劇の舞台と化した。
命を奪う腕はさらに二本増えた。
「退くな!お前たち、戻れ!逃げる者は斬り捨てるぞ!」
逃げる兵士らを叱咤する無茶な男の姿があった。彼はこの状況で、逃げようとした兵士に凶刃を放った。
更なる戦慄が走る。逃げることも出来ずに、絶望がその場を支配した。
あの男…助けるべきではなかった…
そう思ったのも束の間、赤い腕が彼を捕らえた。
「グラント卿!」
「俺は『帰れ』と言った」
ゾッとする声が響いて、赤い腕が悲鳴を上げる騎士を高く掲げた。
「《地獄炎》」
赤い腕が色を変えた。あの黒の炎は鎧も骨も残さずにグラント卿をものの数秒で灰に変えた…
目の前で見せられた光景に、憶測は確信に変わった。
これはやはり《神紋》だ…次元が違う…
私に勝てる見込みは万に一つも無かった。
団長でも、防ぐのが精一杯かもしれない…
恐怖が全身から力を奪った。
こんな所で…ここが私の終わりですか…
生きることを諦めかけた私の前に、あの怪物と化した男がやって来て、撤退を要求した。
「撤退を邪魔する奴はもう居ない。すぐにカナルまで帰れ」と彼は言った。
「去るなら追わない」と告げ、彼は背中から伸びた炎の腕の数を減らした。
「…何故、私に?」
「この場で一番偉そうだから…」と彼は稚拙な回答を返した。
「《騎行》の指揮官に伝えろ。
『この先は通さない。元ウィンザーの人間を苦しめたら、《炎獅子》が許さない』と…」
「…ウィンザーの…?」
何故彼はウィンザーの名を出したのだ?もう、誰からも聞くことは無いと思っていたのに…
「俺は元オークランド人だが、妻は元ウィンザーの人間だ。弟も、ウィンザーを愛してる…」
「…まだ…いたのですか?…ウィンザーを、忘れない人が…」
「いる」と彼は答えた。
「ロンメルもヴェルフェル侯爵も…ウィンザーの民と文化を大事に扱っている。
文句を言う奴はほとんど居ない…ウィンザーの連中には悪いが、俺はそれで良いと思ってる」
彼はそう告げると、「帰ってくれ」と最初の主張を繰り返した。
目の前の彼には敵わない。
退けるなら…と足を引いた。
私はまだ、彼のためにも死ねない…
この男とクィン卿を会わせてはいけない、と思った…
「オリヴァー!無事か?!」
逃げ腰の私の背に、彼の声が届いた。
馬の背に兵士を逆走してくるのは、今一番見たくない人の姿だ…
「…退けと言ったのに」と残念そうな声に反応して、炎の腕が揺らめいて、勢いを取り戻した。彼の視線は向かってくる騎士の姿を捉えていた。
「クィン卿!撤退を!」叫んだ私の声に彼は応えなかった。
「貴様!あの時の!」声を荒らげたクィン卿が剣を抜いた。
それに応じるように、炎の腕が陽炎を纏わせながら動いた。
「待ってください!退きます!撤退します!どうか…」
彼だけは…
私の必死な嘆願に、目の前の男は躊躇ったように見えた。青緑の瞳が迷うように揺れた。
一瞬の迷いに隙が生まれた。
炎の隙間に見えない刃が滑り込み、血を撒きながら炎を纏った身体が仰け反った。
「オリヴァー!下がれ!《風刃・裂破》!」
クィン卿は馬の背からさらに刃を放った。
追撃を躱した手負いの男は、塞がらない《裂破》の傷を抑えながら炎の腕を召喚した。炎の腕が、彼を守るようにクィン卿の馬の前を塞いだ。
「この化け物!オルセンの仇だ!」クィン卿は罵声を浴びせながら男に迫った。
激しい《祝福》の応酬が続く。誰も手が出せない。
傷を負ったからなのか、出し惜しんでいるのか、彼は《黒い炎》は出さなかった。それは好都合だったが、不気味だった。
優勢に見えていたクィン卿だが、彼の馬がいきなり棹立ちになって騎手を投げ出した。
「ギル!」と林から男の声がした。
もう一人の存在を忘れていた…
彼は道に引かれた《黒い炎》の境界線から叫んでいた。
「何してるんです、ギル!戦って…
帰るんでしょう?ブルームバルトに!」
「よくも邪魔を!」馬から振り落とされたクィン卿が立て直すと同時に、《黒い炎》の向こうに刃を放った。
風の刃は男に届く前に、飛び出した馬に阻まれて届かなかった。
「何っ?!」
「私の家族とウィンザーを害するなら、今度はオークランド中にネズミを放ちますよ」
炎の向こう側の男の言葉にクィン卿が激高した。彼の抱えていた憤怒と憎悪が罵声となって溢れた。
「この厄災どもが!誰がウィンザーを害するだと?!笑わせる!
