クラブ・アリエス

紫翠 凍華

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ショウの受難

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――容姿端麗、頭脳明晰、可憐、清楚、妖艶・・・・・どんな形容詞の付く美女・美少女といわれる女とつきあっても満たされない。たった一人には敵わない。その人でなければ意味がない。っっっって、俺はいつになったら満たされんダヨ。だって、あの人以上に可愛い性格の女なんているわけないんだから。そう、今の所。


 CULB・AriesNo1ホスト・ショウ。華やかな容姿もさることながらその女性遍歴も華やかである。しかし、本気で付き合った女は一人もいない。お互い遊びと割り切ったドライな関係。故にショウの顧客の中には元カノもいたりする。そして、ここAriesではそんな彼女たちを元カノ・ガールズと呼んでいる。
「ショウ、携帯なってるぞ。プライベート用の。」
「はいよ。」
 仕事中は営業用の携帯は手放せないがプライベート用は相方であるNo1バーテンのシンが担当するカウンターにおいてある。
「何時も悪いねぇ。」
「まぁ、お互い、いつ何時緊急の連絡が入るか分からん身だからな。仕方ないさ。」
「ごもっとも。」
 No1コンビ・シンとショウには何よりも優先させなければいけない存在がある。着信を確認するショウ。
「どうだ?」
「ン?マジどうでもいい相手から。あとで連絡しとくわ。」
「そうか。」
 ショウの投げやりな態度に微かに眉をひそめるものの追求はしない。こういうときは(現)彼女からの連絡だろうとわかるから。そして、相方が何を考えているかも。
「・・・追求しないんだな。」
「されたいのか?」
「遠慮しとく。」
 このやりとりも何時ものこと。シンが咎めなくなったのはいつからだろうか。かつては必ず咎めたのに。
「ショウ、10番テーブル」
 シンのいうテーブルに目をやれば・・・・
「っで、誰もいねぇんだよ。」
 あってはならない現象。誰もテーブルに着いていない。スッとシンがさしだしたカクテルを手にする。
「サンキュ。」
「本日の注意事項追加、だな。」
 わざとらしくため息をつくシンに苦笑してテーブルへ向かった。
 その後、閉店まではテーブルに誰も付かないなどの失態もなく無事に閉店を迎えた。もちろん、閉店後のミーティングでシンからホストたちにダメだしが出たことはいうまでもない。
 店の閉店時刻は午前二時。普通のお嬢さんはとうにお休みの時刻である。
「起きてるかもしんないけど、メールにして、電話は昼間にしますか。」
「無難だな。」
 終電もとっくになくなっている時刻。閉店が一時間早い本店ならばかろうじて終電には間に合うのだろうが。二人並んで駐車場へと向かう。
「つくづく普通の仕事じゃねぇんだって、なんか思い知らされるな。」
「そうだな。だが、馴染んでる、どこかでそれが自分のいる世界だと納得してる自分がいることも否めない。」
「そうなんだよなぁ。不思議と昼の仕事よりこういう夜の仕事の方がしっくり来るんだよ。」
「思えば、ウチは家族揃って夜の仕事だ。」
 母親は本店のバーテンダー、姉たちは新規オープンしたカフェ・バーを任されている。
「そういや、ルカりんは?」
「・・・あいつはまだバイトだがいずれは父上と淵小父上が秘書に欲しいといっていたな。」
「就職先決定ですか。」
 華北グループ副社長専属の企画・イベントプランナーが女子高生だということを知るのはほんの一握り。

