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十四話 観月の接触
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授業が終わり、紗奈さんと帰宅しているところだ。ちなみに彼女には麻緒との事を既に話してある。
まぁ教室であんな事があれば気になってしまうだろう。
だからだろう、今目の前にいる人間に対して彼女が強く警戒しているのは。
「ごめんね馬門さん、樹くん嫌がってるからやめてあげてくれるかな」
警戒心を露わする俺を半身で庇いながら彼女は麻緒にそう言った。
「どうして?七瀬さんには関係ないよね?」
麻緒は負けずに言い返す。
「あるよ、樹くんは私の友達なの。友達がこれだけ嫌がってるのを見て見ぬふりをするような薄情な人間じゃないから、 あ な た と 違 っ て 」
「っ…!」
紗奈さんが力強く放った言葉に麻緒は顔を強く歪ませる。ギリリと歯ぎしりの音さえ聞こえるほど。
「樹くんに言いたいことがあるなら私が今度聞いてあげるよ、だから今は…ね?」
諭すように紗奈さんは言うが、彼女からは言い知れぬ圧を感じる。まるで有無も言わせないといった様子だ。
「そういう事だから。じゃ、行こっか?樹くん」
紗奈さんは麻緒からの返事を待たずに俺の手を取って踵を返した。
「あっ……!」
後ろから聞こえる声を無視して歩き出す。
すぐに下駄箱で靴を変え、外に出る。
「待ってください、樹くん」
俺たちを呼び止めたのは観月さんだった。今更なんだというのだろうか?
「いきなりごめんなさい、どうしても樹くんと話がしたいんです。せめて聞くだけでもいいので少しだけでも時間を貰えませんか…?」
弱々しく、伺うようにそう尋ねてくる彼女だが麻緒とのこともあり結構 怖い。信じてもいいものかと。
「私がついててもいい?今の樹くんを一人にしたくないからさ…樹くんもいいよね?」
紗奈さんが俺の手をしっかりと握りながらそう言った。それを見た彼女は悲しそうに顔を歪める。
確かに、どこかで話をしないといちいち付き纏われるかもしれない。さきほどの件もある。
「…分かったよ」
そういうことで、今は観月さんと向き合っているところだ。
いつか俺が彼女に告白した場所で。
「樹くん、あの…私と付き合って貰えませんか?」
「「は?」」
話がしたいと言うので聞いて見れば、その内容に二人して驚いてしまった。
「私、あの人と付き合って気付いたんです。樹くんはちゃんと私のことを見てくれていたんだって…」
何かを悔いるように何かを言っているが、驚きのあまり理解が追いつかない。
そんな俺たちを他所に彼女は言葉を続ける。
「私には、やっぱり樹くんしかいないんだって、そう気付いたんです…私と、付き」
「ちょっと待って、その前に聞きたいんだけどさ、どうしてあの人……槍坂先輩と付き合ったわけ?というかいつの間に別れてたんだよ?」
相手の言葉に被せるのが不躾なのは百も承知だが、どうしても聞きたかった。
どうも背景が読めなさすぎて観月さんの話が頭を入ってこないのだ。
「先日あの人とは別れました。あの人の言葉には色々と嫌な気分にさせてしまいましたね…ごめんなさい」
彼女はそう言って軽く頭を下げ、また話を続ける。なんだそれ……
「あの人と付き合ったのは、その…誠実そうだと思ったんです。この人ならきっと私の見た目だけじゃなくて、ちゃんと中身を見てくれるって」
「……俺が見た目だけしか見ていないと思った理由は?」
「それは…」
俺と先輩の違いが知りたくてそう問いかけたのだが、やけに言いずらそうにしている。
「その…私の考えが浅かった結果です、ごめんなさい…」
どうも分かりにくい言い分だが、何となく分かる。つまりはそういう事だろう。
ハッキリ言わないで濁しているところが、何よりの証拠ではなかろうか?
「要するにあの先輩はイケメンだから付き合って、俺はブサイクだから嫌だったってそういう話なんじゃねぇの?」
「そ、れは…」
どこか遠回しにしか言わない彼女にイライラして口調が荒くなる。手持ち無沙汰な左手で後頭部《あたま》をガリガリと引っ掻いてしまう。
「あの人はイケメンっつってモテてたからな、多少 話だって聞くからちっとは知ってんだよ。それに対して俺はモテるどころかブサイクだからそりゃあイケメン先輩に告白されたら俺なんてちっぽけなもんだろ」
「ちが…」
「じゃあなんだ!言ってみろ素直によ!」
俺はあの人に散々こき下ろされた、そんな事をする人間に誠実だ?クソみてぇな言い分があまりにも不快で俺は怒鳴ってしまう。
そんな俺を宥めるように紗奈さんがそっと背中に手を添えてくれる。
そのおかげで少しだけ落ち着いた。
「うぅ…えっと、その……告白された時に、樹くんも他の人と一緒だとっ、思ってしまいました…ごめんなさい」
ひどく辛そうな表情で '' 観月 '' が言葉に詰まりながらもそう言って頭を下げる。
そんなつもりは無かったが、怯えさせてしまったのかもしれない。申し訳ないが、今の俺にそんなことを考える余裕はない。
暴れ回る感情を抑えるのに必死なんだ。
「じゃああの人と付き合ったのは?」
「それは…」
「言い方を変えるか、あの先輩が外見じゃなくて性格で判断してるって思ったのは?」
別に俺を振ったこともあの人と付き合ったことも仕方のないことだ、それだけならここまで怒ることはない。
俺が気に入らないのは、そんなことじゃない。
まぁ教室であんな事があれば気になってしまうだろう。
だからだろう、今目の前にいる人間に対して彼女が強く警戒しているのは。
「ごめんね馬門さん、樹くん嫌がってるからやめてあげてくれるかな」
警戒心を露わする俺を半身で庇いながら彼女は麻緒にそう言った。
「どうして?七瀬さんには関係ないよね?」
麻緒は負けずに言い返す。
「あるよ、樹くんは私の友達なの。友達がこれだけ嫌がってるのを見て見ぬふりをするような薄情な人間じゃないから、 あ な た と 違 っ て 」
「っ…!」
紗奈さんが力強く放った言葉に麻緒は顔を強く歪ませる。ギリリと歯ぎしりの音さえ聞こえるほど。
「樹くんに言いたいことがあるなら私が今度聞いてあげるよ、だから今は…ね?」
諭すように紗奈さんは言うが、彼女からは言い知れぬ圧を感じる。まるで有無も言わせないといった様子だ。
「そういう事だから。じゃ、行こっか?樹くん」
紗奈さんは麻緒からの返事を待たずに俺の手を取って踵を返した。
「あっ……!」
後ろから聞こえる声を無視して歩き出す。
すぐに下駄箱で靴を変え、外に出る。
「待ってください、樹くん」
俺たちを呼び止めたのは観月さんだった。今更なんだというのだろうか?