お前らはフィーアからウィンザーを守らなかったくせに、この私の…ウィンザーの前に立つのか?!」
「何を…」と彼らはクィン卿の怒りに困惑した。
「私がウィンザーだ!
ジョージ・エドワード・ウィンザー・クィン!
祖父はウィンザー大公エドワード三世、父は嫡子のチャールズ・ウィンザー・ブルーフォレスト公だ!
正当なウィンザーを前に、よくもそんな事が言えたものだ!」
「いけません、クィン卿!そのような事を軽々しく口にしては…」慌ててたしなめたがもう遅い。彼は正体を明かしてしまった…
目の前の二人は絶句して固まっていた。
冷静さも失ったクィン卿の怒りは収まらない。
彼は悲しい言葉を放った。
「ウィンザーを守るというなら、この私を救ってみせろ!
それとも最後のウィンザーを殺して、滅ぼすか?!
貴様らが選ぶがいい!
私は私たちを裏切った《ウィンザーの民》など、もう必要ない!」
猫の姿を借りた《妻》がやって来て訊ねた。
「カナルに…」と答えると、彼女は黒い尾をピシリと払った。面白くないのだろう。
「また行くの?貴方も物好きね」
「諦めかけていた《カーティス》の後継が見つかりそうですよォ」
長く待っていた《カーティス》の候補が二人も現れた。
「口説くなら、あの白い子にしておきなさいよ」と彼女は言った。
「最後の《世界を見守る者》の息子は巻き込まないでちょうだい」
「おやおや、いけませんか?
私はスペースの方が良かったのですがねェ…」
「あの子は他の使命があるわ。そうでもなければ、産まれてくるはずがない存在だもの…
彼は、次の《異邦人》のために残さなければならないのよ。ウィンザーに縛ってはいけないわ」
「残念…」と呟いて、彼女の言葉に苦く笑った。
「それは《世界を見守る者》の一人としてのお言葉ですか?」
「そうよ」と猫の姿で彼女は胸を張った。その姿は威厳などはなく、愛らしいだけだ。
彼女は佇まいを直すように座り直すと、私に要件を告げた。
「アーノルド、《彼》を降ろして。話があるの」
「…《彼》をですか?一体、なんの話しです?」
「《彼》と私の約束を果たすわ。
最後のウィンザーが、ウィンザーの民を《呪った》…
私と《彼》で作ったウィンザーはもうお終いよ」と残念そうに彼女は終わりを告げた。
あまりに突然の話に、驚いて彼女を見つめた。彼女の言う《終わり》とは、私たちの《別れ》と同じ意味だ…
「ごめんなさい、アーノルド。
結局、貴方が最後の《カーティス》になってしまったわね…」
「…本当に終わりなんですか?」
「この世界は、次に進まなくてはいけないの…
古い者がいつまでものさばっていては、次来る者の邪魔になるわ…オークランドのようにね…」
彼女は悲しそうに呟いて、尾を体に巻きつけた彼女は俯いた。
「私の《旅》はお終いね…」
「…アナベル」
「《彼》を呼んで」
猫の姿をした《世界を見守る者》は盟友の魂との会話を望んだ。
40年前、先代の《カーティス》に引き取られた時から、彼女の黒い毛並みはずっと変わらない…
『アナベル様はウィンザー公国の《女神》ですよ』と先代に教えられた。
元々、《カーティス》は神官だ。
その不思議な力は、この黒猫の姿を借りた女神によって、次の《カーティス》に引き継がれる。