 ショウが彼女に連絡を入れてから数日後。その日も何時もどおり、何事もなく閉店を迎える・・・・・・・はずだった。
「いらっしゃいませ。」
「・・・あ、あの・・・尚さん、お願いできますか?」
 みるからに遊びなれていない風なお嬢さんといった感じの女性。ショウのお客にしては珍しいタイプだと思いながらつげに行く。
「ショウさん、ご指名です。ぁ、でも、中に入ってこないんですけど。」
「いいよ、たぶん俺の知り合いだから。」
“知り合い”プライベートのという意味だ。出入り口へと向かうショウ。
「いらっしゃい。ゴメン、急に連絡して。とりあえず、ここ店の出入り口だからさ、中に入りなよ。」
「う、うん。」
 彼女を店内に入れ、待合用におかれたソファに座らせた。
「ちょっとまってて。」
 一度フロアへと戻るショウ。なんとも居心地悪そうに固まっている彼女にショウに言われたのだろうウェイターがノンアルコールカクテルを差し出した。
 ショウはそのままテーブルには戻らずシンのところへ。
「ショウ、店の中での修羅場は許さん。早めに済ましてこい。」
 断りを入れる前に爽やかな笑顔で命令。笑顔は爽やかだが怖い。
「ハーイ、いってきまぁす。」
 カウンター数歩手前でUターン。
「リオウ、リン、俺ちょっと出てくるから後頼むわ。」
「「了解です」」
 リオウとリンに軽く詫びて待たせている彼女のところへ。
「ゴメン、待たせた。」
「仕事、いいの?」
「ン?まぁ、上司からはお許しでてるから。いつもの喫茶店でいいかな?」
「うん。」
 彼女と連れ立って外出するショウを見送ってスタッフ一同同じ結論に至った。
―――――別れ話ダ―――――
 ショウが戻ったのは閉店30分前。珍しく店内に客は一人もいない。
「ぁ、ショウさん。お帰りなさ・・・・・どうしたんですか?!その顔!!」\(◎o◎)/! 
「・・・・・別に。」
 帰ってきたショウの左頬は真っ赤に腫れている。客がいないのをいいことに手近な席に身体を投げ出すように座る。その彼を取り囲む後輩たち。
「ショウ。」
 シンが冷やしたお絞りをショウに渡す。
「サンキュ」
 ―流石シンさん。ショウさんが心配なんですね。-
シンの心使いに皆感心したが、次の瞬間全員固まった。
「現場になった店に迷惑はかけなかっただろうな?」
「「「「「「「「「「「はい?」」」」」」」」」」」
「酷いわ、シンちゃん。修羅場ってきた俺の心配より店の心配するなんて。」
「お前の心配なんてしてたら俺の身がもたん。」
 言外に何時ものことだろうが。といっている。
「そりゃそうかもだけどさ。ちっとは心配して欲しいよな。」
「お前は懲りるということを学べ。」
 ふと何かを思いついたようにニヤリと笑うシン。そんな顔は父・夏侯惇を彷彿させるが容貌は母・ルュシエル譲りの美貌なだけに怖い。
「ショウ」
「ン?」
「今後修羅場になりそうな別れ話の時には姉上たちの店を使うといい。」
「・・・・そ、それだけは勘弁して!m(__)m」
「姐御たちのお店・・・って、新規オープンしたカフェ・バーですか。」
「それは・・・ショウさんじゃなくてもご遠慮したいですね。」
 全員一致で同意する。シンの姉、ルュシア・ルキア。彼女たちに任されたカフェ・バーがオープンして三ヶ月。順調に売り上げを伸ばしている。若いながらその経営手腕はすでに一目置かれている。
「尚ちゃ~ん!!」
 突然の来客。しかし全員そこはプロ。一瞬にして営業用に切り替わる。
「いらっしゃいませ。」
 自然流れ的に飛び込んできた女性はショウの席へ。
「やぁ、久しぶり。」
「尚ちゃ~ん、聞いてくれる?彼氏が浮気してね・・・・・」
 ショウの笑顔が一瞬にしてひび割れ、素の顔に戻る。
「・・・・あんたね、元彼の俺になに愚痴りに来てんの?」
「ショウ、顔が素に戻ってるぞ。」
 シンの忠告は既に聞こえていない。不機嫌にいきなり飛び込んできた元カノに告げる。
「俺、疲れてんだよね。早くこの白スーツ脱いで楽になりたいんだけど・・・・」
