クールで一途な白雪さん

SAKADO

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八十五話 顔合わせ

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 「えぇ!ママと龍彦たつひこくんママって知り合いだったの!?」

 ある日、白雪しらゆき家宅のリビングで響き渡ったのは、そんな繭奈まゆなの驚愕した声であった。かくいう俺も、驚きの声を漏らしてしまった。

「えぇ。蔵真くらまさんとは職場が同じなんだけど、まさか龍彦たつひこくんのお母さんだったなんて考えもしなかったわ……」

 机に手を置いて立ち上がった繭奈まゆなの言葉に、溜め息混じりに頷いたのは彼女の母である唯那ゆうなさん。
 そんなのいったい誰が分かるというのか。繭奈まゆなとは中学の時から同じクラスだが、中学高校の参観日や去年の文化祭に顔を合わせたことがないらしい。どんな確率だよ。

 そう思ったが、うちの両親も繭奈まゆなの両親も、揃って学校に来ることが今までなく、そのため俺たち互いの母親が会うこともなかったらしい。こんなこと友人に話したって誰も信じやしないぞ、俺だって信じられないんだもん。

「いきなり龍彦たつひこくんに会いたいっていうからなにかと思えば、それなら納得ね。あんなに嫌がってたのに」 

「だって、繭奈まゆなが変な人と付き合ってたと思ったら心配で心配で……って、龍彦たつひこくんの前で言うことじゃなかった!ごめんなさい」

「いえ、心配するのはしょうがないと思います」

 ふぅ と息を吐いて腰を下ろした繭奈まゆなに、唯那ゆうなさんが力なく言い返す。親としては、大切なひとり娘が変な輩と関わって将来を暗いものにされたくない、という思いがあるのだろう。
 ハッとして謝った唯那ゆうなさんだが、その言い分を不快に思うほど俺は子供じゃない。といっても、まだ未成年だけどね。

「ほんとに、気遣いさせてごめんなさいね。うちの旦那も龍彦たつひこくんのことは気に入ってたみたいなのだけれど、私ってば心配だからって聞く耳持たずで、これじゃどっちが子供なんだか分からないわね」

「いやほんと、気にしてないんでそんなに落ち込まないでください」

「そうよママ。龍彦たつひこくんが気まずくなるから、気を取り戻しましょう。心配してくれてたのが分かったから、私だってもう気にしてないんだし」

 すっかり落ち込んでしまった唯那ゆうなさんに、俺と繭奈まゆなでフォローに回る。唯那ゆうなさんは繭奈まゆなに似てクールな雰囲気を纏っているが、感情の揺れ動きが大きいところも似ているようだ。
 なんていうか、ギャップが凄いな。

「うぅ、そうね……とにかく、二人のことは親としてしっかり応援させてもらいます。龍彦たつひこくん、繭奈まゆなのことを頼むわね」

「はい」

 落ち込んだ気分を半ば無理矢理立て直した唯那ゆうなさんが、俺の目を見て繭奈まゆなを託してくれた。その気持ちにはちゃんと応えたいと思う。


 それはそうと、どうしてこうなったという話だ。繭奈まゆなから家に来てほしいと呼ばれたのは昨日のこと。初めて唯那ゆうなさんを見かけて、その二日後の下校中のことだった。

 そして今日、白雪しらゆき家宅に上がって、唯那ゆうなさんと対面したのだ。これがもう繭奈まゆなそっくりで、内心驚いてしまった。
 それにしても、母さんも話してくれれば良かったのにな。つっても、仕事ばかりでなかなか顔を合わせられないから仕方ないが。

「それにしても、世の中は随分と狭いわね。こんな近くにお互いの両親がいるだなんて」

「ホントよ。こんなの誰も予想できないわね、もっと早く知っていたら挨拶できたのに」

 繭奈まゆなのコメントに、唯那ゆうなさんが前のめりで頷いた。全面的に同意である。
 そもそも、互いの母親が子育て談義をしていたと言っても、そこまで細かい情報までは話さないだろう。話す内容のほとんどは、どんな出来事があったのかだろうし。
 唯那ゆうなさんが俺のことをちゃんと知ったきっかけも、母さんが繭奈まゆなと会ったことを話したことらしいし、母さんと繭奈まゆなが会ったのは偶然なのだ。

 もし母さんがあの日、俺の予想の通り帰りがいつもの時間だったとしたら、拗れていた可能性も否定できない。そう考えると、こうして円満な関係になれたのは奇跡なんじゃないかと思えてくる。

「せっかくだし、二人の出会いのお話でも聞かせてもらえるかしら?」

「いいわよ!さてどこから話そうかしら?」

繭奈まゆな、落ち着いてくれ」

 唯那ゆうなさんから俺たちの馴れ初め話を求められたことで、繭奈まゆなが鼻息を荒くしてこちらを見た。フンフンと元気そうだが、そんなに面白い話ではないと思うので、こちらをなにを話そうかと聞かれても困ってしまう。

 一番の山場は、中学時代のペン窃盗のあたりだろうか?俺はほとんど巻き添えのというか、ちょうどいい悪役にされだけなんだけどね。


 っていうか、それ聞かせるの?恥ずかしいんだが?
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