《カーティス》の本当の役目は、《初代・カーティス》を降ろす事だ。降霊術は禁術の分類であり、代々の《カーティス》とアナベル、当代のウィンザー大公様以外には秘されていた。
《カーティス》とは裏の名前だ。
彼の公の名前は《ウィンザー》という…
「全てが終わったら…貴女は…居なくなってしまうのですか?」
「アーノルド…」黒猫は緑色の瞳で私を見上げた。透き通った色の瞳は別れを惜しんでいるように見えた…
「私の身体はとっくの昔に土に還ったわ…
ここに残ってるのは、心残りのある亡霊よ…」と彼女は自分の存在を否定した。
「国が滅んだのに、私だけが、まだ未練がましく残ってるなんて滑稽でしょう?
私は私を終わりにするわ…やっと《二クセの船》に乗る日が来たの…
後は、未来ある若者に譲るわ」
彼女の言葉には決意の響きがあった。
彼女は元は長命のエルフだったらしい。
その彼女が身体を失う程の長い時間を超えて、妖精の姿になってまで守り続けたものが消えるのだ…
彼女とて辛いだろう…
その悲しみは私の比では無いはずだ…
「さよならですか、アナベル…」
「貴方が待っていてくれるなら、また巡ってくるわ」
「ふふっ…あたしも…楽しみにしてますよ」
別れの言葉はいかにも安っぽく感じられて、口には出来なかった。
私はお高い《カーティス》なのでね…
安い言葉は使いませんよ。
「《彼》に代わります」
瞳に黒猫の姿の《妻》の姿を焼き付け、《初代》に身体を明け渡した。
「さよなら、アーノルド…」
手放す意識の向こう側で、悲しい女性の声を聞いた。
✩.*˚
ウィンザーの民は、もうウィンザーを忘れたのだ…
彼らは、以前と変わらぬ生活を続けていた。その姿に怒りを覚えた。
大公家が無くなっても、彼らは生活さえ出来れば、頭がすり替わったところで、何の問題もありはしないのだ…
フィーアを拒否することも無く、ヴェルフェル侯爵を《領主様》と呼んでいた元ウィンザーの民に憎しみが生まれた…
惜しんで欲しかった…
私たち大公家の事を、心のどこかに残していて欲しかったのだ…
大公家を忘れてないと、心のどこかで信じていた…
『助けて』と救いを求める声は、私に向けられたものではなかった。
逃げる背に刃を振るった。
もう、彼らはウィンザーの民ではないのだ…
私が殺したのは、憎いフィーア人だ…
「クィン卿…大丈夫ですか?」
村人の死体を眺めながら立ち尽くしていた私に、オリヴァーが訊ねた。彼は気遣うように私の背を叩いて、村人の骸から私を引き離した。
「お辛いでしょうが…」と彼は私を甘やかした。
違う、オリヴァー…
私は悲しいんじゃない…心のどこかで安堵しているのだ…
この殺人を正当化できて…私が殺したのが、自分が守るべき民でなくてほっとしている自分がいる。
「終わったか?」嫌なものから目を背けようと、オリヴァーに訊ねた。彼はいつもと変わらない、落ち着いた様子で頷いた。
「メイヤー閣下は、次の村に向かうようです。我々も向かいましょう」
「分かった」と彼に応えて剣を納めた。
「村人の埋葬と、消火は許されません。このまま出立します」
「オリヴァー」
「はい?」
「誰か、一人でも《ウィンザー》の名を口にした者がいたか?」
私の問いかけに、彼は少しだけ躊躇って、「いいえ」と答えた。
「残念ながら…」
「…そうか」
「クィン卿…」
慰めを口にしようとしたのだろうか?