 グシグシと鼻を啜りあげながら愚痴り続ける元カノは聞いちゃいない。文句を言いつつも聞いてくれることを確信しているからである。
「・・・流石は元彼女。ショウの性格を把握しているな。」
「ショウさん、面倒見いいですもんねぇ。」
 時刻は閉店十五分前。そして、元カノ二人目到来。
「尚ちゃん、尚ちゃん、振られちゃった。慰めて~♡」
 ある意味間違ってはいない。が、ショウの恋愛遍歴が遍歴ゆえに・・・・
「・・・あんた、今度はどんな理由で振られたんだ?!」
 どうやら、以前にも同じことがあったらしい。
「元彼がホストっていけないこと?」
「まぁ、大概の男はいい顔しないと思うぜ。」
「何処のホストと付き合ってたか聞かれたから、CULB・AriesのNo1ホスト・ショウよって答えたら君とはやっていけそうにないって・・・酷いと思わない?」
「破局の原因、俺?」
 それから、閉店まであと1分。看板を入れ、ネオンを消し、出入り口の鍵を閉めようとしたところに本日三人目の元カノご来店。
「尚ちゃん、尚ちゃん、私にいい男できるまででいいから付き合って♡」
「訳分からんこといいながら閉店間際に入ってくるなぁー!!」
 シンが真顔で呟く。
「ある意味デタラメ人間博覧会?」
「シンさん、意味分かりません。」 
「・・・お疲れなんですね。」
 女三人で“姦しい”。昔の人はよくいったもんだ。とぶつぶつとこぼすシンにもう、涙が止まらないミナト。
「ショウさんの元カノさんってああいう女性ばかりなんでしょうか。」
「あれは遊びと割り切ってすっぱり別れたタイプだな。ちなみに、ああいったタイプの元カノたちとは今でもただの女友達として付き合ってるな。」
「じゃあ、今日別れた彼女さんは?」
「修羅場になった女とは二度と接触しないな。」
「徹底してますね。」
「あいつなりのケジメかも知れんな。」
 素朴な疑問をぶつけるスオウ。
「そういえば、シンさん。なんで来店した彼女と修羅場になるって分かったんです?」
「“目”だな。別れ話のときに修羅場になる彼女はだいたい思いつめたような目をしている。」
―この人、そういうことには敏感なのに、なんで自分に向けられる女性の視線に気付かないんだろうか。(-_-;)―
 天然にもほどがあるだろよ、と誰もが思ったが口にはしない。
「ぁ、なんで電話で別れ話になるって分かるか聞いてもいいですか?」
 ショウと一緒に元カノ・ガールズの相手をしていたワカバが聞く。
「それはね・・・・」
「尚ちゃんは、付き合ってるときは二回しか連絡くれないの。」
「尚ちゃんからの連絡は一回目のデートの時と、別れるとき。」
「そ。だから、知ってる人は二回目の電話が着たら終わったんだって分かるの。」
「「そうそう。二回目はアウトよね。」」
「へぇ、そうなんですかぁ。」
「ぁ、そうそう・・・・」
 先ほど破局したといっていた女性が何かを思い出したらい。
「元彼のこと聞いてきた元彼(別れたから元彼でいいよね。)も実はホストでね・・・」
「「何でスト?!」」
「確かこのお店の系列店で・・・・ユウトって奴なのよね。」
 ショウの目が光る。
「へぇ。ねぇ、もうちょっと詳しく聞かせてくんない?」
 ショウの表情にシンが額を押さえ軽くため息をつく。
「あいつ、何を企んでるんだか・・・・」
 転んでもただでは起きない。確かあいつのモットーだったな。とこれから起こるであろう波乱に頭を悩ませるシン。
「ありがと。いや~、これから楽しみだなぁ♪」
「俺は胃が痛い・・・・」
 元カノ・ガールズからどんな情報を仕入れたのか修羅場って戻ってきたときとは正反対にウキウキしているショウをみて頭を抱えそうになったのはシンだけではなかった。現在在籍中のホストたちの中でショウと一番付き合いの長いリオウとリンも深いため息をついたのはいうまでもない。


    
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