「いきなりごめんなさい、どうしても樹くんと話がしたいんです。せめて聞くだけでもいいので少しだけでも時間を貰えませんか…?」
弱々しく、伺うようにそう尋ねてくる彼女だが麻緒とのこともあり結構 怖い。信じてもいいものかと。
「私がついててもいい?今の樹くんを一人にしたくないからさ…樹くんもいいよね?」
紗奈さんが俺の手をしっかりと握りながらそう言った。それを見た彼女は悲しそうに顔を歪める。
確かに、どこかで話をしないといちいち付き纏われるかもしれない。さきほどの件もある。
「…分かったよ」
そういうことで、今は観月さんと向き合っているところだ。
いつか俺が彼女に告白した場所で。
「樹くん、あの…私と付き合って貰えませんか?」
「「は?」」
話がしたいと言うので聞いて見れば、その内容に二人して驚いてしまった。
「私、あの人と付き合って気付いたんです。樹くんはちゃんと私のことを見てくれていたんだって…」
何かを悔いるように何かを言っているが、驚きのあまり理解が追いつかない。
そんな俺たちを他所に彼女は言葉を続ける。
「私には、やっぱり樹くんしかいないんだって、そう気付いたんです…私と、付き」
「ちょっと待って、その前に聞きたいんだけどさ、どうしてあの人……槍坂先輩と付き合ったわけ?というかいつの間に別れてたんだよ?」
相手の言葉に被せるのが不躾なのは百も承知だが、どうしても聞きたかった。
どうも背景が読めなさすぎて観月さんの話が頭を入ってこないのだ。
「先日あの人とは別れました。あの人の言葉には色々と嫌な気分にさせてしまいましたね…ごめんなさい」
彼女はそう言って軽く頭を下げ、また話を続ける。なんだそれ……
「あの人と付き合ったのは、その…誠実そうだと思ったんです。この人ならきっと私の見た目だけじゃなくて、ちゃんと中身を見てくれるって」
「……俺が見た目だけしか見ていないと思った理由は?」
「それは…」
俺と先輩の違いが知りたくてそう問いかけたのだが、やけに言いずらそうにしている。
「その…私の考えが浅かった結果です、ごめんなさい…」
どうも分かりにくい言い分だが、何となく分かる。つまりはそういう事だろう。
ハッキリ言わないで濁しているところが、何よりの証拠ではなかろうか?
「要するにあの先輩はイケメンだから付き合って、俺はブサイクだから嫌だったってそういう話なんじゃねぇの?」
「そ、れは…」
どこか遠回しにしか言わない彼女にイライラして口調が荒くなる。手持ち無沙汰な左手で後頭部《あたま》をガリガリと引っ掻いてしまう。
「あの人はイケメンっつってモテてたからな、多少 話だって聞くからちっとは知ってんだよ。それに対して俺はモテるどころかブサイクだからそりゃあイケメン先輩に告白されたら俺なんてちっぽけなもんだろ」
「ちが…」
「じゃあなんだ!言ってみろ素直によ!」
俺はあの人に散々こき下ろされた、そんな事をする人間に誠実だ?クソみてぇな言い分があまりにも不快で俺は怒鳴ってしまう。
そんな俺を宥めるように紗奈さんがそっと背中に手を添えてくれる。
そのおかげで少しだけ落ち着いた。
「うぅ…えっと、その……告白された時に、樹くんも他の人と一緒だとっ、思ってしまいました…ごめんなさい」
ひどく辛そうな表情で '' 観月 '' が言葉に詰まりながらもそう言って頭を下げる。
そんなつもりは無かったが、怯えさせてしまったのかもしれない。申し訳ないが、今の俺にそんなことを考える余裕はない。
暴れ回る感情を抑えるのに必死なんだ。
「じゃああの人と付き合ったのは?」
「それは…」
「言い方を変えるか、あの先輩が外見じゃなくて性格で判断してるって思ったのは?」
別に俺を振ったこともあの人と付き合ったことも仕方のないことだ、それだけならここまで怒ることはない。
俺が気に入らないのは、そんなことじゃない。
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