オリヴァーの言葉を遮って、私の口から出た言葉はどんな感情を乗せていたのだろうか…
「本当に、滅んだのだな…ウィンザーは…」
大公が亡くなり、貴族たちは土地を捨て、土地は名を変え、主を変えた。
彼らの心が変わらない事の方が不自然だ…
なら私は…
こうやって、私だけが生きているのは不自然ではないか?
「オリヴァー…私は、何故生きているのだろうな…」オリヴァーの息を飲む気配がした。
死にたいとかそういうことでは無いのだ。
ただ…単純に、この命に何の意味があるのか知りたくなった…それだけだ…
オリヴァーの手が伸びた。
彼は私の手を握って膝を折った。
「元ウィンザーの民がどんなに否定しようとも、クィン卿の命は、私にとって何にも変え難い宝です…
全て消え去っても、貴方さえ残れば…私は全てを許せます」
「…オリヴァー」
「生きる意味など…私がいるからでいいではありませんか?
私も、貴方がいるから生きています…私はそれだけのつまらない男です…
私には…もう貴方しか…」
言葉が詰まる。オリヴァーの手が震えた。
彼は私をずっと見守ってきた一番の従者だ。彼はウィンザーの民ではないが、私のたった一人の臣下だ…
「貴方の生を喜ぶ人間が、私一人ではご満足頂けませんか?」
「…いや、満足だ」
私の答えに、オリヴァーは顔を上げて安堵したような笑顔を見せた。
「ウィンザーが滅んでも、民が死に尽くそうとも、地獄を作ろうとも…私はお前のために生きるよ…
何も報いることは出来ないが、お前はそれでいいか?」
「何よりの褒美です」彼は私の口約束を喜んだ。
私たちにはもう他に何も無いのだ…
無いからこそ、ここにはたった一つ残ったのだ…
正しくなくても、そんな事はどうでも良かった…
✩.*˚
『貴方は教会の庇護下にあります』と司教は私に伝えて、新しい《オリヴァー》という名前を与えた。
『キンバリー子爵家の事はお忘れなさい。
貴方は《オリヴァー》です。ただの《オリヴァー》…分かりましたね?』
『はい』と素直に返事をしたが、それ以外、私に許された選択肢などなかった。
年の離れた兄のくだらない矜持が、キンバリー家を断絶させた。キンバリーの名は、一族郎党、残さずこの世から消えた…
父は『争うな』と言葉を残したのに、兄は守らなかった。父親の無念を晴らすと、無駄な復讐心に駆られて、結局全てを失った…
残ったのは、何の力も後ろ盾もなく、幼い頃に教会に預けられた私だけだ…
見逃されたのは運が良かったからだ…
『オリヴァー、なんでオリヴァーには姓が無いの?』そんな事を幼いクィン卿に訊ねられた事がある。
『なんでですかねぇ…』と笑って誤魔化した。
『きっとそのうち、誰かに付けてもらうためかもしれませんねぇ…貴方とか?』
『じゃあ!僕が国に戻って、爵位を貰ったら、君に格好いい名前を与えるよ!』
『ふふっ。それはそれは…楽しみにしてますよ、ジョージ様』
もう、そんな話も忘れたでしょう?
私の姓が無いことさえ、気にならなくなったでしょう?
それだけ長い間、私と貴方は一緒にいましたからね…
そして、私たちはとても似ていたのですね…
似て欲しくはなかったのですが…こればかりは仕方ありませんねぇ…
過去に思いを巡らせていると、戻ってきた騎士に呼ばれた。
「貴殿は治癒魔法は使えるか?」
「可能ですが…何か?」
「騎士が二人と馬が負傷した。動ける程度で構わん、治療を頼む」
「かしこまりました」と答えて、団長とクィン卿に断って先に出発した。
次の村は先の村より大きかった。その分凄惨さも際立っていた。
抵抗したのだろう…
村は酷い有様だった…
「こっちだ」と案内された先で、怪我をした騎士の情けない怒声が耳障りに響いた。
「痛い!治癒魔導師はまだか?!早う!」
「グラント卿!お連れしました!」
「遅い!この私に何かあったらどうしてくれるのだ!早う、治療せい!」
頭の肉が割れて骨が覗いていた。身体に刺さったままの鎌は出血を恐れてそのままにしているようだ。
でも彼は割と元気そうだ。問題はもう一人の方だろう…
馬に蹴られたのだろうか?顔色は死人に近かった。
「早く治療しろ!」と喚いてる男よりは重傷だ。
彼に歩み寄ろうとして、他の兵士に止められた。
「グラント卿を早く治療してください」
「しかし、彼の方が危険な状態です」
「グラント卿が先です」と兵士らは譲らなかった。グラント卿とやらが余程怖いらしい。
僅かに苛立ちを覚えたが、それもどうにもならない。彼らの優先順位にしたがって、この不愉快な男から治療することにした。
散々殺しておいて、自分は痛いと、死にたくないと喚くのだな…
その姿がなんとも滑稽に見えた…
治療を終えると、グラント卿は、私に礼ではなく罵声を浴びせた。
「遅かったでは無いか!私に恩を売ろうと勿体ぶったのではあるまいな?賎しい事よ!」
「そのような事はございません」
「ふん!どうだか?!名乗れ!お主らの団長に抗議してやる!」
たかが騎士のくせに、随分威圧的な男だ。
「《黄金樹の騎士団》付きの特別魔導師でオリヴァーと申します」
「姓は!どこの家のものだ?!」
「姓はございません…」
「なるほど!賎しい生まれというわけか!穢らわしい!《名無し》とはな…」
《名無し》とは、オークランドにおいて、姓を剥奪された大罪人もしくはその家族を指す言葉だ。
「そこまでとせよ、グラント卿」厳しい声が威勢の良い騎士の口を塞いだ。
「メイヤー閣下…」グラント卿が青い顔で、見上げた相手は、わざわざ馬を降りて頭を下げた。
「部下の非礼は詫びる。治療にも感謝する」
「閣下!《名無し》などに…」
「グラント卿、貴殿は彼に救われたのだろう?無礼では無いか?」
メイヤー子爵はグラント卿を叱りつけて、私に向き直った。
「確かに、《名無し》は問題だな…
貴殿は魔導師級の働きを見せていると聞く。《アンバー式転移魔法》を使用出来る存在は多くない。
この《騎行》が終了したら、私が召し上げて、正式な騎士号を与えよう」
「申し訳ございません…私には既に長くお仕えしている主がおります。
御無礼ではございますが、何卒、この話は無かった事に…」
「貴殿の名誉も回復できない主では、その能力も存分に使う事ができぬであろう?
それはオークランドにとって不利益である。
今は有事。有能な人間を遊ばせておけるほど、余裕は無いのだ」厳しい言葉を残して、彼はまた馬に跨って立ち去った。私の話は聞いて貰えそうになかった…
陰鬱な気持ちのまま、もう一人の怪我人に足を向けた。
治療を待つ重傷の兵士の傍らには付き添う仲間の姿があった。
「治療を…」
「不要です」と咽び泣く声が若者の死を伝えた。
優先すれば、助かったかもしれない…
なんとも後味の悪い結果に、自分の無力さを噛み締めた。
確かに、能力があっても、生かせる環境がなければただの持ち腐れだ…
苦い感傷に浸る私に、またあの子爵からお呼びがかかった。
「《黄金樹》の、メイヤー閣下がお呼びだ」
「何事ですか?」
「貴殿は魔法に詳しいのだろう?確認したい事があると仰っていた」
私を呼び来た兵士は曖昧な回答しかしなかった。
仕方なく杖を手に、馬を引いてメイヤー子爵の元に急いだ。
「貴殿は、《黒い炎》を知ってるか?」と彼はいきなり私に問い質した。
「《黒い炎》ですか?」と言われたまま返してしまった。
そんな物騒なもの、文献でしか知らない。元より、その炎を扱える《人》が居るなどとは到底思えなかった。
「この先の道を塞いでいるらしい…何ヶ所もだ…
消火しようとしても一向に弱まる気配もなく、近づくこともできないという…」
「《黒い炎》は、古い文献でしか見たこと有りません。確か、ヴォルガの心臓で温められた、焼けた石から生まれた大精霊にそのような話があったはずです。
確か《炎翼の獅子》、もしくは《有翼の炎獅子》と呼ばれていたと記憶してます」
「大精霊を従えるほどの精霊使いがいるということか?」
「分かりません。《黒い炎》自体、私は見たことが有りません」
「珍しいのか?」
「《祝福》を持つ者でも、《黒い炎》を操る存在など、聞いたことがありません」
先日見た炎の《祝福持ち》の男も《青い炎》だった。
「閣下、いかが致しましょうか?このままでは進めませぬ」メイヤー子爵の側近が口を挟んだ。
メイヤー子爵も考え込む素振りを見せて黙り込んだ。
「進めるか、確認してくれぬか?」
メイヤー子爵は逡巡して、確認を依頼した。
私を重用することで、《黄金樹の騎士団》の発言力が上がることを恐れたのだろうが、それでも、この場に居合わせた者の中で、私が一番適任だと判断したようだ。
どうせ、団長らが追いつけば同じ事を言われるのだ。他に任せて問題になっても目覚めが悪い…
先程の若者のように死人を増やすのは辛かった。
仕方なく承諾して問題の場所に向かった。
道を横切るように伸びた《黒い炎》の境界線が、行軍を阻んでいた。馬を降りて炎に近寄った。
「確かに《黒い炎》ですね…」
「近付くと強くなるのです。
跨ごうとした者は灰になって死にました…」
なんとも物騒だ…
石を拾って炎に投げ込んだが何も無かった。石は炎をすり抜けて反対側に落ちた。
木の枝も燃えたが普通の炎に炙られたような印象だ。人が灰になるほどの炎には思えなかった。
「動物を」と兵士に求めると、彼らは村から奪った山羊を1頭連れてきた。
嫌がる山羊を炎に向かって押し出すと、《黒い炎》が山羊に反応した。大蛇のようにうねった炎が哀れな生贄を飲み込んだ。
「メェェ…」
悲鳴をあげた白い山羊が一瞬で黒く色を変え、灰になって崩れた。
「…なるほど…」厄介な仕様の魔法だ…
さすがに人を跨がせる訳にはいかないな…
そう思いながら兵士らに視線を向けると、彼らは慌てて目を逸らした。
まぁ、そうでしょうねぇ…
とりあえず可能性をひとつずつ潰すしかない。
「皆さん、ウロウロしないでくださいね。
出来れば1箇所に集まっていただけませんか?」と兵士らを集めた。
「これ嫌いなんですよね…
頭の中ぐちゃぐちゃになるんで…まぁ、仕方ないですけど…」
独り言をブツブツ呟きながら魔法を発動させた。
「《魔法強化》、《範囲拡大》、《照準補正》、《探索》」
魔法陣が重なって展開される。全ての魔法陣が重なり、発動条件を満たした。
魔法の発動と同時に、周辺の情報が一気に頭に流れ込んでくる。
《探索》の魔法は、そのままであれば、自分を中心に半径10m前後の情報がせいぜいだ。
それを10倍の範囲に広げて、細かい情報まで拾うのだから苦痛を伴う魔法だ…
「ぐっ…」込み上げた吐き気を何とか堪えて、《探索》の情報を精査した。
脳内に引っかかる影を見つけた。
「《視界分離》…うっぷッ…」追加の魔法を発動してさらに気持ち悪くなる。
長くは持たない。魔法を解除する前に、見つけた影に意識を集中させた。
人間だ…二人…そう遠くない…方角は…
「うぅ…」限界だ…脳が焦げ付く…
仕方なく魔法を解除させたが、押し寄せた吐き気に負け、その場に蹲って吐瀉した。
危なかった…意識が飛ぶかと思った…
「オリヴァー殿…だ、大丈夫ですか?」
「…何とか…」クラクラする頭を抑えて杖を頼りに立ち上がった。
すぐ近くに軍隊がいるのに、逃げないということは見張っているに違いない。
あの二人を検めさせた方が良さそうだ…
「林に…二人潜んでいます」と兵士に伝えた。
兵士らがざわついた。
彼らの顔に張り付いた恐怖は、私を見てはいなかった。彼らの顔を見て血の気が引いた。
「オリヴァー殿!炎が…」
悲鳴に振り返ると、《黒い炎》が鎌首をもたげた蛇のように揺らめいた。
まずい!
ふらつく足と、目眩を抱えた身体では、素早く対応する事が出来なかった。
すぐ傍にいた兵士が身を呈して庇ってくれなければ、死んでいた…
突き飛ばされた先で見たのは、炎に巻かれて身をよじる人の姿だった。
心臓が締め付けられるような恐怖を覚えた…私がああなるはずだった…
「…諦めて、退けば殺さなかった」と炎の向こうから残念そうな声が聞こえてきた。
「あなたは…あの時の…」覚えのある男の姿に、死んだ友の顔が過ぎった。
あの時、リューデル伯爵と一緒に居た《祝福持ち》の炎使い…
「オークランドに帰れ」と彼は炎の境界線の向こうで警告を発して、上の服を脱ぎ捨てた。
服の下から現れたのは、刺青のような魔法の模様だ。目を疑った…
「まさか…そんな…《神紋》?」
神に連なる存在が、自らの力を示すために《祝福》を人に与えると言われている。
その中から、さらに選ばれた人間が、神の《所有物》として与えられるのが《神紋》だ…
あの刺青なような模様は、その力を約束された《眷属》の証だ…
昔は全身に刺青を施して、その力にあやかろうとした者たちもいたらしいが、今では完全に廃れた文化で、知ってる者も限られた人間のみだ…
私も、文献上の知識としてたまたま知っているに過ぎない。
噂では、《冬将軍》は《神紋》を持っているということだったが…
目の前の男のこれはははったりか?
でも…この《黒い炎》は…本物?
「帰れ!俺の平和を乱すな!」
目の前の男の怒鳴る声が、思考の沼に嵌りそうになった意識を現実に戻した。
彼は動かない兵士らに苛立ちを募らせた。動かないのではなく動けないのだ…
嫌な汗が滲んだ。
「《灼腕》」と呟いた男の背から、赤い巨大な腕が伸びた。
左右二本ずつ伸びた腕が伸びて、兵士らを襲った。
赤い炎の腕に捕まった兵士の悲鳴と、逃げ出す者の悲鳴でその場が地獄と化した。
逃げ損なった者にまた腕が伸びる。
街道は一方的な惨劇の舞台と化した。
命を奪う腕はさらに二本増えた。
「退くな!お前たち、戻れ!逃げる者は斬り捨てるぞ!」
逃げる兵士らを叱咤する無茶な男の姿があった。彼はこの状況で、逃げようとした兵士に凶刃を放った。
更なる戦慄が走る。逃げることも出来ずに、絶望がその場を支配した。
あの男…助けるべきではなかった…
そう思ったのも束の間、赤い腕が彼を捕らえた。
「グラント卿!」
「俺は『帰れ』と言った」
ゾッとする声が響いて、赤い腕が悲鳴を上げる騎士を高く掲げた。
「《地獄炎》」
赤い腕が色を変えた。あの黒の炎は鎧も骨も残さずにグラント卿をものの数秒で灰に変えた…
目の前で見せられた光景に、憶測は確信に変わった。
これはやはり《神紋》だ…次元が違う…
私に勝てる見込みは万に一つも無かった。
団長でも、防ぐのが精一杯かもしれない…
恐怖が全身から力を奪った。
こんな所で…ここが私の終わりですか…
生きることを諦めかけた私の前に、あの怪物と化した男がやって来て、撤退を要求した。
「撤退を邪魔する奴はもう居ない。すぐにカナルまで帰れ」と彼は言った。
「去るなら追わない」と告げ、彼は背中から伸びた炎の腕の数を減らした。
「…何故、私に?」
「この場で一番偉そうだから…」と彼は稚拙な回答を返した。
「《騎行》の指揮官に伝えろ。
『この先は通さない。元ウィンザーの人間を苦しめたら、《炎獅子》が許さない』と…」
「…ウィンザーの…?」
何故彼はウィンザーの名を出したのだ?もう、誰からも聞くことは無いと思っていたのに…
「俺は元オークランド人だが、妻は元ウィンザーの人間だ。弟も、ウィンザーを愛してる…」
「…まだ…いたのですか?…ウィンザーを、忘れない人が…」
「いる」と彼は答えた。
「ロンメルもヴェルフェル侯爵も…ウィンザーの民と文化を大事に扱っている。
文句を言う奴はほとんど居ない…ウィンザーの連中には悪いが、俺はそれで良いと思ってる」
彼はそう告げると、「帰ってくれ」と最初の主張を繰り返した。
目の前の彼には敵わない。
退けるなら…と足を引いた。
私はまだ、彼のためにも死ねない…
この男とクィン卿を会わせてはいけない、と思った…
「オリヴァー!無事か?!」
逃げ腰の私の背に、彼の声が届いた。
馬の背に兵士を逆走してくるのは、今一番見たくない人の姿だ…
「…退けと言ったのに」と残念そうな声に反応して、炎の腕が揺らめいて、勢いを取り戻した。彼の視線は向かってくる騎士の姿を捉えていた。
「クィン卿!撤退を!」叫んだ私の声に彼は応えなかった。
「貴様!あの時の!」声を荒らげたクィン卿が剣を抜いた。
それに応じるように、炎の腕が陽炎を纏わせながら動いた。
「待ってください!退きます!撤退します!どうか…」
彼だけは…
私の必死な嘆願に、目の前の男は躊躇ったように見えた。青緑の瞳が迷うように揺れた。
一瞬の迷いに隙が生まれた。
炎の隙間に見えない刃が滑り込み、血を撒きながら炎を纏った身体が仰け反った。
「オリヴァー!下がれ!《風刃・裂破》!」
クィン卿は馬の背からさらに刃を放った。
追撃を躱した手負いの男は、塞がらない《裂破》の傷を抑えながら炎の腕を召喚した。炎の腕が、彼を守るようにクィン卿の馬の前を塞いだ。
「この化け物!オルセンの仇だ!」クィン卿は罵声を浴びせながら男に迫った。
激しい《祝福》の応酬が続く。誰も手が出せない。
傷を負ったからなのか、出し惜しんでいるのか、彼は《黒い炎》は出さなかった。それは好都合だったが、不気味だった。
優勢に見えていたクィン卿だが、彼の馬がいきなり棹立ちになって騎手を投げ出した。
「ギル!」と林から男の声がした。
もう一人の存在を忘れていた…
彼は道に引かれた《黒い炎》の境界線から叫んでいた。
「何してるんです、ギル!戦って…
帰るんでしょう?ブルームバルトに!」
「よくも邪魔を!」馬から振り落とされたクィン卿が立て直すと同時に、《黒い炎》の向こうに刃を放った。
風の刃は男に届く前に、飛び出した馬に阻まれて届かなかった。
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